1 / 4
俺の八つ当たり受けろ? お前らが、その子にやってることと同じだろ。
しおりを挟むうちで開催されているパーティーで、家族に冷遇されている子供を見た。
なんでも、その子が生まれるときに母親が亡くなったそうで。それから、父親と上の兄弟に目の仇にされているのだとか。俺は初めて見たが……有名になる程の、噂をされる程の家族の言動。
奥さんが、母親が亡くなって悲しいとか寂しいとかはわかるけどさ? でも・・・馬っ鹿じゃね? って思うのは、俺が他人だからなんだろうけどさ?
でも、これじゃ亡くなった母親も本当浮かばれないぜ。
俺、こういうの大っ嫌いなんだけど? ちょっと前に、親友が突然神学校に入りやがった。それもこういう、ほぼ同じような理由で、だ。
見てて聞いてて、至極不快だわ。むしゃくしゃする。癇に障る。
というワケで、子供に向かって「人殺しが!」とか、「お前のせいで愛する妻が……」とか云々、周囲の視線も憚らず、大人げなく怒鳴っている見苦しいオッサンと、罵倒されて委縮している子供の間に割って入ることにした。
俺の前で、そんなクソみたいなことしてるそっちが悪い。
罵倒されてる子は親友じゃないし、このオッサンはアイツの父親じゃないのも判ってる。
けど、赦せん。目障りで耳障りだ。
だから――――俺の八つ当たり受けろ? お前らが、その子にやってることと同じだろ。
「あの、五月蠅いんですけど? そういうの、やめてくれません?」
「なんだ君はっ!?」
「主催側の関係者ですけど? 他のパーティー参加者の迷惑になるのですが? そんなにその子が疎ましいなら、とっとと養子に出すなりなんなりすればいいじゃないですか」
それがこの子の為にもなる。
家族として暮らして行けないなら、さっさと離れればいいと思う。だというのに、こういう輩はなぜか、元凶だと信じ込んでいる相手……子供を、不幸な状況下に置いておかないと気が済まないらしい。謎思考過ぎるぜ。
「それは失礼をした。しかし、これは我が家の問題だ。口出ししないで頂こう」
「やー、実際、あなた方は他のパーティーでもやらかしているので、大変見苦しいんですよ」
「っ!?」
現に、主宰側の俺が誰だか判らないのがいい証拠。良識ある人達から遠巻きにされて、まともに社交できてないんじゃね?
「それに、他人の俺が口出しするのもどうかと思うんですが……あなた方の奥さん、そして母親は本当に可哀想ですよね」
「……ええ。コイツが生まれたせいで、妻は若い身空で亡くなってしまいました。本当なら、もっと生きたかったでしょうに」
と、またしても子供へと憎悪の籠る眼差しを向けるオッサン。
「本当ですよね。あなた方がそうやって、その子を目の仇にする度、冷遇する度、理不尽に叱責する度、『キャー、わたしの仇に仕返ししてくれてありがとう! わたしの産んだ子だけど、そんなの関係ないわ! だって、わたしの命を奪った子だものね! もっと冷遇して、もっとつらい目に遭わせて、追い詰めて思い知らせてやって!』って、そういう、自分の子供を傷付けて喜ぶような性格の悪い女だって、死んだ後も家族に、旦那や子供に喧伝されるって、マジ憐れだわー」
あ、やべ。思わずってか、めっちゃ口調崩れた。ま、いっか。どうせ、うちよか爵位低い相手だし。それに、全く以て、微塵も、一切尊敬できねぇし。
「っ!? な、なにを言っているっ!! 妻を侮辱するなっ!!」
おお、めっちゃ顔真っ赤。マジ切れされてるわ。けどさ?
「え~? だって、アンタらがやってんのは、そういうことでしょ? アンタの奥さんは、命懸けで産んだ子を、自分が死んだからって、残されたアンタや他の兄弟達に、『自分の仇を討ってね?』って言うような女だって。自分達でそう貶めてるじゃん。死んだ後まで、そんな『性格の悪い、自分の子供を傷付けて喜ぶような悪女』だって。アンタらの言動で示されて、マジ可哀想。奥さんが自分で頼んだワケじゃなくても、自分達が自主的にその子を虐げてるんだとしても、だ。『奥さんは、母親は、そういうことされて喜ぶような女』だって、アンタ達がそう示してんじゃん。ヤだわー。アンタの奥さん、そんな女だったワケねー? 家族にそう思われて、実際にアンタらにそういう行動取られてんじゃん。死んだ後にそういう汚名着せられてるってことだろ? 死者に鞭打つって、こういうこと言うんだろうなー?」
「っ!!」
なんぞ、めっちゃショックっ!! って顔してるわ。
「アンタらがその子へ掛けた言葉が、行動が、態度が、アンタの奥さんを、お前らの母親を、性格の悪い、自分の子供が虐げられて喜ぶような悪女だって周囲に示してんだよ。アンタらの奥さん、母親は、そんなことを喜ぶような女なの? もっとやれって、そんなこと言うような女なの?」
「ち、違うっ!? 妻は、妻は決してそんな非道な女じゃないっ!?」
216
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
お姉様から婚約者を奪い取ってみたかったの♪そう言って妹は笑っているけれど笑っていられるのも今のうちです
山葵
恋愛
お父様から執務室に呼ばれた。
「ミシェル…ビルダー侯爵家からご子息の婚約者をミシェルからリシェルに換えたいと言ってきた」
「まぁそれは本当ですか?」
「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」
「畏まりました」
部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。
「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。スタイン様と結婚できなくて残念ね♪」
残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!
(完)そこの妊婦は誰ですか?
青空一夏
恋愛
私と夫は恋愛結婚。ラブラブなはずだった生活は3年目で壊れ始めた。
「イーサ伯爵夫人とし全く役立たずだよね? 子供ができないのはなぜなんだ! 爵位を継ぐ子供を産むことこそが女の役目なのに!」
今まで子供は例え産まれなくても、この愛にはなんの支障もない、と言っていた夫が豹変してきた。月の半分を領地の屋敷で過ごすようになった夫は、感謝祭に領地の屋敷に来るなと言う。感謝祭は親戚が集まり一族で祝いご馳走を食べる大事な行事とされているのに。
来るなと言われたものの私は王都の屋敷から領地に戻ってみた。・・・・・・そこで見たものは・・・・・・お腹の大きな妊婦だった!
これって・・・・・・
※人によっては気分を害する表現がでてきます。不快に感じられましたら深くお詫びいたします。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
伯爵様、わたくし2番目で結構です
cyaru
恋愛
ペル伯爵家のアリアには面倒な家族がいる。
何においても妹のミリアを一番に考える毒親の両親。
ミリアに婚約者のキールを寝取られて一旦は婚約が解消になり、ミリアがキールの婚約者になった。
しかし、ミリアの策略でキールと再婚約する事になってしまった。
毒のある家族を捨てる足掛かりになればいいとアリアは再婚約を承諾する。
ミリアの本心を知って、怒るキール。自身の招いた失敗だからアリアとの関係を再構築するために尽力しろと友人に諭されるが何処に行っても嘲笑され、何をやっても上手く行かず地に落ちた評判と信用はなかなか元に戻らない。
そして結婚となったアリアとキール。初夜キールは娼婦を呼び寄せアリアに告げた。
「お前の家族のせいで俺の評判はがた落ちだ!正妻になれたなどと思うなよ!」
「承知致しました。そのお言葉、努々お忘れなきよう」
アリアは「ごゆっくり」と微笑むと部屋を出て行った。
翌朝、朝食の場にアリアの姿がない事に驚いたキール。探し回れば使用人の仮眠室で寛いでいた。
「夫人でもないのに夫人の部屋は使えませんし、屋敷にいる意味がないので」
そう言うとトランク1つで出て行こうとするアリアをキールは引き留めた。
その時はこれ以上自分の評判を落としたくない。それだけだったキール。
家庭内別居となった2人だが、アリアは昼間ほとんど屋敷にいない事に「不貞をしているのでは?」とキールは疑い、アリアのあとをつけた。
※アリアですがミリア以上に腹黒いと感じるかも知れません。アリアのLOVE極薄。
※キールですが改心してからはアリアへの愛が急上昇します。暑苦しい愛ですけども初日はミリアへの愛が溢れています(えっ?)
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。舞台は異世界の創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる