あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

文字の大きさ
上 下
115 / 135
一章

オバケの結集

しおりを挟む
7月9日の明け方前、封木神社の下社にはたくさんの者達が集まっていた。

たくさんの者達といっても人々が集まっているわけではなかった。

人ではない様々なオバケ達が封木神社の境内に集まっていたのだった。

その様子を見ながら二実が横にいる三緒に言った。

「なによこれ百鬼夜行か何かかしら?神聖な封木神社の境内がオバケで埋め尽くされているわ。」

それを聞いた三緒が二実に言った。

「二実?そんな言い方はないでしょう??みんな私達に味方してくれたオバケさん達なのよ、感謝しないとダメでしょう??」

二実が三緒に言った。

「もちろん分かっているんだけど、何というか、巫女としてはすごく複雑な気分だわ。」

すると二実のもとに晴南達がやって来た。

晴南が二実に言った。

「二実さん、今戻りました。」

晴南達に気がついた二実が晴南に尋ねた。

「学校のオバケさん達はどうだった??」

晴南が二実に言った。

「九木礼小学校と中学校のオバケさん達もあらかた味方についてくれました。」

三緒が晴南に言った。

「それは良かったわ。」

二実が柚羽に言った。

「そうだ柚羽ちゃん、この前は本当にありがとうね。助かったわ。」

幽霊の柚羽が二実に言った。

「いえ皆さんが無事でよかったです。」

三緒が柚羽に言った。

「柚羽ちゃんのおかげで無事に戻って来られたわ。」

すると二実の近くにいた黒輪(こくりん)が柚羽に言った。

「柚羽殿、本当にかたじけない。おかげで助かり申した。」

大蛇の姿の無色(むしき)が黒輪に言った。

「全く黒輪(こくりん)ともあろうものが千亡(せんもう)を封印に行って逆に取り込まれてしまうとは情けない限りだ。」

黒輪が無色に言った。

「返す言葉もない。」

三緒が柚羽に言った。

「でもよく千亡(せんもう)さんを説得する方法に気がついたよね。」

二実も頷きながら柚羽に言った。

「本当によく気がついたわよ。物音を立てずに壁ごしに筆談すれば交渉できるって。」

柚羽が二実に尋ねた。

「二実さんも気がついていたんじゃないですか?」

二実が柚羽に言った。

「まあ私も千亡さんと交渉しようと思って九木礼トンネルの中に入ったんだけど。その交渉方法には最後まで気がつかなかったわ。」

すると三緒が二実に尋ねた。

「ちょっとノープランで九木礼トンネルに入ったわけ??」

二実が三緒に言った。

「うん、そうだけど?」

三緒が二実に言った。

「考えがあるから私に任せてみたいな事言ってたでしょ?」

二実が三緒に言った。

「ああでも言わないと中に入らなかったでしょ?」

「柚羽ちゃんが助けてくれたから良かったもののあやうくみんな行方不明になるところだったのよ??」

「もちろん危険なのは分かってたけど、オバケさん達は私達みたいにポリシーを持ってるから、そこをうまく聞き出せば千亡さんと交渉できるって思ったのよ。まさか静寂が大好きなオバケとは思わなかったけど。」

「まあどのみち千亡(せんもう)さんとの交渉は二実は無理だったわよね。」

「どういう意味よ?」

「静寂が大好きなオバケじゃ二実じゃ絶対無理だって意味。なにせ二実はやかましいのが取柄だもんね。」

「ちょっと三緒??一言多いわよ。」

するとリグロの後ろからオバケが2体ほどやってきた。

そして晴南達の方を見ながらリグロに尋ねたのだった。

「リグロ様??もしやこちらの方々が勇者様方ですか??」

リグロが後ろからやって来たオバケに言った。

「ああこちらの方々が大託宣(だいたくせん)に預言されていた勇者様達だ。」

晴南達はリグロの後ろからやってきたオバケに気がつくとリグロに尋ねた。

「あれっ??見た事ないオバケさん達ですね。」

優斗がリグロに尋ねた。

「もしかしてリグロさんが言ってたドルイアから来た魔王軍の方々ですか?」

リグロが優斗に言った。

「ああ先ほど異世界門を通ってここに到着した我が配下達だ。」

髪の毛が蛇の姿をしている美しい姿の女性が晴南達に言った。

「私はリグロ様の配下の一人でメデューサのリサーラでございます。」

甲冑姿の首のない騎士が右脇に自分の首を抱えながら晴南達に言った。

「それがしのリグロ様の配下の一人でデュラハン(首なし騎士)のパテウスでございます。お会いできて光栄でございます。勇者様。」

晴南が二人に言った。

「はい、よろしくお願いします。リサーラさん、パテウスさん。」

メデューサのリサーラが晴南に言った。

「この度は勇者様と同じ陣営である事を大変喜んでおります。」

麻衣子が二実に言った。

「そういえば封木神社を出る前よりもオバケさん達の数が増えてますね。」

二実が麻衣子に言った。

「うん、リサーラさんとパテウスさんが異世界ドルイアからスケルトンさん達とゴーストさん達をたくさん連れて来てくれたから、この神社の中にはオバケさん達がいっぱいいるわ。」

「パテウス、リサーナ。遠路はるばるご苦労だった。ゆっくり休んでくれ。みなにもそう伝えてくれ。」

リグロが二人にそう言うとリサーナとパテウスは後ろに下がっていった。

すると晴南がリグロに言った。

「リグロさん、九木礼で回れる所はほぼ回り終わりました。」

晃太が晴南に言った。

「さてオバケ解放作戦もかなり進んだな。一時的には危険な状況もあったがこれで九木礼にいるオバケはあらかた味方についてもらえたはずだ。」

冬湖が晃太に言った。

「オバケさん達が続々と集まってきてますよね。」

リグロが晴南達に言った。

「オバケ解放作戦は巫女殿や晴南殿の全面協力もあって順調に進んでおります。」

晴南がリグロに尋ねた。

「それじゃあ今度は明井田にいるオバケを解放していくんですか?」

リグロが晴南に言った。

「それなのですが、明井田での作戦は見合わせるべきと考えております。」

晃太がリグロに尋ねた。

「どういう事ですか?」

リグロが晃太に言った。

「予想以上にオバケ達を味方につける事に成功している。それに加えて我が配下の者達も無事に呼び寄せる事もできました。九木礼は闇の勢力圏として維持できているので自由に動き回わっても問題ないのだが、これが明井田で動き回るとなると話は変わってくる。」

優斗がリグロに言った。

「確かに明井田でオバケ解放作戦を進めるのはリスクが高すぎますね。明井田は三象が支配している地域ですし。」

晃太が優斗に言った。

「そうだな明井田に入ったら強制力で操られて殺されてしまう可能性も十分に考えられる。これだけのオバケ達が集まったのなら、危険を冒してまで明井田で動き回る必要は確かにないかもしれないな。」

リグロが優斗に言った。

「仰る通りでオバケ達が集まらない事を想定して明井田での作戦も考えていたのだが、予想以上のオバケ達が味方についてくれた。これならば当面の明井田での作戦は必要ないだろう。」

優斗が晴南に言った。

「僕達にとって時間を稼ぐ事は有益になる。逆にセルティア側にとっては不利にしかならない。僕たちが生きている限り逆転の切り札がいつまで経っても切れない訳だからね。」

晃太がリグロに尋ねた。

「それじゃあ三象(さんしょう)がやってくるまではしばらく待機って事ですか?」

リグロが晃太に言った。

「そうなるな。」

すると晴南がリグロに尋ねた。

「でもリグロさん?三象(さんしょう)が九木礼にやって来ても、私達じゃ分からないですよ。」

二実が晴南に言った。

「そうよね、気配もないんじゃ私ですらお手上げだし。」

リグロがみんなに言った。

「それならばフウキ殿が知らせてくれるそうだ。もし三象が九木礼にやって来る兆候があれば直ちにフウキ殿のお守りを通じてみなに伝えると言われていた。」

麻衣子がリグロに言った。

「それなら安心ですね。」

晴南がリグロに言った。

「それじゃあフウキ様のお守りは肌身離さず持ち歩かないとね。」

冬湖が晴南に言った。

「そうですね。」

二実が三緒に言った。

「それじゃあそれまでは一休みって事か。」

三緒が二実に言った。

「ずっと忙しく動き回っていたから、少し休むのもいいかもね。」

二実が三緒に言った。

「そうねえ、そうしましょうか。」

すると麻衣子がみんなに尋ねた。

「私達はどうする??」

晴南が麻衣子に言った。

「そういえば土曜日なのよね。どっかに遊びにでも行きましょうか?」

麻衣子が晴南に言った。

「行くってどこに??九木礼の外には行けないわよ。」

すると晃太が晴南に言った。

「悪い晴南、ネットで明井田の情報を調べようと思ってるから一緒には行けない。」

晴南が晃太に言った。

「えー??別にそんな事しなくてもいいでしょ??」

晃太が晴南に言った。

「いや時間があるなら少しでも調べておいた方がいい。三象(さんしょう)の情報は多いに越した事はないからな。」

優斗が晃太に言った。

「なら僕も手伝うよ。」

晃太が優斗に言った。

「頼む。」

拓也が晴南に言った。

「ずっと忙しく動き回ってたから、のんびり休ませてもらっていいか??」

長孝が晴南に言った。

「俺も休ませてもらいたいっす。」

晴南が二人に言った。

「えー??別に休まなくてもいいでしょ??」

麻衣子が晴南に言った。

「だから晴南の基準でものを言っちゃダメだって、ずっと気の張りっぱなしだったからみんな疲れてるに決まってるでしょ?」

晴南が不機嫌そうにみんなに言った。

「もう分かったわ。それじゃあみんな自由に過ごしてちょうだい。」

晴南が麻衣子に言った。

「ああー、せっかくみんなで遊びに行こうと思ってたのに。」

麻衣子が晴南に言った。

「もう、むくれないでよ。晴南??ああ頼んだのは私から一つお願いがあったからでもあるんだ。」

晴南が麻衣子に聞き返した。

「お願い??」

麻衣子が晴南に言った。

「美咲に付き合ってあげようかなって思ってるの。ほら美咲が今日の正午にベリエに集まるように招集をかけてたでしょ?最近美咲とあんまり話せてなかったし。」

晴南が麻衣子に言った。

「そういえばお昼の時間にベリエに集合してねって言ってたわね。いいわよそれなら美咲に付き合いましょうか。」

晴南が麻衣子に言った。

「それじゃあ一寝入りしたらベリエに行きましょうか?」

晴南達は仮眠をするために第一社務所に向かうのだった。

そして仮眠をすませるとベリエに向かったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

処理中です...