8 / 50
赤い瞳の姫君
もうお前料理作るなー。
しおりを挟む
「いつもこれくらいすんなり起きて頂ければ、これ程に疑わなくて済んだのですけれどね?」
「あははっ、無理! だってー、いっつも携帯食料ばっかで味気ないしー? ご飯食べる楽しみが無い!」
笑顔でキッパリと言うフィンに、
「マスター。携帯食料だけでも、あるだけマシでしょうに?」
呆れ顔で返すヴァン。
「それはそうなんだけどー」
フィンは口を尖らせる。
「そんなに食べるのが楽しみなら、ご自分で調理でもされたら如何ですか?」
ヴァンは料理ができない……ということもない。が、肉、魚、卵を一切使わない料理は凡そ限られて来る。つまり、彼女が作る料理は野菜のみ。
野菜オンリー、ビバ☆ベジタブル!
フィンには、「もうお前料理作るなー」と言われるくらいには絶不評だ。
ただ単に、一日三食毎日そこらに生えている野草(別名雑草という)で、サラダを作っていただけなのに・・・一応、塩コショウやドレッシングで味付けもして、水とパンも添えていたというのに。
更には、雑草のソテー。雑草のスープ。雑草のリゾット。雑草のパスタなどなど・・・飽きないようにレパートリーもちゃんと増やした。
だというのに、マスターがなぜ不満に思うのか、ヴァンには本気で判らない。
「それはヤだ。ボク、料理は誰かに作ってもらいたい派なんだよねー」
「料理なんて、食べたい方が食べたい物を、食べたいだけ作ればいいのですよ」
「お前なー、そんなんだからあんな悲惨な料理が出せるんだよー」
「失礼な」
「大体さー、ボクはうさぎじゃないの。毎日毎日、一日三食雑草ばっかり食べさせられてみてよー? あれを悲惨と言わず、なにを悲惨と言う? って気分になるからさー」
「我が儘ですね」
「大体さー、ヴァン。君の理論で言うと、料理屋さんとかレストランとか、全く成り立たないよー?」
「一般家庭は、大体が自炊ですよ?」
「家庭を持たない寂しい奴だっているってー」
「自炊すれば食費が浮きます。浮いたお金を、結婚資金に当てればいいのですよ」
「・・・よ、世の中、そう正論ばかりが通ると思うなー」
「それもそうですね。現に今、マスターの逆ギレされていますし」
「そうだそうだー」
「・・・もういいです。さっさと行きましょう。朝食が待っていますよ」
思わず溜息が出るヴァン。
「! そうだよねっ!? 早く行かないと、無くなっちゃうもんねっ!?」
そんなワケはない。仮にもフィンとヴァンの二人は客だ。泊まった客に朝食を出さないなんて、そんなことがある筈が無い。あるとしたら、余程嫌われているか、自分で朝食を断った場合。もしくは、捕らえられた場合だろうか?
まあ、私達は罪人ではないし、昨日の城主…サファイアの様子からも、嫌われているという感触は無かった。なので、朝食の心配は要らないと思うが・・・
と、ヴァンは能天気に食事の心配をする主を、冷めた目で見下ろした。
「あははっ、無理! だってー、いっつも携帯食料ばっかで味気ないしー? ご飯食べる楽しみが無い!」
笑顔でキッパリと言うフィンに、
「マスター。携帯食料だけでも、あるだけマシでしょうに?」
呆れ顔で返すヴァン。
「それはそうなんだけどー」
フィンは口を尖らせる。
「そんなに食べるのが楽しみなら、ご自分で調理でもされたら如何ですか?」
ヴァンは料理ができない……ということもない。が、肉、魚、卵を一切使わない料理は凡そ限られて来る。つまり、彼女が作る料理は野菜のみ。
野菜オンリー、ビバ☆ベジタブル!
フィンには、「もうお前料理作るなー」と言われるくらいには絶不評だ。
ただ単に、一日三食毎日そこらに生えている野草(別名雑草という)で、サラダを作っていただけなのに・・・一応、塩コショウやドレッシングで味付けもして、水とパンも添えていたというのに。
更には、雑草のソテー。雑草のスープ。雑草のリゾット。雑草のパスタなどなど・・・飽きないようにレパートリーもちゃんと増やした。
だというのに、マスターがなぜ不満に思うのか、ヴァンには本気で判らない。
「それはヤだ。ボク、料理は誰かに作ってもらいたい派なんだよねー」
「料理なんて、食べたい方が食べたい物を、食べたいだけ作ればいいのですよ」
「お前なー、そんなんだからあんな悲惨な料理が出せるんだよー」
「失礼な」
「大体さー、ボクはうさぎじゃないの。毎日毎日、一日三食雑草ばっかり食べさせられてみてよー? あれを悲惨と言わず、なにを悲惨と言う? って気分になるからさー」
「我が儘ですね」
「大体さー、ヴァン。君の理論で言うと、料理屋さんとかレストランとか、全く成り立たないよー?」
「一般家庭は、大体が自炊ですよ?」
「家庭を持たない寂しい奴だっているってー」
「自炊すれば食費が浮きます。浮いたお金を、結婚資金に当てればいいのですよ」
「・・・よ、世の中、そう正論ばかりが通ると思うなー」
「それもそうですね。現に今、マスターの逆ギレされていますし」
「そうだそうだー」
「・・・もういいです。さっさと行きましょう。朝食が待っていますよ」
思わず溜息が出るヴァン。
「! そうだよねっ!? 早く行かないと、無くなっちゃうもんねっ!?」
そんなワケはない。仮にもフィンとヴァンの二人は客だ。泊まった客に朝食を出さないなんて、そんなことがある筈が無い。あるとしたら、余程嫌われているか、自分で朝食を断った場合。もしくは、捕らえられた場合だろうか?
まあ、私達は罪人ではないし、昨日の城主…サファイアの様子からも、嫌われているという感触は無かった。なので、朝食の心配は要らないと思うが・・・
と、ヴァンは能天気に食事の心配をする主を、冷めた目で見下ろした。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
これもなにかの縁ですし 〜あやかし縁結びカフェとほっこり焼き物めぐり
枢 呂紅
キャラ文芸
★第5回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました!応援いただきありがとうございます★
大学一年生の春。夢の一人暮らしを始めた鈴だが、毎日謎の不幸が続いていた。
悪運を祓うべく通称:縁結び神社にお参りした鈴は、そこで不思議なイケメンに衝撃の一言を放たれてしまう。
「だって君。悪い縁(えにし)に取り憑かれているもの」
彼に連れて行かれたのは、妖怪だけが集うノスタルジックなカフェ、縁結びカフェ。
そこで鈴は、妖狐と陰陽師を先祖に持つという不思議なイケメン店長・狐月により、自分と縁を結んだ『貧乏神』と対峙するけども……?
人とあやかしの世が別れた時代に、ひとと妖怪、そして店主の趣味のほっこり焼き物が交錯する。
これは、偶然に出会い結ばれたひととあやかしを繋ぐ、優しくあたたかな『縁結び』の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナマズの器
螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。
不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。

我らエリート辺境部隊!夜露死苦!!
satomi
ファンタジー
中央の派手な騎士団にバカにされたようにみられがちな辺境騎士団。彼らは超エリート。彼らがいるからこそまわりの国が仕掛けてこない!
そんな中エリート志向の強い近衛騎士団が視察に辺境騎士隊を訪れる!!
視察なんて嘘嘘。本当は心の中で辺境の騎士隊を田舎者の烏合の衆と蔑みたかった。が、やり込められてしまう。そんな近衛騎士団長のプライドは!!

ガダンの寛ぎお食事処
蒼緋 玲
キャラ文芸
**********************************************
とある屋敷の料理人ガダンは、
元魔術師団の魔術師で現在は
使用人として働いている。
日々の生活の中で欠かせない
三大欲求の一つ『食欲』
時には住人の心に寄り添った食事
時には酒と共に彩りある肴を提供
時には美味しさを求めて自ら買い付けへ
時には住人同士のメニュー論争まで
国有数の料理人として名を馳せても過言では
ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が
織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。
その先にある安らぎと癒しのひとときを
ご提供致します。
今日も今日とて
食堂と厨房の間にあるカウンターで
肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める
ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。
**********************************************
【一日5秒を私にください】
からの、ガダンのご飯物語です。
単独で読めますが原作を読んでいただけると、
登場キャラの人となりもわかって
味に深みが出るかもしれません(宣伝)
外部サイトにも投稿しています。
戦国姫 (せんごくき)
メマリー
キャラ文芸
戦国最強の武将と謳われた上杉謙信は女の子だった⁈
不思議な力をもって生まれた虎千代(のちの上杉謙信)は鬼の子として忌み嫌われて育った。
虎千代の師である天室光育の勧めにより、虎千代の中に巣食う悪鬼を払わんと妖刀「鬼斬り丸」の力を借りようする。
鬼斬り丸を手に入れるために困難な旅が始まる。
虎千代の旅のお供に選ばれたのが天才忍者と名高い加当段蔵だった。
旅を通して虎千代に魅かれていく段蔵。
天界を揺るがす戦話(いくさばなし)が今ここに降臨せしめん!!
【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜
四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】
応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました!
❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.
疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。
ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。
大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。
とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。
自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。
店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。
それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。
そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。
「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」
蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。
莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。
蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。
❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.
※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。
※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる