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一章
地獄
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2019年6月11日土曜日、明井田市に大きな災いが降りかかっていた。
人口40万人を越える明井田市の中心部にて大規模な火災が発生した。
この火災に関する最初の通報が6月11日午後7時42分に明井田市消防本部にもたらされた。
その内容は明井田本通り2丁目にて大きな火災が起きているとの通報であった。
その後立て続けに同様の通報があり、すぐに明井田消防本部は大規模な火災が起きていると判断した。
そして5分後の午後7時47分には第一陣の消防隊を向かわせた。
さらに午後7時50分には明井田消防本部は消防相互応援協定に基づき周辺自治体の消防本部に応援を要請した。
周辺自治体の消防本部もこの要請に応じて消防隊の応援を派遣した。
消防本部から行政側の明井田市にもすぐに連絡されたが、市側の対応は後手に回った。
ただこれは市役所の立地に問題があった。
明井田市役所はまさに火災が起きている明井田市の中心部にあり、行政機能はこの市役所に集約されていた。
効率的な行政運営という観点においては機能集約は当然の判断であったが、ことこの火災においてはそれが裏目に出た。
市役所職員及びたくさんの市役所にいた市民達が被災してしまい、彼らの避難を優先させなければならなかったからである。
この判断自体は妥当なものであったが、結果的にこの火災事故に対する行政側の対応は後手に回った。
だがそれでも午後9時15分には明井田市中心部から離れた場所にあった須木良(すきよし)公民館に明井田火災対策本部を設置して対応を始めたのだった。
しかし肝心の消防隊の現場への到着はさらに遅れたのだった。
明井田中心部へ繋がる道路は明井田市中心部からの脱出を図る人々で大混雑しており、消防隊の車両は思うように進む事ができなかった。
午後10時20分に消防隊が火災現場であるようやく明井田中央通り2丁目に到着した。
だがやって来た消防隊はあまりの惨状に言葉を失った。
すでに明井田中央通りの広い部分に火の手が回っており、初動対応に完全に失敗してしまった。
激しい炎が至る所に渦をまいており、炎の海となっていた。
明井田のランドマークの明井田ビルや有名スポットであるリアライズ明井田などの大きな商業ビルがいくつも炎に包まれていた。
そして燃え尽きると建物ごと崩れていった。
消防隊員達にとっても明井田の中心部はなじみの場所であり、思い出の多い場所であった。
さらに逃げ遅れた人々の焼け焦げた遺体があちらこちらに横たわっていたのである。
これは火災現場慣れをしているベテラン消防隊員でもかなりきついものであった。
消防隊は初期消火を断念して延焼阻止に動いていた。
これは消防隊員にとってはとても苦しい決断であった。
火を消すためにやって来た自分達が何もできずに眺めているしかできなかったのだ。
消防隊は北牧通りの道路を延焼を封じるラインとして設定して消火活動を始めた。
翌日の6月12日の午前0時を越えたあたりから、各地より消防隊の応援も到着していた。
すぐにこのプランにもとずく消火活動が開始されたが、ある問題に直面した。
圧倒的に消防車の数が足らなかったのである。
応援に来た消防隊が総力をあげてこのプランを実行したが、このプランでも延焼を阻止する事はできなかった。
時間だけが無為に過ぎていき、翌日の夜明けを向かえた。
その間にも火の手は広がっていた。
明井田本通り地区は1丁目から7丁目まで全てに火の手が広がり、隣接する北牧(きたまき)通り地区や西条(さいじょう)地区にまで火の手が広がっていた。
延焼地域が広がり西条(さいじょう)地区の端にある明井田化学の工場まで火が回る可能性が出てきた。
もし明井田化学の工場にまで火の手が回れば有毒ガスが流出する可能性があった。
さらに明井田市周辺では12日の午後から深夜にかけて強風が予想されていた。
有毒ガスが強風によって明井田市の広い地域に拡散してしまう恐れがあったのだ。
そして6月12日午後2時25分に明井田市長によって明井田市全域の避難指示が出されたのである。
明井田市内にいる全ての人間に市外へ脱出するように避難指示が出されたのだ。
なお火の勢いは6月12日の日没になっても衰える事は無かった。
消防隊も全力を尽くしていたが、状況を好転させる事がなかなかできずにいた。
消防隊はこのまま延焼を止める事ができないのではないかと絶望感が漂いはじめていたが、6月13日午前2時頃になると事態がよい方向に動きだした。
天候が悪化しはじめ、午後2時41分に雨が降りだしたのだ。
雨はすぐに豪雨へと変わった。
この雨はまさに恵みの雨となった。
この雨によって火の勢いは各所で弱める事ができた。
さらに各地より第二陣の消防隊の応援が到着すると状況が一気に好転し、消防隊の懸命の活動と恵みの雨によって各所で鎮火を進めていった。
そして6月13日午前11時にようやく全域の鎮火が確認された。
被害面積は180万平米を越えており、明井田市の中心部一帯が2日足らずで焼け野原となってしまった。
以上が2019年6月13日正午時点で分かっている明井田火災の概要です。
テレビ番組やネットのニュースや行政の発表を参考にして明井田火災についてまとめてみました。
明井田市民にとってはまさに地獄だったと思う。
隣町の九木礼に住む僕ですら大きなショックを受けているんだから。
僕にとっても行き慣れた明井田があんな悲惨な事になるなんて思いもしなかったし、今でも信じられない。
あの惨状が報じられている場所は、同じ名前のどこか別の場所なんじゃないか?
そういうふうに思いたくすらなってくるよ。
でもこれは認めたくはないけど、厳しい現実なんだよね。
この明井田火災についてブログを書くべきかどうか悩んだんだけど、書いておく事にしました。
この明井田火災で災害の恐ろしさを痛感しました。
こんなブログでも災害の恐ろしさを伝える事ができればと思ったんです。
この明井田火災で被災された方々、避難されている方々が1日でもはやく日常に戻れる事を願っています。
最後に完全に私事になってしまうんだけど、書かせてくれるかな。
健太(けんた)、柚羽(ゆずは)もしこのブログを見ていたらラインでもツリッターでもなんでもいいから連絡をしてくれないかな。
僕や晴南やみんなが心配してる。
「坂倉優斗のブログ2019年6月13日分より」
人口40万人を越える明井田市の中心部にて大規模な火災が発生した。
この火災に関する最初の通報が6月11日午後7時42分に明井田市消防本部にもたらされた。
その内容は明井田本通り2丁目にて大きな火災が起きているとの通報であった。
その後立て続けに同様の通報があり、すぐに明井田消防本部は大規模な火災が起きていると判断した。
そして5分後の午後7時47分には第一陣の消防隊を向かわせた。
さらに午後7時50分には明井田消防本部は消防相互応援協定に基づき周辺自治体の消防本部に応援を要請した。
周辺自治体の消防本部もこの要請に応じて消防隊の応援を派遣した。
消防本部から行政側の明井田市にもすぐに連絡されたが、市側の対応は後手に回った。
ただこれは市役所の立地に問題があった。
明井田市役所はまさに火災が起きている明井田市の中心部にあり、行政機能はこの市役所に集約されていた。
効率的な行政運営という観点においては機能集約は当然の判断であったが、ことこの火災においてはそれが裏目に出た。
市役所職員及びたくさんの市役所にいた市民達が被災してしまい、彼らの避難を優先させなければならなかったからである。
この判断自体は妥当なものであったが、結果的にこの火災事故に対する行政側の対応は後手に回った。
だがそれでも午後9時15分には明井田市中心部から離れた場所にあった須木良(すきよし)公民館に明井田火災対策本部を設置して対応を始めたのだった。
しかし肝心の消防隊の現場への到着はさらに遅れたのだった。
明井田中心部へ繋がる道路は明井田市中心部からの脱出を図る人々で大混雑しており、消防隊の車両は思うように進む事ができなかった。
午後10時20分に消防隊が火災現場であるようやく明井田中央通り2丁目に到着した。
だがやって来た消防隊はあまりの惨状に言葉を失った。
すでに明井田中央通りの広い部分に火の手が回っており、初動対応に完全に失敗してしまった。
激しい炎が至る所に渦をまいており、炎の海となっていた。
明井田のランドマークの明井田ビルや有名スポットであるリアライズ明井田などの大きな商業ビルがいくつも炎に包まれていた。
そして燃え尽きると建物ごと崩れていった。
消防隊員達にとっても明井田の中心部はなじみの場所であり、思い出の多い場所であった。
さらに逃げ遅れた人々の焼け焦げた遺体があちらこちらに横たわっていたのである。
これは火災現場慣れをしているベテラン消防隊員でもかなりきついものであった。
消防隊は初期消火を断念して延焼阻止に動いていた。
これは消防隊員にとってはとても苦しい決断であった。
火を消すためにやって来た自分達が何もできずに眺めているしかできなかったのだ。
消防隊は北牧通りの道路を延焼を封じるラインとして設定して消火活動を始めた。
翌日の6月12日の午前0時を越えたあたりから、各地より消防隊の応援も到着していた。
すぐにこのプランにもとずく消火活動が開始されたが、ある問題に直面した。
圧倒的に消防車の数が足らなかったのである。
応援に来た消防隊が総力をあげてこのプランを実行したが、このプランでも延焼を阻止する事はできなかった。
時間だけが無為に過ぎていき、翌日の夜明けを向かえた。
その間にも火の手は広がっていた。
明井田本通り地区は1丁目から7丁目まで全てに火の手が広がり、隣接する北牧(きたまき)通り地区や西条(さいじょう)地区にまで火の手が広がっていた。
延焼地域が広がり西条(さいじょう)地区の端にある明井田化学の工場まで火が回る可能性が出てきた。
もし明井田化学の工場にまで火の手が回れば有毒ガスが流出する可能性があった。
さらに明井田市周辺では12日の午後から深夜にかけて強風が予想されていた。
有毒ガスが強風によって明井田市の広い地域に拡散してしまう恐れがあったのだ。
そして6月12日午後2時25分に明井田市長によって明井田市全域の避難指示が出されたのである。
明井田市内にいる全ての人間に市外へ脱出するように避難指示が出されたのだ。
なお火の勢いは6月12日の日没になっても衰える事は無かった。
消防隊も全力を尽くしていたが、状況を好転させる事がなかなかできずにいた。
消防隊はこのまま延焼を止める事ができないのではないかと絶望感が漂いはじめていたが、6月13日午前2時頃になると事態がよい方向に動きだした。
天候が悪化しはじめ、午後2時41分に雨が降りだしたのだ。
雨はすぐに豪雨へと変わった。
この雨はまさに恵みの雨となった。
この雨によって火の勢いは各所で弱める事ができた。
さらに各地より第二陣の消防隊の応援が到着すると状況が一気に好転し、消防隊の懸命の活動と恵みの雨によって各所で鎮火を進めていった。
そして6月13日午前11時にようやく全域の鎮火が確認された。
被害面積は180万平米を越えており、明井田市の中心部一帯が2日足らずで焼け野原となってしまった。
以上が2019年6月13日正午時点で分かっている明井田火災の概要です。
テレビ番組やネットのニュースや行政の発表を参考にして明井田火災についてまとめてみました。
明井田市民にとってはまさに地獄だったと思う。
隣町の九木礼に住む僕ですら大きなショックを受けているんだから。
僕にとっても行き慣れた明井田があんな悲惨な事になるなんて思いもしなかったし、今でも信じられない。
あの惨状が報じられている場所は、同じ名前のどこか別の場所なんじゃないか?
そういうふうに思いたくすらなってくるよ。
でもこれは認めたくはないけど、厳しい現実なんだよね。
この明井田火災についてブログを書くべきかどうか悩んだんだけど、書いておく事にしました。
この明井田火災で災害の恐ろしさを痛感しました。
こんなブログでも災害の恐ろしさを伝える事ができればと思ったんです。
この明井田火災で被災された方々、避難されている方々が1日でもはやく日常に戻れる事を願っています。
最後に完全に私事になってしまうんだけど、書かせてくれるかな。
健太(けんた)、柚羽(ゆずは)もしこのブログを見ていたらラインでもツリッターでもなんでもいいから連絡をしてくれないかな。
僕や晴南やみんなが心配してる。
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