3 / 4
お嬢さんの家族には絶対謝らないけど、お嬢さんには謝っとく。ごめんなさい。
しおりを挟むそう言えば、この家の子息には婚約者がいなかった筈。ま、それも道理だがな。
「俺がアンタの奥さんなら、絶対アンタら恨んでるわ。つか、アンタら気付いてないかもだけどさ? もし、アンタらの家に嫁いで、万が一出産のときに命を落としたら……『命懸けで産んだ自分の子供が冷遇される』って。他の家のご婦人達にそう思われてんだよ。だから、お前らに婚約者がいないんじゃないの? 誰が、自分の子供や孫が冷遇されるかもしれない家に、大切な娘嫁がそうと思うよ? ま、大切じゃなくて、政略の駒としてしか娘を思ってないような、そんな家でも、娘を嫁がせるとか無いだろうけどな? 自分の家の血筋が、子や孫が大事に、優遇されるのが前提の政略結婚で、子や孫が蔑ろにされて、排除されるかもしれない、下手すりゃ殺されるかもしれないって判ってんだもんよ。そういう家と縁付きたいなんて、誰も思わないだろ?」
「っ!? わ、わたし、わたしはっ……」
なにやら非常にショックを受けた表情で、滂沱と涙を流して嗚咽するオッサン。ガキ共も、それにつられたように泣き出した。
そして、なぜか周囲のご婦人方や年配男性達から静かに拍手が送られている。
う~ん……五月蠅くて非常に目障りだから注意しに来たんだが。更に騒ぎを大きくした感じ? やっべー。後で親父や母上、兄貴にもどやされるかも。
「控え室へ案内して差し上げろ」
と、使用人へ言い付け・・・
「さて、お嬢さん。お嬢さんは別室に案内で宜しいでしょうか?」
目の仇にされていた少女へ問い掛ける。
「……は、い」
蚊の鳴くような小さい声での返事。
とりあえず、この子には保護が必要だよなー? 母親の実家方の方に、父親に目の仇にされて家で冷遇されてて有名なので、『お孫さん養子に取って、そっちで育てた方がいいですよ』っつって連絡入れとくか。
「ごめんね? 俺も、これは八つ当たりだって判ってんだけどさ? 目の前であんなの見せられて、ちょっと我慢できなくて」
「? 八つ、当たり?」
「そ。俺の親友がさ、お嬢さんと似た立場だったワケ。お嬢さんと違うのはアイツは男で、一人っ子だってとこくらいかな? んで、家というか、ず~っと父親に目の仇にされてさ。ついこの前、とうとうアイツ出家しやがった。周りにな~んも、一言も言わないでさ? いきなり自分で貴族籍抜いて、今は寮制の神学校に入って……母親の冥福を祈ってる。そうやって人生終える気なんだぜ? って、ことが最近あってさ。むしゃくしゃしてたの。お嬢さんの……家族? には、ちょいキツいこと言ったかも。お嬢さんの家族には絶対謝らないけど、お嬢さんには謝っとく。ごめんなさい」
と、頭を下げる。
んで、アホアホ野郎が神学校入ってから、件の父親が自殺して。あの家、お家騒動の真っ最中なんだよなー。継がせるのに適当な奴がいなきゃ、王家が管理することになるだろう。
面倒だって、伯父貴達が嫌がりそう。
「そう、ですか……」
「そうなの」
アイツは人に優しくて、とっても我慢強くて、面倒見が良くて、すっごくいい奴で・・・そして、大馬鹿な奴だ。
アイツは、自分は戸籍上の父親とは赤の他人だと思っていた。いや、もしかしたら、小さい頃から酷い態度を取られ続けて、それがショックで赤の他人だと思い込もうとして……自分でそう思い込んで、父親とは赤の他人だと信じ込んだのかもしれない。
自分が傷付かないように……
そうじゃなきゃアイツは、父親の酷い言動から自分自身を守れなかったのかもしれない。
・・・でもまあ、アイツがガチの天然で、めっちゃ素直過ぎて、父親の言動(目の仇&冷遇に加え、自分の子供じゃない発言)を微塵も疑わなかったってこともあり得るけどさ?
「お嬢さんは、悪いけど暫くは俺の家で保護させてもらうね?」
応援ありがとうございます!
32
お気に入りに追加
73
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる