62 / 66
#60 盗撮
しおりを挟む
ギルド戦まであと1日というところまでやってきた。
ディアボロス内の工作員を排除することが出来たので、積極的にギルド戦に向けた作戦会議や練習に取り組むことが出来た。
シエルだけではなく、俺はアリサのアカウントでもなるべくログインするようにしていた。これはアリサのログイン時間が少ないとフィロソフィに不審に思われる可能性があるからだ。
順調なディアボロスとは打って変わって、セレスティアスの雰囲気は殺伐としたものになっていた。俺が工作員を全て除名したことがフィロソフィに伝わったことで、フィロソフィは自分のギルドの中に内通者が居ると疑い始めたのだ。
≪フィロソフィの家・会議室≫
「ああ、もう誰や! 一体誰がシエルに伝えたんや!!」
フィロソフィは怒鳴りながら机に勢いよく拳を叩きつける。ドンッという鈍い音が部屋の中に響き渡り、ピリピリとした緊張感がこの部屋に集められたギルドメンバーに伝わっていく。どこからか、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。周囲を見回せばみんな黙り込んで目線を下に逸らしている。
これは当然考案者であるアリサが疑われるよなあって思っていたのだけど、フィロソフィはアリサを疑うことはしなかった。お互い肌を重ね合った仲だからなのか知らんけど、まあ冷静に考えてみれば、アリサとフィロソフィはお互い危ない道を歩んでいる一蓮托生の関係なんだ。裏切ることは無いと考えている、いや、裏切るなんて考えないようにしているんだろうね。
スパイが特定できない以上、以前の作戦は全て筒抜けだろうし、新たな作戦を立てることも出来ない。違う工作員を雇ってディアボロスに送り込もうにも入隊希望はあれから全て断るようにしている。だからこうしてギルドメンバーに吠えることくらいしか出来ないのだ。
そうやって疑われて、怒鳴られて、サンドバッグになっているギルドメンバー達はどう思うだろう? いくらフィロソフィ様に忠誠を誓っていたとしても、ギルドメンバーだってロボットじゃない。多少なりとも不満を抱くはずだ。
そうしてフィロソフィとギルドメンバーの間には軋轢が生じる。――俺はこれを狙っていた。
≪マーグナー熱帯雨林≫
以前モチツキと会話のために訪れたマーグナー熱帯雨林。今回、俺はあ・る・作戦の為にここまで足を運んでいた。自分の身体を隠せるほど背の高い植物を掻き分けながら進み、モンスターの出現しないちょっとした広場のようなエリアを目指す。ここが待ち合わせ場所だ。
一足先についた俺は、そこで待機して呼び出しているフィロソフィが来るのを待つ。
フィロソフィをゲーム内でも、現実世界でも終わらせる方法はこれしかない。唯一本音で話せたとっしーもいつの間にか連絡が取れなくなってしまった。受験は夏休みが天王山と言われているしそれは仕方がないよね。協力してくれる人は居るけれど、誰にも俺の事情や本心を語ることが出来ない、これは孤独な戦いだ。
数分ほどして、パキッパキッと小枝が折れる音が聞こえてきた。その音のした方に俺は目を移す。
「……なんでよりにもよってこんな面倒なフィールドで待ち合わせなんや。このクソ忙しいときに……」
不機嫌そうな声でブツブツと言っているフィロソフィがやってきた。俺の姿を見せてやるとフィロソフィは立ち止まり、怠そうに頭をポリポリと掻いて不満そうな表情をする。
「おーいアリサ、話ってなんや、フレンドチャットじゃいかんのか?」
「……ごめんなさいマスター、大事な話なんです」
俺は出来るだけ真剣な表情を作ってフィロソフィに話す。そんな俺の表情を見てただ事ではないと悟ったのか、フィロソフィの表情にも緊張の色が走る。その表情を確認したのち、俺はゆっくりと口を開いて話し始める。
「……実は没収されたスマホの中身、親に見られたみたいなんです」
俺がそう言った途端フィロソフィの表情はみるみる絶望の色に染まっていく。もちろん、こんなことは嘘八百である。
「は、はぁ? それはどういうことや、まさか俺たちがリアルで会っていることがバレたっていうんか?」
動揺するフィロソフィの姿を見て吹き出しそうになる。この顔がみたくて今までやって来たんだ。
