あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

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一章

助けを求める通知

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7月17日の午後2時過ぎ、晴南(はるな)達は九前坂神社の大広間で意気消沈した様子で座っていたのだった。

二実(つぐみ)が三緒に言った。

「はあ、また助けられなかった。私って本当にダメね。調子ばっかり良くて大事な時に大失敗してしまうんだから。」

三緒が二実に言った。

「二実??あんまり気を落としちゃダメよ。」

二実が少し涙目で三緒に言った。

「うん分かってはいるけど、人が死ぬのは辛いわ本当に。それが知っている人ならなおさらね。」

三緒が二実に言った。

「二実は最後まで満子(みつこ)さんと誠二郎(せいじろう)さんを助けようとしてたわ。」

二実が三緒に言った。

「ありがとう三緒、ただ健太君達の方が私なんかよりももっと辛いはずよ。お父さんとお母さんを目の前で亡くしてしまったんだから。健太君達に声をかけてあげたら。」

三緒が二実に言った。

「うん分かってる。後で健太君達にも声を掛けに行ってくるわ。でもその前に二実に声を掛けておこうと思ってね。二実も押しつぶされそうになってたからね。」

二実が三緒に言った。

「三緒は強いわね。どんな時でも周りに気を配れて。」

三緒が二実に言った。

「私だって辛いよ。全然大丈夫じゃない。こうして二実に話しかけてないと押しつぶされてしまいそうなくらいにね。」

二実が三緒に言った。

「三緒、いつもありがとうね。」

三緒が二実に言った。

「ううん。こっちこそありがとね。」

すると突然大広間の中にスマホの着信の音楽が流れ始めたのだった。

二実のスマホの着信の音楽が流れていたのだった。

「着信??誰からだろう??」

二実がスマホを取り出してスマホの画面を確認したのだった。

電話を掛けてきた相手は青木(あおき)理沙(りさ)であった。

二実はスマホを操作してスピーカーモードにしたうえで電話に出たのだった。

「もしもし青木さん?どうかしたの??」

するとスマホの中から理沙(りさ)の切羽詰まった声が聞こえてきたのだった。

「二実さん??みんなおかしくなっちゃってて!!久保(くぼ)君や牧田(まきた)君が首を吊ったのにみんな無関心で話を聞いてくれないんです。お母さんにも連絡したけど全然取り合ってくれなくて!!わたしどうしたらいいですか??」

二実はスマホ越しに理沙にそう言った。

「青木さん??何があったのかを詳しく聞かせてくれる?」

だがしばらく沈黙が続くのだった。

二実がスマホ越しに理沙に尋ねた。

「どうかした青木さん??」

スマホから理沙の声が響いてきた。

「二実さんは信じてくれますか?」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「もちろん信じるよ?だから聞かせて?」

二実達は理沙から詳しい話を聞いたのだった。

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「なるほどね。」

理沙の声がスマホから響いてきた。

「スマホの画像の中に首を吊った人の画像がいっぱい混ざってて怖いんです。」

二実がスマホ越しに理沙に尋ねた。

「青木さん、青木さん以外にこれに気づいている人はいる?」

理沙の声がスマホ越しに響いてきた。

「えっ??はい。私の友達とあと先生も気づいてます。」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「青木さん??ちょっと待ってくれる??」

理沙の声がスマホ越しに響いてきた。

「えっ??はい、分かりました。」

すると二実はスピーカーモードを一時的にオフにしたのだった。

二実は考え込んだ様子でこう言った。

「どうしようかな?」

三緒が二実に言った。

「どうしたの?はやく青木さん達に話さないと??」

二実が三緒に言った。

「そうなんだけど?この後青木さん達にはどうしてもらえばいいと思う?」

三緒が二実に聞き返した。

「えっ?どういう事??」

すると優斗が二実の代わりに言った。

「夜までその場に留まってもらうべきか。それともすぐに動いてもらうかって事ですね。」

二実が優斗に言った。

「うん、そうなんだよね。」

三緒が二実に言った。

「留まってもらった方がいいんじゃない。昼間の移動は危険でしょ?」

二実が三緒に言った。

「それはそうなんだけど、ただもう青木さんの周りで殺戮が始まってるのよね。となると一刻も早く逃げた方がいいとも思うのよね。」

すると優斗が二実に尋ねた。

「青木さん達は明井田高校の近くにいるんですよね?つまり鈴成(すずなり)地区の中にいるって事ですよね?」

二実が優斗に言った。

「そうなるね。」

優斗が二実に言った。

「だったらすぐに動いた方がいいと思います。」

二実が優斗に尋ねた。

「どうして優斗君?」

優斗が二実に言った。

「三象(さんしょう)は特定の場所や地区で集中的に殺戮を行っているように思うんです。その地区で生き残っている人がいなくなるまで集中的に殺戮を行って、それが完了したら別の地区での殺戮を始める。」

二実が優斗に言った。

「なるほどね、そう考えると確かに納得できるわね。昨日、川原(かわはら)地区の中は何の異常もなかったけど、美並里(びなり)地区に入った途端に首を吊った人であふれてたもんね。」

優斗が二実に言った。

「それで二実さん??提案なんですけど、陣屋(じんや)地区の明井田商店街に移動してもらったらどうですか?」

すると拓也が優斗に尋ねた。

「陣屋(じんや)地区に??危険だろう??明井田商店街の惨状は見てるだろう。明井田商店街の人達は全員が首を吊らされてたんだぞ。」

優斗が拓也に言った。

「だからこそ逆に明井田商店街は安全じゃないかと思うんだよね。」

拓也が優斗に聞き返した。

「どういう事だ?」

すると代わりに晃太が優斗に言った。

「つまり三象(さんしょう)は明井田の人達の魂を奪いに来てるわけだから、すでに殺戮も魂の収奪も完了している明井田商店街には三象は来ないんじゃないかって事だな。」

優斗が晃太に言った。

「うん、だから明井田商店街のある陣屋地区は逆に安全だと思うんだ。」

優斗が二実に尋ねた。

「明井田商店街には幽霊も全然いなかったんですよね?」

二実が優斗に言った。

「ええ明井田商店街の周りには幽霊が全くといっていいほどいなかったわ。」

拓也が優斗に尋ねた。

「だけど神域(しんいき)はどうするんだ??神域に入るのも危険だろう。」

柚羽(ゆずは)が拓也に言った。

「明井田商店街の辺りは神域をほとんど感じられなかったから、陣屋地区への移動で神域に引っかかる事はそこまで心配しなくていいと思う。」

拓也が思い出したように柚羽に言った。

「そういえばそうだったな。」

二実がみんなに言った。

「となると決まりね。」

みんなが頷いた。

二実は再びスピーカーモードを設定してスマホ越しに理沙に言った。

「青木さん、待たせてごめんなさい。すぐに友達と一緒に鈴成(すずなり)地区を出て明井田商店街に向かって。」

理沙の声がスマホ越しに響いた。

「えっ??どういうことですか?」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「実は今明井田市内はかなり危険な状態なの。意味不明の首つりが市内で多発してるのよ。青木さんがいる鈴成地区もね。だからすぐに明井田商店街に移動した方がいいわ。」

理沙の声がスマホ越しに聞こえてきた。

「そうなんですか??でも久保君と牧田君が首を吊ったままなんですけど??」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「同級生の子が首を吊ってしまって混乱してるのはよく分かるわ。さっきも言ったけど首を吊らせられてるのは久保君と牧田君だけではないの。青木さんが過去に撮った画像にも首を吊った人たちが写り込んでいたでしょ?明井田市内はたくさんの人達が首を吊らされていてとても危険なの。落ち着いたら久保君と牧田君をちゃんと弔うと約束するわ。でも今は青木さんやお友達が生き延びる事を最優先に考えてほしいの。」

少しの間沈黙が続いた。

理沙はどうするか考えているようだった。

それからスマホから理沙の声が響いてきた。

「分かりました。それじゃあこの地区を出て明井田商店街に向かえばいいんですね?」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「ありがとう。私たちも明井田市内から避難して九木礼(くきれい)に行くつもりだから、明井田商店街で合流して一緒に避難しましょう。」

理沙の声がスマホ越しに響いた。

「すぐにこの事を桃子達にも話します。」

二実がスマホ越しに理沙に言った。

「あと私が渡したお守りを肌身離さず持っててね。それじゃあ明井田商店街で合流しましょう。」

二実はそういうと通話を終了させたのだった。

そして二実はみんなに言ったのだった。

「みんな??そういうわけだから、私たちも日の入りと共に明井田商店街に向かうわ。そこで青木さん達と合流してそのまま九木礼にまで戻るつもりよ。」

晴南が二実に言った。

「分かりました。」

三緒が二実に尋ねた。

「でもよく青木さん達は気づく事ができたわね。」

二実が三緒に言った。

「ダメもとで一つ試した事があるのよ、どうやらそれがうまくいったみたいね。良かったわ。」

三緒が二実に尋ねた。

「なんかしてたの??二実??」

二実が三緒に言った。

「実は青木さんに渡したお守りの中に御神木の代わりに呪いのお札を入れておいたのよ。」

三緒が二実に言った。

「呪いのお札??お守りの中に呪いのお札なんか入れてどうするのよ??」

二実が三緒に言った。

「私たちが作るお守りでは神通力は防げないでしょ。だったら逆に呪いのお札を入れれば少しは神通力を相殺できるんじゃないかと思ってね。」

三緒が二実に言った。

「よくもまあお守りの中に呪いのお札を入れようなんて考えついたわね。」

二実が三緒に言った。

「そんな言い方しないでよ。結果として青木さん達がこの状況に気づいてくれたんだから結果オーライでしょ。それよりもすぐに準備始めましょう。日が沈んだらすぐに動けるように。」

「うん、そうだね。分かった。」

晴南達はすぐに準備に取り掛かるのだった。
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