あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

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一章

廃墟

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いったい私はどこにいるのだろう。

うつろな気分のまま漂っている気がする。

ふと私の耳に何かが聞こえたような気がした。

「・・て・・。」

どこからか声が聞こえる気がする。

周囲を見渡す。

だが周りは暗闇が広がっており、何も見えない。

誰の姿も見る事はできない。

だけどどこかは分からないが誰かがいる気がする。

そして私に何かを言っている気がする。

なぜかは分からない。 

でもなぜだかそんな気がする。

再び暗闇の中から声が聞こえてた。

私は耳をすませてみる。

「し・・・て・・・。」

し・・て・・。?

暗闇の中から声が聞こえてくる。

私は必死に聞こうと耳をすませる。

「し・・て・・・・。」

あと少しで聞けそうな気がする。

はっせられる声を聞こうと必死で耳をとぎすませた。

その小さな声が発せられる。

「だ・・・・し・・・・て・・・・。」

「だ・・・し・・・て・・・。」

ようやく、その声を聞こえた。

だ・・・

だして? どういう事だろうか? 

すると今まで全然聞こえなかったのが嘘のように大きな声が私の頭の中に響き渡った。

「だして!だして!だして!だして!」

何度も何度も同じ言葉が繰り返され周囲に響き渡った。

「だして!!だして!!だして!!だして!!」

その言葉は何度も何度も繰り返しされる。壊れたスピーカーのような何度も何度も。

「だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!」

私はただその言葉を聞いているしかなかった。

「だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!だして!!」

一体どのくらい繰り返されただろうか?

無限に続くとも思った言葉が突然聞こえなくなった。

そして新たに別の声が聞こえてきた。

「・・・こ・・・・。」

その声がさらに大きくなる。

「・・・い・・・こ・・・。」

その声が頭に響きわたった。

「麻衣子!!!」

私ははっと目を覚ました。

「麻衣子!!」

横から声が聞こえる。

「麻衣子!!」

すると麻衣子の視界に見知った顔が映った。

その声の主が麻衣子に大声で言った。

「もう麻衣子!!」

その声の主は美咲だった。

美咲は麻衣子のすぐ横で麻衣子を呼び掛けていたのだった。

「う・・ん?」

美咲が麻衣子に構わずに大きな声をあげる。

「返事ぐらいしてよ!麻衣子!」

まるで今まで寝ていたように麻衣子の意識はぼんやりしていた。

麻衣子の意識が急速に覚醒していった。

麻衣子の真横にいる美咲に驚いて言った。

「み、美咲??」

横にいた美咲が麻衣子に言った。

「もう?どうして無視なんかするのよ?」

麻衣子が美咲に尋ねた。

「えっ?何の事?」

美咲が麻衣子に言った。

「私が何回呼んでも返事してくれなかったじゃないの?」

麻衣子が美咲に言った。

「そうだったの?ごめん。」

美咲が麻衣子に言った。

「そうよ、私が何か怒らすような事をした訳じゃないでしょ?」

麻衣子が美咲に言った。

「いや怒らすような事はしょっちゅうやってるでしょ?」

美咲が麻衣子に言った。

「まさかそれで怒って返事してくれなかったの?」

麻衣子が困惑した顔で美咲に言った。

「いやそんなんじゃなくてね。うーん、何て言うのかな?今まで寝てたような気がするのよね。それで美咲に起こされたみたいな。」

美咲がきょとんとした顔で麻衣子に尋ねた。

「寝てた?ぼっーとしてたって事?」

麻衣子も困惑した様子で美咲に言った。

「うん、うまく言えないんだけどそんな感じかな。」

美咲が麻衣子に言った。

「もう、しっかりしてよ、麻衣子。」

麻衣子が美咲に頷いた。

「うん。」

美咲が麻衣子に尋ねた。

「ねえ?ところで麻衣子?ここだと思う?」

麻衣子が呆れた顔で美咲に言った。

「何言ってるの?封木神社(ふうきじんじゃ)に決まってるでしょ?」

麻衣子はそう言うと周囲を見渡した。

周囲を見渡した麻衣子は唖然とした。

麻衣子は荒れ果てた廃墟の中にいたのだ。

麻衣子達の周囲は草がぼうぼうに生い茂っており、近くにあった建物は朽ち果てていた。

麻衣子達の近くには朽ち果てた拝殿(はいでん)があり、その先にある燈籠(とうろう)は地面に倒れて草に覆われていた。

拝殿は木造の建物であったが、老朽化が進んでおり木製の引き戸が外れており、拝殿の中は物で散乱していた。

拝殿の床はあちこちが抜けており、ここが廃墟である事は一目見れば分かる状態だった。

先ほどまでいた封木神社(ふうきじんじゃ)とは全然違う場所であった。

麻衣子が驚いて美咲に尋ねた。

「何ここ?封木神社じゃないわよ?」

美咲が麻衣子に言った。

「だから!私がそれを聞いてるの?」

美咲が麻衣子に言った。

「麻衣子もここがどこか分からないの?」

麻衣子が美咲に言った。

「ごめん、分からない。どこかの神社みたいだけど?でも美咲?美咲は起きてたんでしょ?美咲こそ、ここがどこか分からないの?」

美咲が麻衣子に言った。

「私も気がついたらここにいたの。」

麻衣子が美咲に尋ねた。

「じゃあ美咲も寝てたっ事?」

美咲が麻衣子に言った。

「そんなの分かんないわ!だから麻衣子に声をかけたのよ。」

麻衣子が美咲に尋ねた。

「どこで目が覚めたの?」

美咲が麻衣子に言った。

「あの大きな木の前よ?」

麻衣子が美咲に聞き返した。

「大きな木?」

美咲が指さす方を見ると確かに大きな木があった。

その大きな木は拝殿のさらに奥にあった。

とても大きな木のようで、その木と比較すれば拝殿や鳥居がとても小さく見てた。

何十メートルもある大木のようだった。

だがその大木はとても奇妙に見えた。

なぜならその大木には何本もの大きなしめ縄が巻かれており、そのしめ縄のそれぞれに大量の紙垂(しで)がつけられていた。

それ自体ならばよくある光景かもしれない、だがしめ縄の数が異常に多かった。

幹にはもちろんの事、縦横無尽に伸びている枝にまでそれぞれしめ縄が巻かれていたのだ。

枝に巻かれたしめ縄の数は三十近くはあるだろう。

幹にも何本ものしめ縄が巻かれており、まるでその木はしめ縄に拘束されているようだった。

その光景は神社内が荒れ果てている事や雲で太陽が遮れていた事もあいまってかなり不気味な様子だった。

美咲が麻衣子に言った。

「気がついた時はあの木の前にいたわ。それで近くにいた麻衣子に声をかけたの。」 

麻衣子が美咲に言った。

「不気味な木ね?なんであんなにしめ縄がいっぱい巻いてあるのかしら?」

美咲が麻衣子に言った。

「知らないわよそんな事?それよりここがどこかって事の方が大事でしょ。」

麻衣子が美咲に言った。

「そうね、本当にここはどこなんだろう。」

すると麻衣子と美咲の後ろから声が聞こえた。

「ここは封木神社(ふうきじんじゃ)です。」

「えっ?」

美咲と麻衣子は後ろを振り返った。

するとそこには由香の姿があった。

美咲が由香に言った。

「あれっ?由香?」

麻衣子が由香に尋ねた。

「由香も巻き込まれたの?」

すると美咲は由香が大きなノコギリを持っている事に気がついた。

そのノコギリは刃が錆び付いて何ヵ所か欠けていた。

その様子を見た美咲が驚いて由香に言った。

「ちょっと?由香?何持ってるのよ?」

だが由香は美咲の問いかけには答えずに麻衣子の横を通って大木の方にとことこと歩き始めた。

それを美咲が由香の肩を掴んで静止する。

「ちょっと由香?どこにいくのよ?」

すると由香が鬼のような形相で睨み付けると大声で美咲に怒鳴りつけた。

「邪魔しないで!!」

由香の怒声に驚いて美咲は手を離した。

そして美咲が由香に言った。

「ちょっとどうしちゃったの?由香?」

すると今度は由香の表情が緩んで嬉しそうに美咲に言った。

「出してあげるんです!!」

美咲が困惑した顔で由香に尋ねた。

「えっ由香?何言ってるの?」

由香は満面の笑みで美咲に言った。

「出してあげるんです!!呼ばれたから!!」

すると麻衣子が由香に尋ねた。

「ねえ?由香?ここどこなのか知ってるの?」

由香が麻衣子に笑顔で言った。

「ここは封木神社です。」

すると次の瞬間凄まじい光に麻衣子達は包まれた。

そしてけたたましい轟音が鳴り響いた。

ゴロゴロ!! ゴロゴロ!!
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