「はい、それだけでなくアレも……」
「写真……まさか、あの時に撮ったハメ撮りも見られたんか!?」
あの時っていつなのか知らないけど、俺はコクリと頷く。
そしたらフィロソフィは頭を抱えて「ああぁ~」と、うめき声を上げ始めた。俺は笑いをこらえながらも泣き出しそうな声を出して続ける。我ながら凄い演技力だと思う。
「母は警察に通報するって言っていました。多分私たちはもう終わりです……」
アリサ本人の口から「警察に通報」なんて言われたら絶望感も相当な物だろう。
疑う余地なんか無い。更なる絶望の顔が見られるぞって楽しみにしていたのだけど、予想と反してフィロソフィの態度が一変した。
「……ふざけんなよ……俺は悪くないッ!!」
唸るような声でフィロソフィが叫んだ。その豹変具合に俺も驚いてしまう。
「……大体こうなったのもお前が原因やろ、アリサ! 寂しいとか言って先に俺にすり寄ってきたのはそっちやないか。俺に抱いてほしいって最初に言い出したのもアリサの方やろ! だから俺は仕方なくお前を抱いてやったんや! それに金も渡したやろ? せやからこの件は全て俺には関係ない、全部そっちが作り出した問題や!」
「そんな、酷いわ……マスター」
「前にも言ったけどな、俺には家族がおる。せやけどお前は未成年や。売春における女っていうのは保護される立場やし逮捕されることもない。俺が逮捕されるダメージに比べたらアリサの受ける処罰なんて屁みたいなもんや、だから分かるやろ? 俺のことをうまく誤魔化してくれへんか? ほら、金もようさん渡したやないか」
何とも自分勝手な理由で呆れてしまう。金のことをやたら強調するのはアリサに負い目を感じさせようとしているのだろうか。
なあアリサ、見ているか? これがお前の愛していた男の本性だよ。アリサには金を渡したのかもしれないけど、俺は何も受け取っていないんでね。悪いけど罰を受けてもらうぜ。
「……あさだけんぞう」
俺は聞こえるか聞こえないかのギリギリの声の大きさでぼそりとその名前を口にする。
そしたらフィロソフィは口をあんぐりとあげて驚くもんだから分かりやすいのなんのって。
「おい、どうしてお前が俺の名前を知っているんや……本名を教えたことは無かったはずやぞ!!」
フィロソフィは顔色を変えて俺の胸倉に掴みかかってくる。女性に手を上げるなんて最低ねっ、まあ中身は男なんだけど。
しっかし、この反応はけんぞう本人だって認めているようなものだぞ?
俺は口元を吊り上げながら左手をひょいと上に挙げ、彼・に合図を送る。
その直後、俺の背後にある茂みが揺れ、ずっとそこで俺たちのやり取りを撮っていた人物がカメラを持って出てくる。
シリアスな雰囲気の中、場違いなくらい楽しそうな声で、彼はお決まりの台詞を叫んだ。
「どーもー! ヤミキンTVです! えー現在のやり取り、全て撮らせていただきました! しかも生放送で、現在も放送中でーす! いやあ、衝撃の事実でしたね~。それが本人の口から語られるとは……これは大スキャンダルですよ! まさかDOMの世界から犯罪者が出るとは思ってもいませんでしたね! ハハハ!」
ヤミキン――。今回も雇わせてもらったぜ。アリサの全財産を使ってな。
前回のフィロソフィのRMT疑惑で盛り上がっている中、新たな燃料が欲しかったのか、ヤミキンは快く受け入れてくれた。
「きゃー何よこれー」
「な、なんやこれ……おい、お前! なに撮ってんねん! クソッ、これもシエルの仕業か!」
狼狽えるフィロソフィ。まさか今までのやり取りが生放送で流されていたとは思ってもいなかっただろう。それに、わざわざ悪事を自分の口から語ってもらったんだ、これ以上の証拠はないよな。
「ちなみにこれはDOM内だけではなく、現実世界にも流れていますよ~」
ヤミキンは呑気な声でそう告げる。大きなサングラスの向こうで彼は何を思っているのだろうか。
「せ、せや……今まで言ったことは全て嘘なんや。これはヤミキンのドッキリの企画に協力していただけやで? せやから今までのことは台本の台詞だったんや!」
ヤミキンの持つカメラに必死に訴えかけるフィロソフィ。
ふん、ドッキリということにして上手く逃げる気か。だが無駄だ、既に手は打ってある。
「これはドッキリでもないし、嘘でもないですよ。SNSアカウントを確認してみてください。そこに全てが載っていますぜ☆」
ヤミキンは余裕の笑みを浮かべてそう付け加える。
俺は事前にSNSのアカウントを作り、ネット上に写真そして音声データを全てアップしておいたのだ。フィロソフィが何と言おうが、これを見ればフィロソフィがクロだということは誰が見ても分かるようになっている。
ヨシツネ
「フィロソフィさん……今ログアウトしてヤミキンさんの言っていたSNSアカウントを見てきました。RMTの噂は嘘だと信じていましたが、これには私もついていけません」
ココア
「生放送見ました。マスターがそんなことしていたなんてサイテーです! 通報させていただきます!」
イトゲン
「けんぞー(笑)アリサちゃんとそんなことしていたのかよw ありえねえわ、このロリコン野郎w」
エクレア
「犯罪者のギルドにいるわけには行かないので抜けますね。お世話になりました」
…………
ギルドチャットでもフィロソフィを見限る声が多く聞こえてくる。溜まっていた不満もあってかそれが一気に爆発した感じだ。ギルドチャットでこれなのだから生放送のコメントはさぞ荒れているんだろうな。見ることが出来ないのが少々残念である。これが出演者の悲しいところね。
「ええい、このッ!!」
フィロソフィは俺を乱暴に突き飛ばし、慌てながらメニューコマンドを操作していく。ログアウトして自分の目でその証拠を確かめてくるつもりなのだろう。取り残された俺は、おっさんに買われた可哀想な少女を演じるため、泣いているフリを続ける。
フィロソフィの姿が消えた後、ヤミキンは皮肉交じりにこう言い放った。
「あらら、フィロソフィさん逃げちゃった。明日はディアボロスとの運命のギルド戦なんだけどどうなっちゃうのでしょうね~」
いや、本当にどうなっちゃうんだろう。この一件でセレスティアスのギルドメンバーも結構抜けちゃったし、ギルド戦どころではないのでは?
ディアボロス内の工作員を排除することが出来たので、積極的にギルド戦に向けた作戦会議や練習に取り組むことが出来た。
シエルだけではなく、俺はアリサのアカウントでもなるべくログインするようにしていた。これはアリサのログイン時間が少ないとフィロソフィに不審に思われる可能性があるからだ。
順調なディアボロスとは打って変わって、セレスティアスの雰囲気は殺伐としたものになっていた。俺が工作員を全て除名したことがフィロソフィに伝わったことで、フィロソフィは自分のギルドの中に内通者が居ると疑い始めたのだ。
≪フィロソフィの家・会議室≫
「ああ、もう誰や! 一体誰がシエルに伝えたんや!!」
フィロソフィは怒鳴りながら机に勢いよく拳を叩きつける。ドンッという鈍い音が部屋の中に響き渡り、ピリピリとした緊張感がこの部屋に集められたギルドメンバーに伝わっていく。どこからか、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。周囲を見回せばみんな黙り込んで目線を下に逸らしている。
これは当然考案者であるアリサが疑われるよなあって思っていたのだけど、フィロソフィはアリサを疑うことはしなかった。お互い肌を重ね合った仲だからなのか知らんけど、まあ冷静に考えてみれば、アリサとフィロソフィはお互い危ない道を歩んでいる一蓮托生の関係なんだ。裏切ることは無いと考えている、いや、裏切るなんて考えないようにしているんだろうね。
スパイが特定できない以上、以前の作戦は全て筒抜けだろうし、新たな作戦を立てることも出来ない。違う工作員を雇ってディアボロスに送り込もうにも入隊希望はあれから全て断るようにしている。だからこうしてギルドメンバーに吠えることくらいしか出来ないのだ。
そうやって疑われて、怒鳴られて、サンドバッグになっているギルドメンバー達はどう思うだろう? いくらフィロソフィ様に忠誠を誓っていたとしても、ギルドメンバーだってロボットじゃない。多少なりとも不満を抱くはずだ。
そうしてフィロソフィとギルドメンバーの間には軋轢が生じる。――俺はこれを狙っていた。
≪マーグナー熱帯雨林≫
以前モチツキと会話のために訪れたマーグナー熱帯雨林。今回、俺はあ・る・作戦の為にここまで足を運んでいた。自分の身体を隠せるほど背の高い植物を掻き分けながら進み、モンスターの出現しないちょっとした広場のようなエリアを目指す。ここが待ち合わせ場所だ。
一足先についた俺は、そこで待機して呼び出しているフィロソフィが来るのを待つ。
フィロソフィをゲーム内でも、現実世界でも終わらせる方法はこれしかない。唯一本音で話せたとっしーもいつの間にか連絡が取れなくなってしまった。受験は夏休みが天王山と言われているしそれは仕方がないよね。協力してくれる人は居るけれど、誰にも俺の事情や本心を語ることが出来ない、これは孤独な戦いだ。
数分ほどして、パキッパキッと小枝が折れる音が聞こえてきた。その音のした方に俺は目を移す。
「……なんでよりにもよってこんな面倒なフィールドで待ち合わせなんや。このクソ忙しいときに……」
不機嫌そうな声でブツブツと言っているフィロソフィがやってきた。俺の姿を見せてやるとフィロソフィは立ち止まり、怠そうに頭をポリポリと掻いて不満そうな表情をする。
「おーいアリサ、話ってなんや、フレンドチャットじゃいかんのか?」
「……ごめんなさいマスター、大事な話なんです」
俺は出来るだけ真剣な表情を作ってフィロソフィに話す。そんな俺の表情を見てただ事ではないと悟ったのか、フィロソフィの表情にも緊張の色が走る。その表情を確認したのち、俺はゆっくりと口を開いて話し始める。
「……実は没収されたスマホの中身、親に見られたみたいなんです」
俺がそう言った途端フィロソフィの表情はみるみる絶望の色に染まっていく。もちろん、こんなことは嘘八百である。
「は、はぁ? それはどういうことや、まさか俺たちがリアルで会っていることがバレたっていうんか?」
動揺するフィロソフィの姿を見て吹き出しそうになる。この顔がみたくて今までやって来たんだ。
「はい、それだけでなくアレも……」
「写真……まさか、あの時に撮ったハメ撮りも見られたんか!?」
あの時っていつなのか知らないけど、俺はコクリと頷く。
そしたらフィロソフィは頭を抱えて「ああぁ~」と、うめき声を上げ始めた。俺は笑いをこらえながらも泣き出しそうな声を出して続ける。我ながら凄い演技力だと思う。
「母は警察に通報するって言っていました。多分私たちはもう終わりです……」
アリサ本人の口から「警察に通報」なんて言われたら絶望感も相当な物だろう。
疑う余地なんか無い。更なる絶望の顔が見られるぞって楽しみにしていたのだけど、予想と反してフィロソフィの態度が一変した。
「……ふざけんなよ……俺は悪くないッ!!」
唸るような声でフィロソフィが叫んだ。その豹変具合に俺も驚いてしまう。
「……大体こうなったのもお前が原因やろ、アリサ! 寂しいとか言って先に俺にすり寄ってきたのはそっちやないか。俺に抱いてほしいって最初に言い出したのもアリサの方やろ! だから俺は仕方なくお前を抱いてやったんや! それに金も渡したやろ? せやからこの件は全て俺には関係ない、全部そっちが作り出した問題や!」
「そんな、酷いわ……マスター」
「前にも言ったけどな、俺には家族がおる。せやけどお前は未成年や。売春における女っていうのは保護される立場やし逮捕されることもない。俺が逮捕されるダメージに比べたらアリサの受ける処罰なんて屁みたいなもんや、だから分かるやろ? 俺のことをうまく誤魔化してくれへんか? ほら、金もようさん渡したやないか」
何とも自分勝手な理由で呆れてしまう。金のことをやたら強調するのはアリサに負い目を感じさせようとしているのだろうか。
なあアリサ、見ているか? これがお前の愛していた男の本性だよ。アリサには金を渡したのかもしれないけど、俺は何も受け取っていないんでね。悪いけど罰を受けてもらうぜ。
「……あさだけんぞう」
俺は聞こえるか聞こえないかのギリギリの声の大きさでぼそりとその名前を口にする。
そしたらフィロソフィは口をあんぐりとあげて驚くもんだから分かりやすいのなんのって。
「おい、どうしてお前が俺の名前を知っているんや……本名を教えたことは無かったはずやぞ!!」
フィロソフィは顔色を変えて俺の胸倉に掴みかかってくる。女性に手を上げるなんて最低ねっ、まあ中身は男なんだけど。
しっかし、この反応はけんぞう本人だって認めているようなものだぞ?
