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#48 緊急声明
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俺のギルド、ディアボロスへの入隊申請が毎日捌き切れないほど届いている。
あの生放送の効果はとても大きなものだった。いや、大きすぎて自分でも少し怖いくらいだよ。とっしーにこのことを話したら「放送見ていたぜ、面白くなって来たな」と楽しそうに言ってきた。それはまるで面白いドラマを見ているかのような言い方だった。
入隊申請については地雷ネーム以外は許可して入隊させるようにしている。基本的に誰でもウェルカムなスタイルだ。セレスティアスに打ち勝つためにはとにかく人手が欲しかった。ちなみに地雷ネームというのは、実名系や、下ネタ系、〇〇キング、○○ひめ等々。なにしろ数が多すぎるので、一人一人面接とかするわけにも行かないし、そうなれば必然と名前で判断するしかないのだ。地雷ネームの方には申し訳ない。
元セレスティアスのメンバーなんかもディアボロスに加わってくれて、そんな彼から話を聞く限りセレスティアス内はディアボロスに移籍を考えているって話で持ちきり、大混乱らしい。メンバー達は巻き添えBANされることを恐れているのかもしれない。
人数も増えたことで、俺たちのギルドは《蒼穹騎士団》、《悶絶ブラック企業》といった有名ギルドにもギルド戦を仕掛けることにした。
結果は圧勝。人海戦術は功を奏したのだ。ギルドランクもSからS+まで上がり、勝ったギルドから人員の引き抜きを行い、偉大なるディアボロス帝国は拡大の一途をたどっていた。
ともかく、セレスティアスからプレイヤーを引き抜いてこちらに移ってきている。これでセレスティアスの弱体化は成功だ。今なら圧倒的な人数差で、セレスティアスに打ち勝つことも出来るかもしれない。
≪帝都アルケディア・大通り≫
帝都アルケディア。DOMで最大の都市であり上級者プレイヤーが集う街でもある。大通りには背の高いバロック様式の建物が遠くまでずらーっと続いている。ファンタジーの世界にも関わらず、電子モニターなどが宙に浮いており、サイバーパンクな雰囲気も感じる昔と未来の技術が混同している不思議な街だ。
「それにしても、ギルドメンバーの人数が一気に増えましたね」
「シエルが突然あんなことを言い出すなんてね。ギルドチャットもうるさいからOFFにしちゃったよ」
俺の横をユリアともちこがクレープを頬張りながら歩いている。ギルドメンバーが増えても、やっぱり初期メンバーと居るのが落ち着くもので、こうして街を歩いて気分転換をするのがちょっとした楽しみだ。ちなみにモフモフはリアルの用事があるらしく、今はログアウト中。というより、モフモフはそれほどログイン頻度が高くないんだよね。
ユリアをはじめとする初期メンバーは、俺の行った強引な印象操作に驚いた様子だったけれど、周りの空気に影響されてかそれほど気にしていないように見える。少なくとも俺・か・ら・見る分にはだけど。要するに結果オーライである。
「あっ、あれを見てください!」
ユリアが宙に浮いている電子モニターを指さす。そこに映っていたのはなんと、フィロソフィ。流石にギルドメンバーの流出に危機感を覚え始めたのかな。緊急声明ってやつだね。
『あー、どもども、俺です。フィロソフィでーす』
自分のことを俺と呼ぶ美少女エルフに、周囲のプレイヤーは足を止めて電子モニターを見つめている。そりゃそうだよ今DOM内で一番の話題の人なのだから。ああ、悪い意味でだけど。
『ヤミキンの生放送で俺に関するデマが流されたそうやけど、皆さんは信じないよう頼むで。あんなん根も葉も無い作り話や! もし信じるやつが居たらそいつは相当な阿呆! お前たちはそんな阿呆なのか? ちゃうやろ?』
でもDOMの皆さんは信じているみたいだぜ?
『おい、ディアボロスだか、ボロボロスだかのシエルってやつ、見てるか? お前、デタラメなことばかり言いやがって。俺がRMTをしているだぁ? 証拠はあるんか!? 無いやろ!?』
フィロソフィは相当お怒りのようだった。外見が美少女にも関わらずやけにドスの利いた声だ。おっかねー。でもこれって裏を返せばかなりのダメージをフィロソフィに与えられているってことだよね。
『フン、証拠も無いくせにデマを広めやがって。最近上がってきているギルドだからってどうせ調子に乗っているんやろ。お前、いつか絶対に酷い目に遭うで。……なあ、知っているか? 今までの歴史も勝者が正義ってことになっているんや。ギルド戦でもなんでも受けたるからそれで白黒ハッキリつけようや』
それだけ言ってフィロソフィの放送は終了した。脅しを掛けているようだが、こんなので動揺するような俺ではない。どうせハッタリだろう。
「すっかりシエルさんも有名人になってしまいましたね」
「これも強豪ギルドの宿命だよ。強き者は世界の警察ならぬ、DOMの警察になって秩序を守らなければいけないのさ」
俺は諭すように2人に言って聞かせる。我ながら寒いこと言ってんなーって思うけど、それらしく振る舞わなければ周りが付いてこない。
「……本当にそんなことは必要なのかな?」
俺の隣に居たもちこから疑問の声が漏れる。俺が突然あんなことをやり出したらやっぱり不審に思いますよね。本当なら説明してあげたいのだけど、こっちには垢BANのリスクがあるんだ。まだ話すわけには行かない。こうなったら秘技・周囲の空気と同調させる作戦を実行するか。
俺はギルドチャットに切り替えて、ディアボロスのメンバーに話を聞くことにした。
シエル
「みんな、今のフィロソフィの放送を見てどう思う?」
ダイナマイ
「めっちゃ狼狽えていましたねー」
ウッディー
「ありゃ絶対にRMTやってますわ」
ハロルド
「俺たちの勝ちは確定していますよ!」
うんうん、そうだよな。それが善良なDOM民の反応だよ。とりあえず新しく入ったギルドのメンバーはフィロソフィ憎しの人ばかりなので、かつての大日本帝国が行ったプロパガンダのようにそれが普通だという雰囲気にしておけば、もちこも俺の行動も疑問に思わなくなるはずだ。許せ、もちこ。今はフィロソフィを打ち倒すことが最重要事項なのだ。
フィロソフィへのヘイトが高まれば高まるほどギルド内の士気も高まることになる。この状態でギルド戦を行えばフィロソフィのギルドは一気に没落するだろう。そしてフィロソフィの地位も落ち、新たなトップギルドに立った俺は、そこでフィロソフィの行いを全てリークする。アイツの人生はチェックメイトだ。
ギルド戦はそうだな。一番人が集まりそうな時期と言えば夏休みだし、来月の頭にでも行うことにしよう。
あの生放送の効果はとても大きなものだった。いや、大きすぎて自分でも少し怖いくらいだよ。とっしーにこのことを話したら「放送見ていたぜ、面白くなって来たな」と楽しそうに言ってきた。それはまるで面白いドラマを見ているかのような言い方だった。
入隊申請については地雷ネーム以外は許可して入隊させるようにしている。基本的に誰でもウェルカムなスタイルだ。セレスティアスに打ち勝つためにはとにかく人手が欲しかった。ちなみに地雷ネームというのは、実名系や、下ネタ系、〇〇キング、○○ひめ等々。なにしろ数が多すぎるので、一人一人面接とかするわけにも行かないし、そうなれば必然と名前で判断するしかないのだ。地雷ネームの方には申し訳ない。
元セレスティアスのメンバーなんかもディアボロスに加わってくれて、そんな彼から話を聞く限りセレスティアス内はディアボロスに移籍を考えているって話で持ちきり、大混乱らしい。メンバー達は巻き添えBANされることを恐れているのかもしれない。
人数も増えたことで、俺たちのギルドは《蒼穹騎士団》、《悶絶ブラック企業》といった有名ギルドにもギルド戦を仕掛けることにした。
結果は圧勝。人海戦術は功を奏したのだ。ギルドランクもSからS+まで上がり、勝ったギルドから人員の引き抜きを行い、偉大なるディアボロス帝国は拡大の一途をたどっていた。
ともかく、セレスティアスからプレイヤーを引き抜いてこちらに移ってきている。これでセレスティアスの弱体化は成功だ。今なら圧倒的な人数差で、セレスティアスに打ち勝つことも出来るかもしれない。
≪帝都アルケディア・大通り≫
帝都アルケディア。DOMで最大の都市であり上級者プレイヤーが集う街でもある。大通りには背の高いバロック様式の建物が遠くまでずらーっと続いている。ファンタジーの世界にも関わらず、電子モニターなどが宙に浮いており、サイバーパンクな雰囲気も感じる昔と未来の技術が混同している不思議な街だ。
「それにしても、ギルドメンバーの人数が一気に増えましたね」
「シエルが突然あんなことを言い出すなんてね。ギルドチャットもうるさいからOFFにしちゃったよ」
俺の横をユリアともちこがクレープを頬張りながら歩いている。ギルドメンバーが増えても、やっぱり初期メンバーと居るのが落ち着くもので、こうして街を歩いて気分転換をするのがちょっとした楽しみだ。ちなみにモフモフはリアルの用事があるらしく、今はログアウト中。というより、モフモフはそれほどログイン頻度が高くないんだよね。
ユリアをはじめとする初期メンバーは、俺の行った強引な印象操作に驚いた様子だったけれど、周りの空気に影響されてかそれほど気にしていないように見える。少なくとも俺・か・ら・見る分にはだけど。要するに結果オーライである。
「あっ、あれを見てください!」
ユリアが宙に浮いている電子モニターを指さす。そこに映っていたのはなんと、フィロソフィ。流石にギルドメンバーの流出に危機感を覚え始めたのかな。緊急声明ってやつだね。
『あー、どもども、俺です。フィロソフィでーす』
自分のことを俺と呼ぶ美少女エルフに、周囲のプレイヤーは足を止めて電子モニターを見つめている。そりゃそうだよ今DOM内で一番の話題の人なのだから。ああ、悪い意味でだけど。
『ヤミキンの生放送で俺に関するデマが流されたそうやけど、皆さんは信じないよう頼むで。あんなん根も葉も無い作り話や! もし信じるやつが居たらそいつは相当な阿呆! お前たちはそんな阿呆なのか? ちゃうやろ?』
でもDOMの皆さんは信じているみたいだぜ?
『おい、ディアボロスだか、ボロボロスだかのシエルってやつ、見てるか? お前、デタラメなことばかり言いやがって。俺がRMTをしているだぁ? 証拠はあるんか!? 無いやろ!?』
フィロソフィは相当お怒りのようだった。外見が美少女にも関わらずやけにドスの利いた声だ。おっかねー。でもこれって裏を返せばかなりのダメージをフィロソフィに与えられているってことだよね。
『フン、証拠も無いくせにデマを広めやがって。最近上がってきているギルドだからってどうせ調子に乗っているんやろ。お前、いつか絶対に酷い目に遭うで。……なあ、知っているか? 今までの歴史も勝者が正義ってことになっているんや。ギルド戦でもなんでも受けたるからそれで白黒ハッキリつけようや』
それだけ言ってフィロソフィの放送は終了した。脅しを掛けているようだが、こんなので動揺するような俺ではない。どうせハッタリだろう。
「すっかりシエルさんも有名人になってしまいましたね」
「これも強豪ギルドの宿命だよ。強き者は世界の警察ならぬ、DOMの警察になって秩序を守らなければいけないのさ」
俺は諭すように2人に言って聞かせる。我ながら寒いこと言ってんなーって思うけど、それらしく振る舞わなければ周りが付いてこない。
「……本当にそんなことは必要なのかな?」
俺の隣に居たもちこから疑問の声が漏れる。俺が突然あんなことをやり出したらやっぱり不審に思いますよね。本当なら説明してあげたいのだけど、こっちには垢BANのリスクがあるんだ。まだ話すわけには行かない。こうなったら秘技・周囲の空気と同調させる作戦を実行するか。
俺はギルドチャットに切り替えて、ディアボロスのメンバーに話を聞くことにした。
シエル
「みんな、今のフィロソフィの放送を見てどう思う?」
ダイナマイ
「めっちゃ狼狽えていましたねー」
ウッディー
「ありゃ絶対にRMTやってますわ」
ハロルド
「俺たちの勝ちは確定していますよ!」
うんうん、そうだよな。それが善良なDOM民の反応だよ。とりあえず新しく入ったギルドのメンバーはフィロソフィ憎しの人ばかりなので、かつての大日本帝国が行ったプロパガンダのようにそれが普通だという雰囲気にしておけば、もちこも俺の行動も疑問に思わなくなるはずだ。許せ、もちこ。今はフィロソフィを打ち倒すことが最重要事項なのだ。
フィロソフィへのヘイトが高まれば高まるほどギルド内の士気も高まることになる。この状態でギルド戦を行えばフィロソフィのギルドは一気に没落するだろう。そしてフィロソフィの地位も落ち、新たなトップギルドに立った俺は、そこでフィロソフィの行いを全てリークする。アイツの人生はチェックメイトだ。
ギルド戦はそうだな。一番人が集まりそうな時期と言えば夏休みだし、来月の頭にでも行うことにしよう。
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