最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

選り好み

僕達は避難村の前に到着した。

隣には騎士団の兵舎が建っていた。

白い石造りで真新しい三階建ての建物だった。

一方避難村はと言うと同じく三階建てだったが、古い石造りの建物で隣の騎士団の兵舎と比べると、半分ぐらいの広さしか無い。

僕は中年の男性に話しかけた。

「となりの騎士団の兵舎と比べてこっちひどくない？」

中年の男性が答える。

「おいおい、騎士団の建物と比べちゃ駄目だ。ここの避難村は他の地域の避難村に比べれば凄く恵まれてるぜ。贅沢を言っちゃいけねえ。」

そう言い終わると中年の男性は中に入っていった。

確かにその通りだ、今は選り好みができる身分では無い。

雨風を凌げるだけで有難いと思わなくていけない。

僕も彼に続いて中に入った。

避難村の一階玄関ホールはかなり広くなっていた。

一階には騎士達が数人と恐らく避難民と思われる人達が十人ほどいた。

騎士が避難民達に話していた。

「ではこれより臨時の配達人の募集を開始する。配達人を希望する者は、そこの机の上に用紙があるので、名前を書くように。その後、私に名前を告げるように。」

騎士が指差す方には小さな机があり、その上に紙とペンが置いてあった。

さっそく数人が紙に名前を書いていた。その後騎士の所に行って名前を告げた。

そして左手を上げた。

「私はジール大公様に精神誠意尽くす事を誓います。ジール大公様に栄光あれ！」

と宣誓していった。

すると騎士が応募した人に、明日は頼むぞと言って前金を渡していった。

すると案内してくれた男性もすぐに応募して、宣誓を行い、前金を騎士から受け取るとこちらに戻ってきた。

僕は男性に尋ねた。

「あなたも避難民だったんですか？」

男性が答える。

「ああ、俺もアグトリアから逃げてきたのさ。そう言えばまだ自己紹介がまだだったな。俺はバルガスだ、よろしくな。」

僕も自己紹介しようと思ったが、どうしたものか？

逃亡中に本名を名乗るのもまずい。

少し考えてクラークという偽名を使う事にした。

「僕はクラークです。よろしくお願いします。」

僕はバルガスと握手を交わした。