【完結】彼が愛でるは、龍胆か水仙か……

お母様が亡くなり、お父様が再婚して新しい義母と義妹が出来て――――わたくしはいつしか使用人同然の扱いを受けていました。

それでも懸命に過ごし――――という、よくあるチープな物語みたいな状況に、わたくしはつい数ヶ月前までおりました。

けれど、これまた物語のような展開で、とある高位貴族のご子息とお知り合いになり、あれよあれよという間に、彼がわたくしの状況を、境遇を、待遇を全て変えてしまったのでした。

正義感が強くて、いつもみんなに囲まれて、人気者のあなた。わたくしを助けてくれた、王子様みたいな優しいあなた。彼と婚約できて、幸せになれると信じておりました。

けれど、いつの間にか彼は別の……以前のわたくしと似た境遇の女性と親しくしなっていました。

「……彼女は、以前の君のような境遇にある。彼女のつらさを、君ならわかってあげられる筈だ。だから、そんなことを言わないでくれ。俺は、彼女を助けてあげたいんだ。邪推はやめてくれ。俺は、君に失望したくない」

そう言われ、わたくしは我慢することにしました。

そんなわたくしへ、彼の元婚約者だった女性が問い掛けました。

「ねえ、あなた。彼が愛でるは、龍胆か水仙か……どちらだと思います?」と。
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