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一章
死の運命
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晴南達は健太を先頭に家の中に入ったのだった。
健太が玄関から大きな声で叫んだ。
「父さん!!母さん!!ただいま!!夜遅くに帰ってきてごめん!!」
だが何の返答もなかった。
再度健太が大きな声で叫んだ。
「父さん??母さん??ただいま!!夜遅くに帰ってきてごめん!!」
だがやはり何の返答も返ってこなかった。
晴南も大きな声で言った。
「誠二郎(せいじろう)さん!!満子(みつこ)さん!!すいません上がらせてもらってます!!!」
晴南も大きな声で叫んだが、何の返事もなく誰かが出てくる気配もなかった。
何度も玄関から呼びかけても誰も出てくる気配が無かった。
晃太が言った。
「返事がないな。」
二実が玄関を見渡しながら言った。
「靴は普通にあるわね。」
晴南が柚羽に尋ねた。
「ねえ柚羽(ゆずは)?これ誠二郎(せいじろう)さんと満子(みつこ)さんの靴??」
柚羽が晴南に言った。
「うん、お父さんとお母さんの靴に間違いないわ。しかもお父さんとお母さんの靴が全部ここに置いてあるわ。」
晴南が柚羽に言った。
「えっ??それって??」
「父さん???母さん!!!」
健太はそう言うと靴を乱暴に脱ぐと家の中へと上がっていった。
拓也がみんなに尋ねた。
「俺たちはどうする??」
晴南が拓也に言った。
「私たちも上がらせてもらいましょ。」
二実が晴南に言った。
「そうだね、私たちも上がらせてもらいましょ。」
晴南達は家の中に上がるとすぐに手分けして家の中の捜索を始めるのだった。
二実達は少しして誠二郎をキッチンにて発見するのだった。
健太が安堵した様子で誠二郎に言った。
「父さん??ここにいたんだね。」
誠二郎の姿を見た二実も慌てて誠二郎に挨拶をした。
「誠二郎さん勝手に上がり込んでしまってすいません。玄関で呼びかけてもお返事がなかったので、緊急事態かとおもって上がらせてもらいました。」
だが返ってくるであろう誠二郎の返答はいっこうに返ってこなかった。
二実が再び誠二郎に声を掛けた。
「誠二郎さん??」
だがやはり誠二郎は何も答えなかった。
誠二郎は二実や健太の問いかけには何の反応も示さずに、ただひたすらキッチンの床に座って床を凝視しながら何か作業をしていた。
気になった健太が誠二郎に尋ねた。
「ねえ父さん??キッチンで黙々と何をしてるの?」
だが返事はなかった。
健太が心配して誠二郎が何をしているのか覗き込んだ。
「父さん??」
すると覗き込んだ健太がギョッとした。
健太に続いて覗き込んだ晴南と二実もギョッとしてしまうのだった。
誠二郎は一心不乱に床にマジックで数字を書き続けていたのだ。
2019年7月17日午前9時20分と。床には2019年7月17日午前9時20分と何度も何度もその日時が書き続けられていた。
床には何度も2019年7月17日午前9時20分と書き込まれており、真っ黒になりつつあった。
驚いた健太や二実が誠二郎に尋ねた。
「父さん??」
「誠二郎さん???」
だがやはり誠二郎は健太や二実の声には何の反応も示さずに黙々と床に文字を書き続けるのだった。
誠二郎はただひたすらに床に文字を書き込む。
すると別の部屋から三緒の声が響いてきた。
「二実!!大変よ!!」
「三緒!!どうしたの??」
二実と晴南と健太はすぐに三緒の声がした1階の寝室へと向かった。
寝室に入った二実が三緒に尋ねた。
三緒達寝室の中で茫然としていたのだった。
二実が三緒に尋ねた。
「どうしたの??三緒??」
三緒が二実に言った。
「満子さんが」
三緒はそう言うと部屋の奥を指さした。
部屋の奥の方には満子がいた。
二実が声を掛けた。
「満子さん??」
健太も満子に声を掛けた。
「母さん??」
呼び掛けられた満子は健太にも二実にも返事を返す事はなかった。
満子は二人の呼び掛けには何一つ反応一つせずにマジックを左手に持って寝室の壁に何か文字を書き続けていた。
二実と健太は恐る恐る満子が何をしているのか確認した。
満子は1階の寝室の壁にひたすら文字を書き続けていた。
2019年7月17日午前9時20分、2019年7月17日午前9時20分と何度も何度も繰り返し書き続けていた。
壁の一部が黒くなり始めていた。
二実も健太も驚いて満子に言った。
「満子さん!!満子さん!!!」
「母さん?僕だよ!!健太だよ!!ただいま!!!」
だが満子は二人の呼びかけに一切反応せずに2019年7月17日午前9時20分と壁に書き続けてるだけであった。
三緒が二実に言った。
「私が見つけた時はもうこの状態だったわ。」
二実が三緒に言った。
「そんな満子さんまで??」
三緒が二実に尋ねた。
「ところで誠二郎さんはいたの??」
二実が三緒に言った。
「誠二郎さんは一階のキッチンにいたけど。ダメ、満子さんと同じ状態よ。」
三緒が二実に言った。
「そんな。」
二実が健太と柚羽に言った。
「ごめん健太君、柚羽ちゃん。来るのが少し遅かったみたい。」
すると三緒が二実に言った。
「待って、まだ誠二郎さんと満子さんが首を吊ったわけじゃないわ。」
二実が三緒に言った。
「まあそうだけどこの状態になってしまった人を助ける事ってできるのかしら?私や晴南ちゃん達を含めて助ける事できた人たちはみんな首を吊る前兆シグナルが出ていなかった人達だったでしょ。誠二郎さんも満子さんも首を吊る前兆シグナルがもう出てしまっているのよ。死の運命を確定させられた後で、それをひっくり返す事なんてできるの??」
三緒が二実に言った。
「私たちは誠二郎さんと満子さんを助けるために来たんでしょう??誠二郎さんと満子さんに前兆シグナルが出ていたからって簡単に諦めてしまっていいの??」
二実が三緒に言った。
「そうだね三緒。確かに三緒のいう通りだわ。やれることは全部やりましょうか。」
二実が言った。
「とは言ったものの??どうすればいいかな?」
晃太が二実に言った。
「首を吊らされるのは神通力によって死の運命を確定されるからですよね。だったら霊力を拡散させるしかないんじゃないですか?」
優斗が二実に言った。
「僕も誠二郎さん達を助けられる可能性があるとするとその方法しかないと思います。僕達が助けてもらったのもまさにその方法でしたし。」
二実が優斗に言った。
「そうだね、それしか方法はなさそうね。」
すると柚羽が二実に言った。
「それなら私が霊力を拡散させてみます。」
二実が柚羽に言った。
「ごめん、柚羽ちゃんお願いできる。」
柚羽が二実に言った。
「はい。」
そして柚羽は目を瞑ると、霊力の拡散を始めるのだった。
「無面(むめん)」
柚羽がそう言うと、寝室の壁や床から真っ黒な小さな影がニョキと現れて、その小さな真っ黒な影はどんどん大きくなって人の形となっていた。
一体また一体と真っ黒な人の形をした影が現れては満子の前に移動するのだった。
計5体の真っ黒な影が満子を取り囲むように立ち尽くすのだった。
この様子を見ていた二実が柚羽に言った。
「すごい霊力拡散ね。さすが柚羽ちゃん。」
だが少しして柚羽が二実にこう言うのだった。
「ダメみたいです。無面(むめん)で影を飛ばして霊力拡散してみましたが、お母さんの様子は全然変わらないです。」
柚羽の言う通り、影に取り囲まれた後も満子の様子は全然変わらなかった。
満子は相変わらず2019年7月17日午前9時20分と壁に書き続けていた。
柚羽は霊力拡散をやめたのだった。
満子を囲んでいた黒い人の影も消えていった。
二実が満子を見ながら柚羽に言った。
「本当ね、全然変化がない。」
晴南がみんなに尋ねた。
「柚羽でもどうにもできないとなると、どうすればいいの?」
誰も晴南の問いには答えられずに全員が考え込んでしまった。
するとしばらく考え込んでいた二実が健太と柚羽に尋ねた。
「ねえ健太君??柚羽ちゃん??かなり荒っぽいやり方になるんだけど、いいかな?」
健太が二実に尋ねた。
「荒っぽいやり方??どうするんですか??」
二実が健太に言った。
「こうなったら力づくで誠二郎さんと満子さんを車に押し込んで一緒に九前坂(くぜんざか)神社に来てもらおうと思うんだけど。」
三緒が二実に言った。
「それって満子さんと誠二郎さんを誘拐しようって事?」
二実が三緒に言った。
「言い方は悪いけど、そうなるわね。」
三緒が二実に言った。
「それは最後の手段でいいでしょ??もっと他の方法を試してからでもいいんじゃないの?」
二実が三緒に言った。
「もうほかの方法を試している時間がないのよ。私たちにしても朝までここにいられるわけじゃないわ。今日の日の出の時間が午前4時2分だから帰りの時間を考えるとあと40分もしたら出発しなきゃならなくなる。もう時間もないから、力づくでも車に乗せて九前坂神社に来てもらうしかないでしょう。二人をここに残していけば間違いなく午前9時20分に首を吊らされて殺されてしまうわ。」
三緒が二実に言った。
「うん、分かった。」
すると健太と柚羽が二実に言った。
「二実さん、お願いします。」
「私もお願いします。」
二実が二人に言った。
「ありがとう。」
すると二実が健太に尋ねた。
「健太君この家にガムテープはある?あるならあるだけ持ってきてほしいんだけど。」
「引っ越した時に使ったのが残ってたはずなんで持ってきます。」
健太はそう言うとガムテープを取りに寝室を出ていった。
健太はガムテープを6個ほど抱えて戻ってきたのだった。
「それじゃあ誠二郎さんから始めるから、みんなキッチンに行きましょうか。」
二実達はそういうと再びキッチンに向かったのだった。
キッチンでは相変わらず誠二郎が床に日時をひたすら書きこんでいるのだった。
二実がみんなに言った。
「それじゃあ誠二郎さんをガムテープでグルグル巻きにするから、みんなガムテープを一つづつ持って。」
三緒が二実に言った。
「待って、誠二郎さんをガムテープでグルグル巻きになんて簡単にできると思えないんだけど?いきなりガムテームを巻きはじめたら抵抗されるんじゃないの??」
拓也が三緒に言った。
「そうですね、体格のいい誠二郎さんだから、抵抗されたらかなり危ないです。」
二実が二人に言った。
「その点は心配しなくていいわ。」
そういうと二実は何かをポケットから取り出したのだった。
誠二郎は相変わらず何の反応も示さずに黙々とキッチンの床に2019年7月17日午前9時20分と書き続けるのだった。
二実が誠二郎に向けて言った。
「誠二郎さんすいません。」
すると二実は手に持った何かを誠二郎の顔に向けて噴射したのだった。
二実は数秒ほど誠二郎の顔に噴射をしたのだった。
すぐに誠二郎は苦しそうにのたうち回り始めたのだった。
驚いた三緒が二実に尋ねた。
「ちょっと二実??何を吹きかけたの?その手に持ってる物はなに??」
二実が三緒に言った。
「催涙スプレーよ。唐辛子入りのやつよ。体への影響はないはずよ。」
三緒が二実に言った。
「催涙スプレーを誠二郎さんに吹きつけたわけ??」
二実がみんなに言った。
「ええ、そうよ。」
誠二郎は少しの間のたうち回っていたが、すぐに動きが鈍るのだった。
二実がみんなに言った。
「さあみんな誠二郎さんの動きが鈍っている間に、私たちで誠二郎さんの体を抑えておくから、手足を早くグルグル巻きにして。」
拓也と晴南と二実で誠二郎の体を抑えつけて、残りのメンバーで手足にガムテープを巻いていった。
そしてなんとか誠二郎の手足をグルグル巻きにすると、全員で二実の車に運んだのだった。
三緒がため息をついて二実に言った。
「やってることがまんま誘拐犯なんだけど。」
二実が三緒に言った。
「なら満子さんと誠二郎さんをここに置いていく??それよりはましでしょ?」
三緒が二実に言った。
「うん、分かってるけど。」
二実が三緒に言った。
「それよりも満子さんもはやく車に運ばないと。」
そしてその後すぐに1階の寝室に向かうと、誠二郎の時と同じ方法で満子の手足をグルグル巻きにして二実の車に全員で運んだのだった。
二実は誠二郎と満子を無理やり車に押し込んだあと、すぐにみんなを乗せて車を発進させたのだった。
健太が玄関から大きな声で叫んだ。
「父さん!!母さん!!ただいま!!夜遅くに帰ってきてごめん!!」
だが何の返答もなかった。
再度健太が大きな声で叫んだ。
「父さん??母さん??ただいま!!夜遅くに帰ってきてごめん!!」
だがやはり何の返答も返ってこなかった。
晴南も大きな声で言った。
「誠二郎(せいじろう)さん!!満子(みつこ)さん!!すいません上がらせてもらってます!!!」
晴南も大きな声で叫んだが、何の返事もなく誰かが出てくる気配もなかった。
何度も玄関から呼びかけても誰も出てくる気配が無かった。
晃太が言った。
「返事がないな。」
二実が玄関を見渡しながら言った。
「靴は普通にあるわね。」
晴南が柚羽に尋ねた。
「ねえ柚羽(ゆずは)?これ誠二郎(せいじろう)さんと満子(みつこ)さんの靴??」
柚羽が晴南に言った。
「うん、お父さんとお母さんの靴に間違いないわ。しかもお父さんとお母さんの靴が全部ここに置いてあるわ。」
晴南が柚羽に言った。
「えっ??それって??」
「父さん???母さん!!!」
健太はそう言うと靴を乱暴に脱ぐと家の中へと上がっていった。
拓也がみんなに尋ねた。
「俺たちはどうする??」
晴南が拓也に言った。
「私たちも上がらせてもらいましょ。」
二実が晴南に言った。
「そうだね、私たちも上がらせてもらいましょ。」
晴南達は家の中に上がるとすぐに手分けして家の中の捜索を始めるのだった。
二実達は少しして誠二郎をキッチンにて発見するのだった。
健太が安堵した様子で誠二郎に言った。
「父さん??ここにいたんだね。」
誠二郎の姿を見た二実も慌てて誠二郎に挨拶をした。
「誠二郎さん勝手に上がり込んでしまってすいません。玄関で呼びかけてもお返事がなかったので、緊急事態かとおもって上がらせてもらいました。」
だが返ってくるであろう誠二郎の返答はいっこうに返ってこなかった。
二実が再び誠二郎に声を掛けた。
「誠二郎さん??」
だがやはり誠二郎は何も答えなかった。
誠二郎は二実や健太の問いかけには何の反応も示さずに、ただひたすらキッチンの床に座って床を凝視しながら何か作業をしていた。
気になった健太が誠二郎に尋ねた。
「ねえ父さん??キッチンで黙々と何をしてるの?」
だが返事はなかった。
健太が心配して誠二郎が何をしているのか覗き込んだ。
「父さん??」
すると覗き込んだ健太がギョッとした。
健太に続いて覗き込んだ晴南と二実もギョッとしてしまうのだった。
誠二郎は一心不乱に床にマジックで数字を書き続けていたのだ。
2019年7月17日午前9時20分と。床には2019年7月17日午前9時20分と何度も何度もその日時が書き続けられていた。
床には何度も2019年7月17日午前9時20分と書き込まれており、真っ黒になりつつあった。
驚いた健太や二実が誠二郎に尋ねた。
「父さん??」
「誠二郎さん???」
だがやはり誠二郎は健太や二実の声には何の反応も示さずに黙々と床に文字を書き続けるのだった。
誠二郎はただひたすらに床に文字を書き込む。
すると別の部屋から三緒の声が響いてきた。
「二実!!大変よ!!」
「三緒!!どうしたの??」
二実と晴南と健太はすぐに三緒の声がした1階の寝室へと向かった。
寝室に入った二実が三緒に尋ねた。
三緒達寝室の中で茫然としていたのだった。
二実が三緒に尋ねた。
「どうしたの??三緒??」
三緒が二実に言った。
「満子さんが」
三緒はそう言うと部屋の奥を指さした。
部屋の奥の方には満子がいた。
二実が声を掛けた。
「満子さん??」
健太も満子に声を掛けた。
「母さん??」
呼び掛けられた満子は健太にも二実にも返事を返す事はなかった。
満子は二人の呼び掛けには何一つ反応一つせずにマジックを左手に持って寝室の壁に何か文字を書き続けていた。
二実と健太は恐る恐る満子が何をしているのか確認した。
満子は1階の寝室の壁にひたすら文字を書き続けていた。
2019年7月17日午前9時20分、2019年7月17日午前9時20分と何度も何度も繰り返し書き続けていた。
壁の一部が黒くなり始めていた。
二実も健太も驚いて満子に言った。
「満子さん!!満子さん!!!」
「母さん?僕だよ!!健太だよ!!ただいま!!!」
だが満子は二人の呼びかけに一切反応せずに2019年7月17日午前9時20分と壁に書き続けてるだけであった。
三緒が二実に言った。
「私が見つけた時はもうこの状態だったわ。」
二実が三緒に言った。
「そんな満子さんまで??」
三緒が二実に尋ねた。
「ところで誠二郎さんはいたの??」
二実が三緒に言った。
「誠二郎さんは一階のキッチンにいたけど。ダメ、満子さんと同じ状態よ。」
三緒が二実に言った。
「そんな。」
二実が健太と柚羽に言った。
「ごめん健太君、柚羽ちゃん。来るのが少し遅かったみたい。」
すると三緒が二実に言った。
「待って、まだ誠二郎さんと満子さんが首を吊ったわけじゃないわ。」
二実が三緒に言った。
「まあそうだけどこの状態になってしまった人を助ける事ってできるのかしら?私や晴南ちゃん達を含めて助ける事できた人たちはみんな首を吊る前兆シグナルが出ていなかった人達だったでしょ。誠二郎さんも満子さんも首を吊る前兆シグナルがもう出てしまっているのよ。死の運命を確定させられた後で、それをひっくり返す事なんてできるの??」
三緒が二実に言った。
「私たちは誠二郎さんと満子さんを助けるために来たんでしょう??誠二郎さんと満子さんに前兆シグナルが出ていたからって簡単に諦めてしまっていいの??」
二実が三緒に言った。
「そうだね三緒。確かに三緒のいう通りだわ。やれることは全部やりましょうか。」
二実が言った。
「とは言ったものの??どうすればいいかな?」
晃太が二実に言った。
「首を吊らされるのは神通力によって死の運命を確定されるからですよね。だったら霊力を拡散させるしかないんじゃないですか?」
優斗が二実に言った。
「僕も誠二郎さん達を助けられる可能性があるとするとその方法しかないと思います。僕達が助けてもらったのもまさにその方法でしたし。」
二実が優斗に言った。
「そうだね、それしか方法はなさそうね。」
すると柚羽が二実に言った。
「それなら私が霊力を拡散させてみます。」
二実が柚羽に言った。
「ごめん、柚羽ちゃんお願いできる。」
柚羽が二実に言った。
「はい。」
そして柚羽は目を瞑ると、霊力の拡散を始めるのだった。
「無面(むめん)」
柚羽がそう言うと、寝室の壁や床から真っ黒な小さな影がニョキと現れて、その小さな真っ黒な影はどんどん大きくなって人の形となっていた。
一体また一体と真っ黒な人の形をした影が現れては満子の前に移動するのだった。
計5体の真っ黒な影が満子を取り囲むように立ち尽くすのだった。
この様子を見ていた二実が柚羽に言った。
「すごい霊力拡散ね。さすが柚羽ちゃん。」
だが少しして柚羽が二実にこう言うのだった。
「ダメみたいです。無面(むめん)で影を飛ばして霊力拡散してみましたが、お母さんの様子は全然変わらないです。」
柚羽の言う通り、影に取り囲まれた後も満子の様子は全然変わらなかった。
満子は相変わらず2019年7月17日午前9時20分と壁に書き続けていた。
柚羽は霊力拡散をやめたのだった。
満子を囲んでいた黒い人の影も消えていった。
二実が満子を見ながら柚羽に言った。
「本当ね、全然変化がない。」
晴南がみんなに尋ねた。
「柚羽でもどうにもできないとなると、どうすればいいの?」
誰も晴南の問いには答えられずに全員が考え込んでしまった。
するとしばらく考え込んでいた二実が健太と柚羽に尋ねた。
「ねえ健太君??柚羽ちゃん??かなり荒っぽいやり方になるんだけど、いいかな?」
健太が二実に尋ねた。
「荒っぽいやり方??どうするんですか??」
二実が健太に言った。
「こうなったら力づくで誠二郎さんと満子さんを車に押し込んで一緒に九前坂(くぜんざか)神社に来てもらおうと思うんだけど。」
三緒が二実に言った。
「それって満子さんと誠二郎さんを誘拐しようって事?」
二実が三緒に言った。
「言い方は悪いけど、そうなるわね。」
三緒が二実に言った。
「それは最後の手段でいいでしょ??もっと他の方法を試してからでもいいんじゃないの?」
二実が三緒に言った。
「もうほかの方法を試している時間がないのよ。私たちにしても朝までここにいられるわけじゃないわ。今日の日の出の時間が午前4時2分だから帰りの時間を考えるとあと40分もしたら出発しなきゃならなくなる。もう時間もないから、力づくでも車に乗せて九前坂神社に来てもらうしかないでしょう。二人をここに残していけば間違いなく午前9時20分に首を吊らされて殺されてしまうわ。」
三緒が二実に言った。
「うん、分かった。」
すると健太と柚羽が二実に言った。
「二実さん、お願いします。」
「私もお願いします。」
二実が二人に言った。
「ありがとう。」
すると二実が健太に尋ねた。
「健太君この家にガムテープはある?あるならあるだけ持ってきてほしいんだけど。」
「引っ越した時に使ったのが残ってたはずなんで持ってきます。」
健太はそう言うとガムテープを取りに寝室を出ていった。
健太はガムテープを6個ほど抱えて戻ってきたのだった。
「それじゃあ誠二郎さんから始めるから、みんなキッチンに行きましょうか。」
二実達はそういうと再びキッチンに向かったのだった。
キッチンでは相変わらず誠二郎が床に日時をひたすら書きこんでいるのだった。
二実がみんなに言った。
「それじゃあ誠二郎さんをガムテープでグルグル巻きにするから、みんなガムテープを一つづつ持って。」
三緒が二実に言った。
「待って、誠二郎さんをガムテープでグルグル巻きになんて簡単にできると思えないんだけど?いきなりガムテームを巻きはじめたら抵抗されるんじゃないの??」
拓也が三緒に言った。
「そうですね、体格のいい誠二郎さんだから、抵抗されたらかなり危ないです。」
二実が二人に言った。
「その点は心配しなくていいわ。」
そういうと二実は何かをポケットから取り出したのだった。
誠二郎は相変わらず何の反応も示さずに黙々とキッチンの床に2019年7月17日午前9時20分と書き続けるのだった。
二実が誠二郎に向けて言った。
「誠二郎さんすいません。」
すると二実は手に持った何かを誠二郎の顔に向けて噴射したのだった。
二実は数秒ほど誠二郎の顔に噴射をしたのだった。
すぐに誠二郎は苦しそうにのたうち回り始めたのだった。
驚いた三緒が二実に尋ねた。
「ちょっと二実??何を吹きかけたの?その手に持ってる物はなに??」
二実が三緒に言った。
「催涙スプレーよ。唐辛子入りのやつよ。体への影響はないはずよ。」
三緒が二実に言った。
「催涙スプレーを誠二郎さんに吹きつけたわけ??」
二実がみんなに言った。
「ええ、そうよ。」
誠二郎は少しの間のたうち回っていたが、すぐに動きが鈍るのだった。
二実がみんなに言った。
「さあみんな誠二郎さんの動きが鈍っている間に、私たちで誠二郎さんの体を抑えておくから、手足を早くグルグル巻きにして。」
拓也と晴南と二実で誠二郎の体を抑えつけて、残りのメンバーで手足にガムテープを巻いていった。
そしてなんとか誠二郎の手足をグルグル巻きにすると、全員で二実の車に運んだのだった。
三緒がため息をついて二実に言った。
「やってることがまんま誘拐犯なんだけど。」
二実が三緒に言った。
「なら満子さんと誠二郎さんをここに置いていく??それよりはましでしょ?」
三緒が二実に言った。
「うん、分かってるけど。」
二実が三緒に言った。
「それよりも満子さんもはやく車に運ばないと。」
そしてその後すぐに1階の寝室に向かうと、誠二郎の時と同じ方法で満子の手足をグルグル巻きにして二実の車に全員で運んだのだった。
二実は誠二郎と満子を無理やり車に押し込んだあと、すぐにみんなを乗せて車を発進させたのだった。
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カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
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