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しまうま弁当

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一章

高校の怪談

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7月16日午後2時の明井田市内の九前坂地区内にあるハンバーガー店内で話し込んでいる4人の女子高生の姿があった。

彼女達は店内のテーブル席に座りながら雑談をしていた。

その一人である長い赤髪でツインテールでスタイルのよい少女が言った。

「あーあ、最悪夕方から雨だって??傘持ってきてないし。土曜日なんだから晴れないさいよ。全く。」

すると隣に座っていたショートヘアーで金髪のスタイルのよい少女がその子に言った。

「えっ??桃子??昨日の天気予報でも今日の夕方から雨だって言ってたわよ。なんで傘を持ってこなかったの?」

桃子(ももこ)と呼ばれた少女が隣の金髪の少女に言った。

「だって楓(かえで)。傘なんて持ってきたら片手塞がっちゃうでしょ?傘を忘れないように気を配るのもめんどくさいし。」

楓(かえで)と呼ばれた少女が桃子に言った。

「だったら携帯用の傘かレインコートをカバンの中に入れとけばいいでしょ。」

桃子(ももこ)が楓(かえで)に言った。

「だってめんどくさいじゃん。カバンの中濡れちゃうしさ。」

楓が桃子に言った。

「だからって自分が濡れたら意味ないでしょ。」

桃子が楓に言った。

「それよりももうすぐ夏休みでしょ?みんなでどっかに行かない?」

楓が桃子に言った。

「今から予定組む気?ちょっと急じゃない?これから予定組んでも宿の予約が取れないでしょ。」

すると対面の席に座っていた緑色で長髪の小柄でスレンダーな少女が桃子に言った。

「それに来年は高校3年生でしょ。進学するつもりならそろそろ受験勉強始めとかないとまずいよ。」

桃子がその緑髪の少女に言った。

「由衣(ゆい)??そんな話は聞きたくもないわ。」

由衣(ゆい)と呼ばれた少女は桃子に尋ねた。

「えっ?それじゃあ桃子就職する気なの?」

桃子が由衣(ゆい)に言った。

「そうじゃなくて休みの日はそういう真面目な話はしないって決めてるの。」

楓が桃子に言った。

「そういう事はあんまり先延ばしにしない方がいいと思うよ。」

由衣(ゆい)が楓に同調しながら桃子に言った。

「就職するつもりならいいけど、進学する気が少しでもあるのなら早めに勉強を始めとかないと間に合わなくなるよ。」

すると楓は由衣の隣に座っている長い黒髪のスレンダーな少女に同意を求めた。

「ほら、理沙(りさ)も何か言ったあげて。」

理沙(りさ)と呼ばれた少女が楓に言った。

「ううん、私はいいよ。それは桃子の決める事だし。」

すると桃子が理沙に言った。

「ありがとう。理沙(りさ)はやさしいから大好きよ。」

桃子が楓と由衣に言った。

「さあこれで2対2よ。せっかく休みなんだし真面目な話はここまで。ここからはもっと面白い話をしましょう。」

楓が桃子に言った。

「了解。」

由衣が桃子に言った。

「分かった。」

すると桃子のおなかがグーとなったのだった。

「まったくおなかまで空いてきちゃった。こんな事なら途中のコンビニでサンドイッチでも買ってこればよかった。」

楓が呆れた顔で桃子に尋ねた。

「またお腹を空かせてるの?」

桃子が楓に答えた。

「仕方ないでしょ。お昼まだなんだから。」

桃子が楓に言った。

「そもそもさここってハンバーガー屋さんでしょ??なんでハンバーガーを売ってないのよ?」

楓が桃子に言った。

「そうだよね、ここってハンバーガショップなのにね。」

桃子が楓に言った。

「マッテリアってハンバンガーの大手チェーンでしょ。こんなにやる気がなくていいわけ?」

楓が桃子に言った。

「マッテリアなのに何も売ってないもんね。バーガー類に加えて飲み物やポテトとかも売ってないし。ただウォーターサーバーが置いてあるだけだもんね。」

由衣が桃子に言った。

「そもそも店員さんがいないもんね。レジにも誰もいないし、冷房も全然効いてないからめちゃくちゃ暑いしね。店の中もすごく狭いし。」

桃子が由衣に言った。

「本当よ。大手のハンバーガーチェーン店がテーブル席一つだけとかありえないでしょ?ハンバーガ屋さんなんだからちゃんとハンバーガーを売りなさいよね。全く。」

由衣が桃子に言った。

「桃子の言う通りやる気なさすぎだね。」

すると楓がみんなに言った。

「そういえばさ、ちょっと相談したい事があるんだけど?」

すると桃子が楓に言った。

「ちょっと楓、真面目な話はやめてよ。」

楓が言いにくそうに桃子に言った。

「真面目な話じゃくてなんていうか怖い話なのよ。」

桃子が嬉しそうに楓に言った。

「ああそっち系の話ね。そういう話なら大歓迎よ。どんどん話して。」

桃子が楓に尋ねた。

「それで楓なに?変な男に付きまとわれてるとか?もしかしてストーカーをされてるとか?」

由衣が楓に言った。

「えっ?ストーカー??ストーカーなら警察に相談した方がいいよ。」

楓が二人に言った。

「いやそういうんじゃなくてさ。ほら今学校で噂になってる方のやつ?」

桃子が楓に言った。

「噂になってるやつ??ああ??もしかして北館に男の子の幽霊が出るって話??」

楓が桃子に言った。

「うん、その話。」

由衣が楓に言った。

「怪談とか七不思議とかって大半が作り話だったり、話におひれがついておおげさな話になってるだけだからそんなに気にしなくていいと思うよ。」

楓が由衣に言った。

「私もそう思ってたんだけどさ一昨日に見ちゃったのよ。」

由衣が楓に聞き返した。

「見たって何を??」

楓が由衣に言った。

「男の子の幽霊を?たぶん噂になってる男の子の幽霊だと思うんだけど。」

桃子が楓に尋ねた。

「ええいつ見たの??」

楓が桃子に言った。

「ほらおとといの3時間目に視聴覚室で英語の授業をやったでしょ?それで私カギを閉める当番だったからみんなが視聴覚室から出てから施錠をして教室に戻ろうとしたのよ。それで3階の視聴覚室から1階の2年1組の教室に戻るときに見ちゃったのよ。10歳くらいの男の子が笑顔で私の方を見てたのよ。不気味な笑顔で私の事を見つめてたの。それで少ししたらフッって消えちゃったのよ。」

桃子が楓に尋ねた。

「それどこで見たの?」

楓が桃子に言った。

「視聴覚室を出て少し歩いた場所だったから北館の3階の廊下の中央辺りだと思う。」

すると由衣が楓に言った。

「中学校の子が迷い込んでただけじゃないの?ほらうちって中高一貫校でしょ?中学校の校舎から北館の方に迷って来てただけかもしれないよ。」

楓が由衣に言った。

「たぶん違うと思うわ。その子中学校の制服着てなかったし。それになによりその男の子沈んでたのよ。」

由衣が楓に尋ねた。

「沈んでたってどういう事?」

楓が由衣に言った。

「言葉通りよ。下半身がなかったの?いや下半身がないっていうよりは廊下の床から上半身だけ出してる感じだった。蒼白い顔で私の方を向いて笑ってたわ。」

桃子が楓に尋ねた。

「上半身だけ出してその男の子が由衣の方を見て笑ってたって言うの?」

楓が桃子に言った。

「うんそう。10歳くらいの男の子の幽霊が私を見ながら不気味に笑ってたのよ。」

すると由衣が楓に尋ねた。

「ちょっと待って楓??三時限目が終わった直後っていう事は時間的には昼間だよね?昼間に幽霊を見たって言う事??」

楓が由衣に言った。

「うん、4時限目が始まる少し前だから午前11時45分前後だと思う。」

由衣が桃子に尋ねた。

「ねえ桃子?そんな真昼間に幽霊って出るものなの?」

桃子が由衣に言った。

「そんなの私に分かるわけないでしょ。」

由衣が楓に言った。

「それで怖くなってこうして相談してるんだね?」

楓が由衣に言った。

「うん。」

由衣が楓に言った。

「真昼間に幽霊とか嫌だね。」

桃子が由衣に言った。

「本当よね。私たちが登校してる時間に現れないでほしいわよね。三階の廊下って特別教室ばっかりだから廊下を使う人が少なくて空いてるのよね。だからいつも使ってるんだけどしばらくは別のルート使おうかな。」

すると桃子が思い出したように理沙に尋ねた。

「あっ??そういえば理沙も少し前に何かあったって言ってなかったけ?理沙も男の子の幽霊を見たんだったっけ?」

由衣が桃子に言った。

「違うよ、カバンが置いてあったの。」

桃子が由衣に聞き返した。

「カバン??」

由衣が桃子に言った。

「桃子?もう忘れたちゃったの?かなり大事になったと思うけど?」

桃子が由衣に言った。

「も、もちろん覚えてるわよ。話を盛り上げようとしているだけでしょ。」

由衣が桃子に言った。

「本当に?桃子ってけっこう忘れっぽい所があるから。」

すると理沙が二人に言った。

「いいよ、分かった。それじゃあもう1度話すね。あれは3週間ぐらい前の事だと思うけど朝高校の2年1組の教室に行ったら知らないカバンが私の机の上に三つも置いてあったの。」

桃子が理沙に尋ねた。

「知らないカバンって??」

理沙が桃子に言った。

「私たちが使ってる学校指定の学用品を入れるカバンが朝学校に来たら置いてあったのよ。机の上に3つも。しかもその3つのカバンは授業で使う教科書とかノートとか参考書とかがぎっしり入った状態で置かれていたの。」

由衣が桃子に言った。

「その上その教科書やノートが途中まで使っていた形跡があったんだよね。」

桃子が理沙に尋ねた。

「えっ??それ誰の忘れ物だったの?」

理沙が桃子に言った。

「誰の忘れ物でもなかったの。誰も忘れたと名乗りでなかった。それで先生たちが全生徒の教科書とノートを確認したんだけど、みんなちゃんと自分のカバンや教科書やノートを持ってたのよ。同学年の生徒はだれも忘れたり失くしていなかったの。」

桃子が理沙に尋ねた。

「えっ??それじゃあ誰かの忘れ物じゃなかったの?」

理沙が桃子に言った。

「うん、そう。」

由衣が理沙に言った。

「わけが分からないよね。誰かの忘れ物でないのならあのカバンは誰が何の目的で置いてったのって事になるよね。」

理沙が由衣に言った。

「それで先生たちが警察に相談しに行ったの。すぐに警察の人が来て捜査が始まったよね。」

由衣が理沙に言った。

「うん、警察の人の話ではドロボウが学校に侵入して誤って他の学校で盗んできた盗品を置いていった可能性があるんじゃないかって事になったんだよね。」

理沙が由衣に言った。

「それで警察の人達が監視カメラとかでその前後の日の映像とかを調べてくれたんだけど、ドロボウが侵入した形跡が全く見つからなかったんだよね。」

由衣が理沙に言った。

「うちの高校は夜でも警備員さんが常駐してるし夜は監視カメラに加えて赤外線センサーなんかもたくさん作動させてるらしいけど。それで不審者が侵入した形跡が全く見つからなかったんだよね。」

理沙が由衣に言った。

「それで今度はうちの高校の生徒がイタズラしたんじゃないかって可能性が疑われたんだよね。去年使ってた教科書か書店で新しく教科書を買って2年生の教室でイタズラしたんじゃないかって。」

由衣が理沙に言った。

「でもこれも違ったもんね。」

理沙が由衣に言った。

「うん、私の机の上に置かれていたカバンの中に入ってた英語と世界史の教科書は改訂版の今年に発行された一番新しいタイプの教科書だったからね。」

由衣が理沙に言った。

「もし3年生がイタズラで前に使ってた教科書を置いていったのなら、今年発行された教科書が入ってるのはおかしいもんね。」

理沙が由衣に言った。

「それに警察の人達は教科書を売ってる明井田書店の方も調べてくれたしね。」

由衣が理沙に言った。

「うん、うちの学校の教科書は明井田書店でしか買う事ができないもんね。でも5月以降に教科書を買っていった客は一人もいなかったし、4月の段階で教科書を2冊以上買ってる生徒もいなかった。」

理沙が由衣に言った。

「先生がうちの高校の生徒全員の教科書を確認してるから、うちの高校の生徒がイタズラでカバンを置いていった可能性も消えたんだよね。」

由衣が理沙に言った。

「だったらあのカバンは誰が何の目的でどうやって置いていったのって話だよね。」

楓が理沙に言った。

「あのカバンも不気味で怖かったよね。」

桃子が理沙に尋ねた。

「それで結局どうなったの?」

理沙が桃子に言った。

「結局真相は分からずじまいで、とりあえず置いてあったカバンと中身は遺失物として警察に預かってもらってもらう事になったの。未だに誰も持ち主は名乗りでてないらしいわ。」

由衣が理沙に言った。

「本当に意味分かんないよね?カバンが増えるって?」

桃子が理沙に言った。

「案外プレゼントとかじゃないの?」

由衣が桃子に言った。

「使いかけの教科書やカバンなんかもらっても喜ばれるわけないよ?不気味がられるだけ。そもそも誰がどうやってあげたっていうの?誰も理沙の机にあのカバンを置く事ができないんだよ。」

桃子が由衣に尋ねた。

「それじゃあどういう事よ??」

由衣が桃子に答えた。

「そんなの警察の人でもお手上げなのに私に分かるわけないでしょ。」

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