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赤い瞳の姫君

つい、揶揄っていまいました。

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 今時の吸血鬼が田舎にいる筈はありませんよ。

 だって、田舎は狭いですからね。面積ではありませんよ? 人間関係が密接という意味です。

 ですから、夜中に出歩くだとか、人の血を吸うだなんて奇行をしていたら、すぐに噂になってしまいますよ。それでバレてしまったら、とても暮らし難くなるとは思いませんか?

 その点、都会ならある程度は他人へ無関心ですからね。夜中に出歩くことも、田舎に比べると、それ程不自然ではないでしょう? 詮索する人も少ないですから。

 なにより、都会には、人が大勢いますからね。一人や二人消えたところで、誰も気にしない・・・

 ということを、知り合いが言っていたんです。

 まあ、そういう理由で、今時の吸血鬼は断然都会派が多いのだそうですよ?

 今時、田舎に住む吸血鬼は、物好きか変り者くらい。そうでないなら、その土地で好き勝手できる程の権力を握っている・・・だとか、或いは、その場所やそこへ住んでいる人へなんらかの愛着があるのかもしれませんね。

 まあ、吸血鬼というモノは、元々人間だったモノが多いそうですからね。

 例え人間でなくなったとしても、人間だった頃に好きだったものは、そうそう変わらないようです。

 ああ、そういえば、人狼も都会派が多いようですね。なぜ、と? 彼らが姿を変えるのは満月前後の数日ですからね。
 その間だけ、どこか余所の土地へ行って、家畜や人間を襲って逃げ出せばいいそうです。
 そうすれば旅行者に紛れられて、あまり怪しまれなくて済むようです。

 え? ああ、これも知り合いからです。

 いえ、吸血鬼のヒトとは違うヒトですよ。

 え? 魔女、ですか? 魔女は・・・森派が多いようですね。都会だと、薬草が手に入らないそうで。
 森では豊富な薬草も、都会では入手が難しく、非常に高価になるそうです。
 森ではただで手に入れられる物に、大金を払うのは馬鹿馬鹿しいそうですからね。
 ああ、集落には属さないそうです。田舎の人付き合いは面倒だと言ってました。
 人がいると、魔女狩りの密告だとかが・・・

 なんて、冗談ですよ。

 ええ。今のは全て、冗談なんです。

 本気にしてしまいましたか?

 すみません。つい、揶揄からかってしまいました。

 怒っていませんか? ああ、よかったです。

 ・・・では、もう一つだけ。

 知っていますか?

 願いを叶えるモノは、代償を求めるものです。

 それは・・・寿命だったり、その者の一番大事な宝物だったり、子供だったり、記憶や心、若さ、影、味覚、声、瞳、腕、足、知能、智識、花、コイン、労働力、光、美、洋服、針、木の枝、家、靴、ガラクタ、パン、牛、森、ミルク、水、髪の毛、宝石、カツラ、本、お菓子、色・・・挙げるとキリがないでしょう。

 ああ、今挙げたのは、願いを叶える代わりに差し出すモノ、ですよ。ほんの一部ですが。

 願う者の願いと、叶える側の気分や欲しいモノで、代価が様々に変わるのは当然のことでしょう?

 軽い気持ちで「願いを叶えてほしい」と言って、結婚を迫られたなど、よくある話ですよ。

 妖精や悪魔と取り引きをするときには、慎重過ぎる程慎重に。用心を重ねるのが鉄則ですからね。

 知恵と勇気と打算と機転。それらをフルに活用して、悪魔や妖精を出し抜かないと、直ぐに大事なモノを持って行かれてしまいますよ。

 妖精や悪魔が取り引きを持ち掛ける理由?

 まあ、中には、他人の願いを叶え続けないと生きて行けないという変わり種もいますけどね。

 けれど、大半は・・・

 単なる暇潰しや、娯楽ですよ。

 だって、悪魔や妖精は刹那的で享楽主義のモノが多いのですから。そして、楽しいことが大好きなんです。

 だから、暇を潰せる遊びに飢えているのです。

 そうじゃなければ、その悪魔や妖精のは・・・欲しいモノがあるのでしょう。あなたの持っているモノの中に。

 願いを叶えてもらう一番いい手は、彼らが欲しがっていて、けれどもあなたが要らないモノを、彼らへと渡すことでしょう。

 まあ、対応を間違えると大変なことになりますが。

 なんて・・・勿論、冗談ですよ。

 すみません、あなたがあまりに真剣に聞いてくれるものですから。つい、ね・・・

 まあ、知っておいて・・・・・・損はない・・・・ですからね。

 では、また後程。
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