あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

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一章

無反応

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二実(つぐみ)の車の最後尾の席に誠二郎(せいじろう)と満子(みつこ)を乗せていた。

来る時に最後尾に座っていた拓也と晃太は車の中央部へと移動していた。

車を運転している二実がみんなに言った。

「みんな狭くてごめんね。」

すると晴南(はるな)が二実に言った。

「大丈夫です二実さん、これぐらいの狭さだったらみんな平気ですから安心してください。」

晃太が晴南に言った。

「なあ?晴南??晴南がそれを言うか?」

晴南が晃太に言った。

「なんでよ??」

晃太が晴南に言った。

「俺と拓也が真ん中の席に来てるから、中央部にいる人数が増えて狭くなってるんだ。拓也なんて立ってくれてるからな。」

晴南が晃太に言った。

「見れば分かるわよ拓也が立ってる事ぐらい??」

「だったら俺が言いたい事も分かるだろう。」

「晃太は狭いのが我慢できないのね?」

「いやこんな状況だから我慢はできるんだ。」

「だったら何よ?」

「晴南は助手席に座ってるだろう??晴南は助手席に一人で座ってるんだから全然狭くないだろう??晴南の場所は狭くないわけだけだから、大丈夫です、これぐらいの狭さなら平気ですって言うのは違うだろう?」

晴南は来る時と同様に運転席の横にある助手席に一人で座っていたのだった。

晴南が晃太に言った。

「もう相変わらず細かいわね。みんなどうせ大丈夫です。って言うと思ったから、先に言ってあげたのよ。」

「晃太は狭いのが我慢できないの?」

「だからそれは我慢できるんだ。」

「だったらいいじゃない。」

すると二実が柚羽(ゆずは)に尋ねた。

「柚羽(ゆずは)ちゃん??神域に変化はないんだよね。」

柚羽が二実に言った。

「はい、変化ありません。来た道を戻るのがいいと思います。」

二実は柚羽に逐一確認を取りながら来た道を戻っていった。

柚羽は神域を感じる感覚を掴んで神域を来た時よりも詳しく感じ取れるようになっていたのだった。

一方、最後尾の席では誠二郎と満子がグルグル巻きにされた手足をほどこうと動き回っていたが、一切の声は出さなかった。

ただ黙って手足を解除しようとしてガサゴソしているのだった。顔や口にはガムテープが張られていなかったので、喋ったり怒鳴ろうと思えばいくらでもできた。

だが満子も誠二郎も何も言わないのだった。

健太が心配そうに後ろの誠二郎と満子を見ながら言った。

「父さん??母さん??こんな事をしてごめんよ。お願いだから何か喋ってよ。」

だが誠二郎も満子も健太の声にすら何の反応もしなかった。

誠二郎と満子はひたすら手足を何とかしようとガサゴソと動かすだけだった。

二実達は来た道を急いで戻っていった。

九前坂(くぜんざか)神社への帰り道は来た道と同じルートを進んだ事もあり、特に問題もなく進むことができて午前3時前には九前坂神社へと到着した。

晴南達が車から降りてきた。

三緒が二実に尋ねた。

「誠二郎さんと満子さんをどうするの?」

二実が三緒に言った。

「とりあえず、第二倉庫の中にでも入ってもらうつもりよ。そのままにしておいたら勝手に家に戻るかもしれないから閉じ込めておかないとね。第二倉庫の方は物がほとんど置いてないし。」

そして二実達は全員で誠二郎と満子を一人ずつ第二倉庫へと運だのだった。

すると拓也が二実に尋ねた。

「何とか九前坂神社まで連れてこれましたけど、どうやって首吊りを回避するんですか?」

二実が拓也に言った。

「本当にそこなのよね。問題は。そもそもこの状態から首つりを回避できるかどうかも分からないし?」

晃太が二実に言った。

「神通力による強制力はかなり強力です。ちょっとやそっとでは何とかできるとは思えませんが。」

優斗が柚羽に尋ねた。

「神通力による力を相殺するには、霊力拡散が有効って話だったけど。霊力拡散はさっき柚羽がやってたよね?」

柚羽が優斗に言った。

「うん、かなり霊力を使って拡散させてみたんだけど、全然ダメだったわ。もうあんまり霊力が残ってないからまたさっきのレベルの霊力拡散を行うのは数日は無理だと思う。」

健太が柚羽に尋ねた。

「姉さん?姉さんはどうすれば父さんと母さんを助けられると思いますか?」

柚羽が健太に言った。

「えっ??ごめん健太、健太の質問には全部ちゃんと答えてあげたいんだけど、ちょっと分からないわ。」

健太が残念そうに柚羽に言った。

「そうですか。」

二実がみんなに言った。

「となると九木礼に連れて帰るしかなさそうね。」

晃太が二実に言った。

「そうですね、九木礼に連れて帰る事ができれば黒輪さん達の手を借りれますから、いい方法が見つけられるかもしれません。」

優斗が二実に言った。

「でも二実さん?先に誠二郎さんと満子さんが首を吊る時間が来てしまいますよ?」

二実が優斗に言った。

「そうなのよね、まずは首つりを何としても回避しないとね。しかも昼間は動きようがないし。」

二実が優斗に尋ねた。

「それで誠二郎さんと満子さんが首をつる時間は??」

優斗が二実に言った。

「誠二郎さんも満子さんも午前9時20分とペンで時刻を書いてました。」

二実が優斗に言った。

「そうすると、今からおよそ6時間後か。」

二実が頭を悩ませながら言った。

「うーん??どうすればいいのかしらね。」

晃太が二実に言った。

「現状、誠二郎さんと満子さんの手足を縛っていますからこの状態なら首を吊ることはできないんじゃないですか?」

二実が晃太に言った。

「うん、確かにね。なら二人をこの状態のまま9時20分まで見張ればいいかな。」

二実達はそういうと第二倉庫の壁の所にいる誠二郎と満子に目をやったのだった。

誠二郎と満子は手足をぐるぐる巻きにされた状態でもガサゴソと動き回ろうとしていた。

二実が誠二郎に話しかけた。

「誠二郎さん??こんな事をしてしまってすいません。何か話して頂けませんか?」

健太が満子に話しかけた。

「母さん??僕だよ、健太だよ!!なんでもいいから話して。」

この時の誠二郎と満子には口には何も巻かれていなかったので、誠二郎や満子がしゃべろうと思えばいくらでもしゃべる事ができた。

だが誠二郎も満子も二実や健太の問いかけには何の反応もせずに、体を揺らしながら動こうとしていたのだった。

二実が残念そうに言った。

「うーん、やっぱりダメか。」

健太が心配そうな様子で言った。

「父さん、母さん。」

すると二実がみんなに言った。

「それじゃあみんな少し休んでいいわ。私たちで誠二郎さんと満子さんを見張っておくから。」

晃太が二実に言った。

「ありがとうございます。それじゃあ8時くらいになったら、僕たちも起きますから。」

すると晴南はケロリとした顔で晃太に言った。

「だらしないわね。もうへばっちゃったの??私なんてまだまだ全然動けるわよ。」

晃太が晴南に言った。

「晴南と同じ感覚で言わないでくれ、もう疲労困憊なんだ。」

優斗が晴南に言った。

「僕も疲れたから休みたいかな。」

二実が晴南に言った。

「晴南ちゃんも少し休んでくれていいわよ。」

晴南が二実に言った。

「私は大丈夫ですよ。」

優斗が晴南に言った。

「晴南?休める時に休んどいた方がいいよ。」

拓也が晴南に言った。

「ああ、俺も体力的にはまだ大丈夫だが休もうと思ってる。」

晴南が拓也に言った。

「まだ元気が有り余ってるんだけど??」

晃太が晴南に言った。

「まあ無理に寝ろとは言わないけどとにかく俺たちは休ませてもらう。」

拓也や優斗や晃太が仮眠のために社務所に向かったため、晴南も渋々と仮眠をするために社務所に向かったのだった。



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