【完結】自称ヒロインさんが『逆ハー』を成功させた理由~ちなみにわたくしは、絶対に厭ですが~

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
3 / 6

自分の方こそ、その言動を省みるべきだとは思いませんこと?

しおりを挟む



 わたくしの言葉に目を丸くする勘違い野郎。

「!」

 そして、物凄い目付きで彼女に睨まれました。あらあら、怖いお顔ですこと。今のそのお顔、他の男子生徒達にも見せて差し上げたいくらいだわ。

「それも、高位貴族子息の擦り傷は進んで治すのに、女子生徒の傷は頼んでも治してくれないのだとか」

 女性生徒は、侯爵以上の家の生徒でないと傷を治してくれないそうです。それも、高位の貴族令嬢に「傷を治してください。お願いします、は?」と自分にそう言えと強要するのだとか。彼女が治せないような傷でも、そうやって強要するのだと聞きました。結局治せなくて、医師が診てくれるそうです。

 そして、『擦り傷程度しか治せないクセに、随分と偉そうなことを言う平民女』と。貴族平民かかわらず、女子生徒達の間では、彼女はかなりイイ性格をしていると、結構有名ですわ。

 普段から男子生徒達を侍らせていることもあり、大多数の女子生徒達を敵に回していますものね。普段の行いから買い捲っている、当然の不興だと思いますわ。

 知らぬは、彼女に侍っている高位貴族子息だけ……かしら?

 はぁ……本当に、評判通りの方のようですね。パッと見、魔力量も大したことはなさそうです。

 付いて来たのは自分ですが、がっかりです。

「っ……そ、そんなことありません!」
「か、彼女は、これからなんだ! これから、身体欠損でも治せるくらいの凄い治癒魔術が使えるようになるんだっ!! そうだよなっ!?」
「それは……その、これからがんばります」
「そうですか。ではまず、休憩時間ごとに貴方を誘い出す令息達を、全てお断りすることから始めなくてはいけませんね」
「え? ……そ、それは……その、誘ってくれる皆さんに悪いですし……」
「あら、きっと大丈夫ですわ。貴方の治癒魔術が上達する邪魔をすることは、つまり『国家に逆らうこと』、ですものね? 貴方のことを守ってくださる方々なら、皆さんその辺りのことはキチンと弁えていらっしゃる筈ですわ。だって貴方は、『いずれ国家に貢献できる程の魔術が使えるようになる』、と。皆さん大いに期待して応援しているのですから。そうでしたよね? 違いまして? 公爵令息様」

 と、自分に酔った勘違い野郎こと、公爵令息に同意を求める。

「だって、彼女は稀少な光属性の治癒魔術を習得するために、この学園へ特別待遇で通っているのですから。学園を辞めたくても、それは許されないことですし。その彼女の邪魔をする者は、『国家に歯向かうことだ』と、声高に主張していっらっしゃいましたものねぇ? 彼女と過ごしたいからという、下心満載で彼女の貴重な休憩時間を潰すだなんて。そんなことをする方は、自分の方こそ、その言動を省みるべきだとは思いませんこと?」

 わたくしの言葉になにも反論できず、

「あ、ああ……そ、そうだな。君の言うことにも、一理ある。その、この件は持ち帰って検討することにしよう。では、彼女と相談するので失礼する」

 勘違い野郎は彼女を連れて去った。

 それからしばらくの間は、休憩時間ごとに毎回違う男子を侍らせる彼女を見ることはなかったのですけど――――

 二週間もしないうちに、彼女はまた男子生徒達と過ごすようになっていましたわ。

 ま、わたくしには関係ありませんけど・・・

 そして――――

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

誰も残らなかった物語

悠十
恋愛
 アリシアはこの国の王太子の婚約者である。  しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。  そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。  アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。 「嗚呼、可哀そうに……」  彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。  その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

どうしてか、知っていて?

碧水 遥
恋愛
どうして高位貴族令嬢だけが婚約者となるのか……知っていて?

溺愛王子はフラグクラッシャー~悪役令嬢予定の婚約者を愛する王子様は全てのゲームフラグを破壊する~

朝霧 陽月
恋愛
愛しの婚約者のために、フラグもイベントも全部ぶっ壊します!? 乙女ゲームを知らない攻略対象である王子様の【溺愛系フラグクラッシュストーリー!!】 第二王子である僕エキセルソ・レオ・アムハルの幼い頃からの婚約者、カルア侯爵家ラテーナ・カルアは今日も変わらず美しい。 しかし、そんな愛しの彼女の美しさにどこか陰りがあると思ったら急に、婚約破棄をして欲しいなどといい出して……。 婚約者命の溺愛王子(極悪)と婚約者を守りたい健気系悪役令嬢(やや天然)のお話。 乙女ゲームのシナリオは死にます。 ※ゆるゆる更新を頑張ります。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

まさか、婚約者の心の声が聞こえるなんて……~婚約破棄はしない、絶対に~

紫宛
恋愛
子猫を膝の上に乗せ撫で、気が付いたら婚約者の心の声が聞こえていた……! (殿下は、妹が好きなのかしら?私とは、もうダメなのかしら?こんなに好きですのに……) 「え?」 (殿下、お慕いしておりますから……離れていかないで、お願いですわ) 悲しげな声で訴える声に顔を上げるが、彼女の顔は変わっておらず相変わらずの無表情。 だが、心の声は悲しげ。 神の悪戯か……理由は分からないが、この声を頼りに彼女との関係を修復しよう。 婚約破棄? するわけが無いだろう。 私を愛してくれる大事な女性が、ここにいるのだから。 ※素人作品ですが、皆様の暇潰しになれば幸いです※

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

処理中です...