俺は口元を吊り上げながら左手をひょいと上に挙げ、彼・に合図を送る。
その直後、俺の背後にある茂みが揺れ、ずっとそこで俺たちのやり取りを撮っていた人物がカメラを持って出てくる。
シリアスな雰囲気の中、場違いなくらい楽しそうな声で、彼はお決まりの台詞を叫んだ。
「どーもー! ヤミキンTVです! えー現在のやり取り、全て撮らせていただきました! しかも生放送で、現在も放送中でーす! いやあ、衝撃の事実でしたね~。それが本人の口から語られるとは……これは大スキャンダルですよ! まさかDOMの世界から犯罪者が出るとは思ってもいませんでしたね! ハハハ!」
ヤミキン――。今回も雇わせてもらったぜ。アリサの全財産を使ってな。
前回のフィロソフィのRMT疑惑で盛り上がっている中、新たな燃料が欲しかったのか、ヤミキンは快く受け入れてくれた。
「きゃー何よこれー」
「な、なんやこれ……おい、お前! なに撮ってんねん! クソッ、これもシエルの仕業か!」
狼狽えるフィロソフィ。まさか今までのやり取りが生放送で流されていたとは思ってもいなかっただろう。それに、わざわざ悪事を自分の口から語ってもらったんだ、これ以上の証拠はないよな。
「ちなみにこれはDOM内だけではなく、現実世界にも流れていますよ~」
ヤミキンは呑気な声でそう告げる。大きなサングラスの向こうで彼は何を思っているのだろうか。
「せ、せや……今まで言ったことは全て嘘なんや。これはヤミキンのドッキリの企画に協力していただけやで? せやから今までのことは台本の台詞だったんや!」
ヤミキンの持つカメラに必死に訴えかけるフィロソフィ。
ふん、ドッキリということにして上手く逃げる気か。だが無駄だ、既に手は打ってある。
「これはドッキリでもないし、嘘でもないですよ。SNSアカウントを確認してみてください。そこに全てが載っていますぜ☆」
ヤミキンは余裕の笑みを浮かべてそう付け加える。
俺は事前にSNSのアカウントを作り、ネット上に写真そして音声データを全てアップしておいたのだ。フィロソフィが何と言おうが、これを見ればフィロソフィがクロだということは誰が見ても分かるようになっている。
ヨシツネ
「フィロソフィさん……今ログアウトしてヤミキンさんの言っていたSNSアカウントを見てきました。RMTの噂は嘘だと信じていましたが、これには私もついていけません」
ココア
「生放送見ました。マスターがそんなことしていたなんてサイテーです! 通報させていただきます!」
イトゲン
「けんぞー(笑)アリサちゃんとそんなことしていたのかよw ありえねえわ、このロリコン野郎w」
エクレア
「犯罪者のギルドにいるわけには行かないので抜けますね。お世話になりました」
…………
ギルドチャットでもフィロソフィを見限る声が多く聞こえてくる。溜まっていた不満もあってかそれが一気に爆発した感じだ。ギルドチャットでこれなのだから生放送のコメントはさぞ荒れているんだろうな。見ることが出来ないのが少々残念である。これが出演者の悲しいところね。
「ええい、このッ!!」
フィロソフィは俺を乱暴に突き飛ばし、慌てながらメニューコマンドを操作していく。ログアウトして自分の目でその証拠を確かめてくるつもりなのだろう。取り残された俺は、おっさんに買われた可哀想な少女を演じるため、泣いているフリを続ける。
フィロソフィの姿が消えた後、ヤミキンは皮肉交じりにこう言い放った。
「あらら、フィロソフィさん逃げちゃった。明日はディアボロスとの運命のギルド戦なんだけどどうなっちゃうのでしょうね~」
いや、本当にどうなっちゃうんだろう。この一件でセレスティアスのギルドメンバーも結構抜けちゃったし、ギルド戦どころではないのでは?
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む
大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。
一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。
俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる