12 / 50
赤い瞳の姫君
子供を探す手伝いに来ました。
しおりを挟む
ヴァンが城から約十五分も走った頃だろうか。
村が見えて来た。そろそろ日も暮れようかという時間なのに、人がまばらに立っていた。
子供を探す村人だろうか? と、ヴァンはそのうちの一人を掴まえて話を聞いてみることにする。
「すみませんが、子供が行方不明になったとか?」
「あ、ええ、そうですが……あなたは?」
掴まえたのは、若い男。ゴロツキ未満Aのようなクズ臭漂うような横柄さは全くない。
「子供を探す手伝いに来ました。いなくなったのは、男の子? 女の子?」
「お、男の子です」
「いつ気が付きましたか?」
「昨日の夜だそうです」
フィンとヴァンの二人が村に顔を出したのも、昨日だ。それなら仕方ないと、ヴァンは思う。
「その子の家はどちらですか?」
「こ、こっちです」
身分を名乗らず、矢継ぎ早に質問。そして、行方不明の子供の家へと案内させる。
着いたのは、他の家よりも少し立派な家だった。
行方不明になったのはどうやら、村の重役辺りの子供のようだ。
「失礼します」
と、ヴァンは勝手にドアを開けて家へ入る。
「あ、ちょっと!」
「こちらの息子さんが行方不明になったと伺ったのですが?」
「なんですかあなたはっ!?」
いきなり家へ押し掛けたヴァンに、中年男性が声を上げる。子供が行方不明になって、気が立っているのだろうから、これが当然の反応だとは思う。しかし、
「なんですかは、こちらの台詞ですね。いきなり城へ押し掛けて来て、私を犯人扱い。挙げ句、城の中まで見せろとは・・・それが、この村の総意ですか? まずは、それを確認したいと思いまして」
馬鹿が一人先走って城へ押し掛けたのだとは、十分に考えられる。しかし、その一人の馬鹿を抑え切れなかったのだ。それは、この村の責任だろう。
「し、城? 誰が、そんな・・・」
絶句する中年男性。その顔が蒼白になる。
「ち、違いますっ!? 領主様を疑うなど、断じて違いますっ!?」
キッパリと断言するのは、ヴァンをこの家まで案内してくれた若い男性。
「そうですか。では、今はこのことは不問とすることにしましょう」
「あ、ありがとうございます」
中年男性は、ヴァンへと頭を下げる。
「いえ、後でキチンと追及させて頂くので、安心はしない方が宜しいかと。ひとまずは、私への疑いを晴らす為に、お子さんを探す手伝いをさせて頂きます。拒否権はありません。断られても、私は私で勝手に動きますから、悪しからず」
ヴァンが一気に捲し立てると、顔を強張らせた中年男性がコクコクと頷く。
よし、言質は取った。と、ヴァンは顔には出さず、内心でほくそ笑む。
村が見えて来た。そろそろ日も暮れようかという時間なのに、人がまばらに立っていた。
子供を探す村人だろうか? と、ヴァンはそのうちの一人を掴まえて話を聞いてみることにする。
「すみませんが、子供が行方不明になったとか?」
「あ、ええ、そうですが……あなたは?」
掴まえたのは、若い男。ゴロツキ未満Aのようなクズ臭漂うような横柄さは全くない。
「子供を探す手伝いに来ました。いなくなったのは、男の子? 女の子?」
「お、男の子です」
「いつ気が付きましたか?」
「昨日の夜だそうです」
フィンとヴァンの二人が村に顔を出したのも、昨日だ。それなら仕方ないと、ヴァンは思う。
「その子の家はどちらですか?」
「こ、こっちです」
身分を名乗らず、矢継ぎ早に質問。そして、行方不明の子供の家へと案内させる。
着いたのは、他の家よりも少し立派な家だった。
行方不明になったのはどうやら、村の重役辺りの子供のようだ。
「失礼します」
と、ヴァンは勝手にドアを開けて家へ入る。
「あ、ちょっと!」
「こちらの息子さんが行方不明になったと伺ったのですが?」
「なんですかあなたはっ!?」
いきなり家へ押し掛けたヴァンに、中年男性が声を上げる。子供が行方不明になって、気が立っているのだろうから、これが当然の反応だとは思う。しかし、
「なんですかは、こちらの台詞ですね。いきなり城へ押し掛けて来て、私を犯人扱い。挙げ句、城の中まで見せろとは・・・それが、この村の総意ですか? まずは、それを確認したいと思いまして」
馬鹿が一人先走って城へ押し掛けたのだとは、十分に考えられる。しかし、その一人の馬鹿を抑え切れなかったのだ。それは、この村の責任だろう。
「し、城? 誰が、そんな・・・」
絶句する中年男性。その顔が蒼白になる。
「ち、違いますっ!? 領主様を疑うなど、断じて違いますっ!?」
キッパリと断言するのは、ヴァンをこの家まで案内してくれた若い男性。
「そうですか。では、今はこのことは不問とすることにしましょう」
「あ、ありがとうございます」
中年男性は、ヴァンへと頭を下げる。
「いえ、後でキチンと追及させて頂くので、安心はしない方が宜しいかと。ひとまずは、私への疑いを晴らす為に、お子さんを探す手伝いをさせて頂きます。拒否権はありません。断られても、私は私で勝手に動きますから、悪しからず」
ヴァンが一気に捲し立てると、顔を強張らせた中年男性がコクコクと頷く。
よし、言質は取った。と、ヴァンは顔には出さず、内心でほくそ笑む。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マーちゃんの深憂
釧路太郎
キャラ文芸
生きているもの死んでいるものに関わらず大なり小なり魔力をその身に秘めているものだが、それを上手に活用することが出来るモノは限られている。生まれつきその能力に長けているものは魔法使いとして活躍する場面が多く得られるのだが、普通の人間にはそのような場面に出会うことも出来ないどころか魔法を普通に使う事すら難しいのだ。
生まれ持った才能がなければ魔法を使う事すら出来ず、努力をして魔法を使えるようになるという事に対して何の意味もない行動であった。むしろ、魔法に関する才能がないのにもかかわらず魔法を使うための努力をすることは自分の可能性を極端に狭めて未来を閉ざすことになる場合が非常に多かった。
しかし、魔法を使うことが出来ない普通の人たちにとって文字通り人生を変えることになる世紀の大発明が今から三年前に誕生したのだ。その発明によって魔力を誰でも苦労なく扱えるようになり、三年経った今現在は日本に登録されている魔法使いの数が四千人からほぼすべての国民へと増加したのだった。
日本人の日本人による日本人のための魔法革命によって世界中で猛威を振るっていた魔物たちは駆逐され、長きにわたって人類を苦しめていた問題から一気に解放されたのである。
日本のみならず世界そのものを変えた彼女の発明は多くの者から支持され、その名誉は永遠に語り継がれるであろう。
設定・用語解説は別に用意してあります。
そちらを見ていただくとより本編を楽しめるとは思います。
「マーちゃんの深憂 設定・用語集」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/863298964/650844803
魔法少女☆優希♡レジイナ♪
蓮實長治
キャラ文芸
九州は阿蘇に住む田中優希は魔法少女である!!
彼女に魔法の力を与えたスーちゃんは中生代から来た獣脚類の妖怪である!!(妖精かも知れないが似たようなモノだ)
田中優希は肉食恐竜「ガジくん」に変身し、人類との共存を目論む悪のレプタリアンと、父親が育てている褐牛(あかうし)を頭からガジガジと貪り食うのだ!!
←えっ??
刮目せよ!! 暴君(T-REX)をも超えし女王(レジイナ)が築く屍山血河に!!
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(GALLERIAは掲載が後になります)
笛智荘の仲間たち
ジャン・幸田
キャラ文芸
田舎から都会に出てきた美優が不動産屋に紹介されてやってきたのは、通称「日本の九竜城」と呼ばれる怪しい雰囲気が漂うアパート笛智荘(ふえちそう)だった。そんな変なアパートに住む住民もまた不思議な人たちばかりだった。おかしな住民による非日常的な日常が今始まる!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
見鬼の女官は烏の妻となる
白鷺雨月
キャラ文芸
皇帝暗殺の罪で投獄された李明鈴。失意の中、処刑を待つ彼女のもとに美貌の宦官があらわれる。
宦官の名は烏次元といった。
濡れ烏の羽のような黒髪を持つ美しき青年は明鈴に我妻となれば牢からだしてやろうと提案する。
死から逃れるため、明鈴は男性としての機能を捨て去った宦官の妻となることを決意する。
龍神様の婚約者、幽世のデパ地下で洋菓子店はじめました
卯月みか
キャラ文芸
両親を交通事故で亡くした月ヶ瀬美桜は、叔父と叔母に引き取られ、召使いのようにこき使われていた。ある日、お金を盗んだという濡れ衣を着せられ、従姉妹と言い争いになり、家を飛び出してしまう。
そんな美桜を救ったのは、幽世からやって来た龍神の翡翠だった。異界へ行ける人間は、人ではない者に嫁ぐ者だけだという翡翠に、美桜はついて行く決心をする。
お菓子作りの腕を見込まれた美桜は、翡翠の元で生活をする代わりに、翡翠が営む万屋で、洋菓子店を開くことになるのだが……。
宵闇町・文字屋奇譚
桜衣いちか
キャラ文芸
【文字、売ります】──古びた半紙が引き寄せるのは、やおよろずの相談事。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
──その出会い、合縁奇縁(あいえんきえん)──
小動物(モフモフ)大好きな女性・秋野千代。
亡くなった祖母の書道教室を営むかたわら、売れっ子漫画家を目指すが、現実は鳴かず飛ばず。
稲荷神社に出かけた矢先。
供え物を盗み食いする狐耳少年+一匹を発見し、追いかけた千代が足を踏み入れたのは──あやかしと獣人の町・宵闇町(よいやみちょう)だった。
元の世界に帰るため。
日々の食い扶持を得るため。
千代と文字屋の凸凹コンビが、黒と紫色の世界を奔走する。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
キャラ原案/△○□×(みわしいば)
Picrewの「少年少女好き?2」で作成
https://picrew.me/share?cd=5lbBpGgS6x
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる