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しまうま弁当

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一章

タンクローリーに乗っていた男

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浜本警視正が笹岡刑事に尋ねた。

「この他にも疑問点はあるからな。軽油をまいていた若者達の中にテナントで働いていた者がいるというのは本当なのか?」

笹岡刑事が浜本警視正に言った。

「はい10人ほどここに戻ってきたようです。」

浜本警視正が笹岡刑事に尋ねた。

「ではせっかく戻って来たのに職場に戻って仕事をする訳でもなくあの子達と一緒にガソリンをばらまいたというのか?」

笹岡刑事が浜本警視正に言った。

「はいその通りです。その子達も同じ行動をしています。」

浜本警視正が笹岡刑事に尋ねた。

「もしやその子達は勤めていた会社に対して恨みでも持っていたのか?」

笹岡刑事が浜本警視正に言った。

「いえそれがその逆でして職場の上司の評価も良かったようです。中には会社から表彰された子もいたようです。」

浜本警視正が笹岡刑事に言った。

「はあ?だったらなんでガソリンをばらまいたりしたんだ??」

笹岡刑事が浜本警視正に言った。

「まだ分かっておりません。」

浜本警視正が笹岡刑事に言った。

「全く謎だらけだな。」

浜本警視正が言った。

「そして最後の疑問点。消火設備は作動していたのになぜ火は消えなかったのかだ。」

浜本警視正が言った。

「映像を見たところスプリンクラーは作動していた。にもかかわらず火は全然消えなかった。それどころか余計にひどくなっているようにすら見える。サンライズ明井田ビルディングには最新鋭の消火設備が備えられていたはずだろう。それなのになぜ火は消えていないんだ。それと火災を検知した場合は自動で消防に通報が行われるシステムのはずだが知っての通り通報はされていない。これも意味が分からん。」

笹岡刑事が言った。

「これだけ謎だらけでは訳が分かりませんね。一体どういう事なんでしょうか?」

浜本警視正がみんなに言った。

「ともかく捜査方針を立てるぞ。いつまでも考え込んでいても仕方ない。」

会議室にいる他の捜査員達がそれに賛同した。

「そうですな、捜査員がいつまでも訳が分からないと言っている訳にはいきません。」

「早々に捜査に取り掛かりたい所です。」

別の捜査員が浜本警視正に尋ねた。

「ですがこんな訳が分からない状況で何から調べればいいんですか?」

すると浜本警視正が言った。

「うん、待てよ??」

浜本警視正が捜査員に尋ねた。

「この映像を見る限り自然発火や事故でないのは明白だな?」

捜査員の一人が言った。

「そうですね。映像を見る限りこの大火災の直接的な原因はバラまかれた大量のガソリンと軽油ですから事件で間違いはないかと。」

浜本警視正がみんなに言った。

「タンクローリーを運転してきて軽油を配っていた男がいただろう。俺はそいつが不審に感じたんだ。」

捜査員達が浜本警視正の意見に賛同した。

「確かに駅前ロータリーに軽油満載のタンクローリーを運転してくるなんて悪意以外の何物でもありませんね。」

「そうですね、確かにあのタンクローリーが来なければこんな大火災は起こらなかったでしょう。」

すると捜査員の一人が浜本警視正に言った。

「もし白焼明洋(しらやきあきひろ)が犯人なら警備室にある消火設備のシステムを操作して通報しなようにしたのかもしれません。」

浜本警視正がその捜査員に言った。

「それなら通報がなかったのはのも説明がつくな。しかしスプリンクラーが作動していたのに火が消えなかったのは一体どういう事だ?」

その捜査員が浜本警視正に言った。

「もし犯人が消火設備をいじくっていたのなら放水式のスプリンクラーを使って火の勢いを強めていた可能性もありますね。」

浜本警視正がその捜査員に聞き返した。

「火の勢いを強めていた??どういう事だ??」

その捜査員が浜本警視正に言った。

「揚げ物の料理をしていて天ぷら油に火がついた場合はどうします?」

浜本警視正が言った。

「天ぷら油には水での消火はできないから鍋に布をかぶせたり消火器を使うな。」

すると別の捜査員が大きな声で言った。

「そうかつまりそれと同じ事を明井田駅前でしたという事か。軽油の比重は水の0.8程度で沸点は200度から550度、一方の水の沸点は100度。天ぷら油火災と同じ状況を作る事が確かにできるな。」

浜本警視正が言った。

「そうなるとあらかじめスプリンクラー以外の消火設備を作動しないように設定を変えた。そしてガソリンに引火させて軽油の温度を上げた状態の所にスプリンクラーの放水をかけて軽油の爆発的燃焼を引き起こした訳か。なかなか巧妙な手口だな。」

笹岡刑事が浜本警視正に言った。

「スプリンクラーの感知から作動するまでの時間を調整すればできなくはありませんね。」

捜査員が浜本警視正に尋ねた。

「しかし若者達がガソリンをばらまいたのはどういう事ですか?」

捜査員の一人が言った。

「もしかしたらSNSを使ったのではありませんか?言葉巧みに若者達を扇動してガソリンをばらまかせたんです。」

浜本警視正が言った。

「なんて卑劣な男なんだ。」

浜本警視正が笹岡刑事に言った。

「よし!!この白焼明洋(しらやきあきひろ)という男がこの明井田大規模火災に大きく関与しているはずだ。もしかしたらこの明井田大規模火災の首謀者なのかもしれん。」

捜査員達も浜本警視正に参道した。

「そうですね、火災の直接的な引き金をひいたのもこの白焼明洋(しらやきあきひろ)です。」

「となるとタンクローリーを運転してきたあの柿枝敏子(かきえだとしこ)と村上里穂(むらかみりほ)という女も怪しいですね。もしかしたら共犯かもしれません。」

「すぐに白焼明洋(しらやきあきひろ)の捜査に取り掛かりましょう。」

すると松浦警視が浜本警視正に言った。

「浜本警視正、少しいいかな?」

浜本警視正が勇雄に言った。

「なんだ?松浦警視??」

勇雄が浜本警視正に言った。

「それでは従業員達が一斉に帰った理由が説明できない。この白焼明洋(しらやきあきひろ)君が首謀者と決めつけるのは少々乱暴ではないか?もっと時間をかけて検証すべきだ。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「これ以上何を検証しろというんだ?」

勇雄が浜本警視正に言った。

「決めつけてかかるのは危険だと言っている。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「我々には限られた時間しかないんだ。1日も早い真相究明をみんなが待ち望んでいる。悠長に時間をかけていられるか。」

勇雄が浜本警視正に言った。

「だが慎重に捜査をすすめるべきだろう。資料によれば白焼明洋(しらやきあきひろ)君と柿枝敏子(かきえだとしこ)さんはまだ大学生じゃないか。村上里穂さんにいたってはまだ高校生だぞ。手間を惜しんで捜査を進めれば取返しのつかない事になるかもしれない。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「じゃあなにか??真相は究明できませんでした!!とでも発表しろとでもいうのか!!それで明井田の市民達が納得する訳ないだろうが!!とにかく今は可能性を一つづつ潰していくしかないだろうが!!」

浜本警視正が勇雄に言った。

「この事件は我々のヤマだ!!松浦!!お前は部外者だろうが!!お前ら九木礼署の連中は会議室だけ貸してればいいんだ!!この明井田大規模火災は明井田警察署の管轄の事件なんだ!!九木礼署のお前らは関係ない事件なんだよ!!それをちゃんとわきまえろ!!!」

勇雄が浜本警視正に言った。

「確かにその通りです。少々出すぎた事を言いました浜本警視正。申し訳ない。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「分かればいい。」

浜本警視正が指示を出した。

「では白焼明洋(しらやきあきひろ)を徹底的に調査しろ!!あとこのタンクロリーの出所も調べておけ。おそらく盗難されたものだろう。」

捜査員達が言った。

「了解しました。」

捜査員達が立ち上がって会議室を後にしていった。

すると勇雄のスマホに着信が入った。

勇雄はすぐに電話をかけなおした。

「ああ、どうかしたか?うん、うん。そうか分かった。」

すると勇雄は浜本警視正の所にやってきた。

「旧八堂集落で喧嘩が起きてるようなので仲裁に行ってきます。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「はあ?喧嘩仲裁なんざほかっておけばいいだろうが?こっちの捜査の方が遥かに大事だろうが。」

勇雄が浜本警視正に言った。

「そうはいきません。町民からの通報を放置はできません。」

浜本警視正が勇雄に言った。

「松浦!!お前は警視でこの九木礼署の署長だろうが!!いつまで駐在の気分でいるんだ!!!」

浜本警視正が勇雄に言った。

「そもそも警察は便利屋じゃないんだぞ!!そんなんで動いてたら凶悪事件が発生した時に動けんだろうが!!!」

吉崎警部補が勇雄に言った。

「いいじゃないですか。町の人達から直接連絡が来るなんて信頼されてる証です。分かりました。松浦警視の分は私が調べてきます。行ってあげてください。」

勇雄が吉崎警部補に言った。

「吉崎警部補、すまないな。」
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