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自分の方こそ、その言動を省みるべきだとは思いませんこと?
しおりを挟むわたくしの言葉に目を丸くする勘違い野郎。
「!」
そして、物凄い目付きで彼女に睨まれました。あらあら、怖いお顔ですこと。今のそのお顔、他の男子生徒達にも見せて差し上げたいくらいだわ。
「それも、高位貴族子息の擦り傷は進んで治すのに、女子生徒の傷は頼んでも治してくれないのだとか」
女性生徒は、侯爵以上の家の生徒でないと傷を治してくれないそうです。それも、高位の貴族令嬢に「傷を治してください。お願いします、は?」と自分にそう言えと強要するのだとか。彼女が治せないような傷でも、そうやって強要するのだと聞きました。結局治せなくて、医師が診てくれるそうです。
そして、『擦り傷程度しか治せないクセに、随分と偉そうなことを言う平民女』と。貴族平民かかわらず、女子生徒達の間では、彼女はかなりイイ性格をしていると、結構有名ですわ。
普段から男子生徒達を侍らせていることもあり、大多数の女子生徒達を敵に回していますものね。普段の行いから買い捲っている、当然の不興だと思いますわ。
知らぬは、彼女に侍っている高位貴族子息だけ……かしら?
はぁ……本当に、評判通りの方のようですね。パッと見、魔力量も大したことはなさそうです。
付いて来たのは自分ですが、がっかりです。
「っ……そ、そんなことありません!」
「か、彼女は、これからなんだ! これから、身体欠損でも治せるくらいの凄い治癒魔術が使えるようになるんだっ!! そうだよなっ!?」
「それは……その、これからがんばります」
「そうですか。ではまず、休憩時間ごとに貴方を誘い出す令息達を、全てお断りすることから始めなくてはいけませんね」
「え? ……そ、それは……その、誘ってくれる皆さんに悪いですし……」
「あら、きっと大丈夫ですわ。貴方の治癒魔術が上達する邪魔をすることは、つまり『国家に逆らうこと』、ですものね? 貴方のことを守ってくださる方々なら、皆さんその辺りのことはキチンと弁えていらっしゃる筈ですわ。だって貴方は、『いずれ国家に貢献できる程の魔術が使えるようになる』、と。皆さん大いに期待して応援しているのですから。そうでしたよね? 違いまして? 公爵令息様」
と、自分に酔った勘違い野郎こと、公爵令息に同意を求める。
「だって、彼女は稀少な光属性の治癒魔術を習得するために、この学園へ特別待遇で通っているのですから。学園を辞めたくても、それは許されないことですし。その彼女の邪魔をする者は、『国家に歯向かうことだ』と、声高に主張していっらっしゃいましたものねぇ? 彼女と過ごしたいからという、下心満載で彼女の貴重な休憩時間を潰すだなんて。そんなことをする方は、自分の方こそ、その言動を省みるべきだとは思いませんこと?」
わたくしの言葉になにも反論できず、
「あ、ああ……そ、そうだな。君の言うことにも、一理ある。その、この件は持ち帰って検討することにしよう。では、彼女と相談するので失礼する」
勘違い野郎は彼女を連れて去った。
それからしばらくの間は、休憩時間ごとに毎回違う男子を侍らせる彼女を見ることはなかったのですけど――――
二週間もしないうちに、彼女はまた男子生徒達と過ごすようになっていましたわ。
ま、わたくしには関係ありませんけど・・・
そして――――
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