虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 ぼんやりとそんな光景を眺めていると・・・

「次は、セディックさん達の番ですか」
「え?」

 笑顔でロイ君が言った。

「僕……達、の番? なにが?」

 言われたことの意味がわからなくて、きょとんと首を傾げる。

「? 赤ちゃんのことですが」
「姉さまとセディー兄さまの赤ちゃんですかっ?」

 リヒャルト君の、期待に満ちた声に、なぜかサッと血が下がるような気がした。

「・・・」
「ロイお兄様、最近ずっとうちにいるのに、よくそんなことが言えるのですね? 全く」

 やれやれというか、若干冷たい視線をチクリとロイ君へ向けるルリアさん。

「あ、いや、それは……」
「ネイトお兄様も帰って来なくて、ロイお兄様もずっとうちにいて。実はセディーお兄様もお疲れ気味なのです」
「セディー兄さま、おつかれですか?」
「そうですね。今日はあまり顔色が良くありませんね。そろそろ失礼した方がいいかもしれません」

 心配そうに見上げるリヒャルト君と、気遣わしげに僕を見やるケイトさん。

「その……無神経にすみません、セディックさん。俺、今日からハウウェル侯爵家に戻って手伝いします。だから、セディックさんも少し休んでください」

 バツが悪そうに謝るロイ君に、

「あ、それは全然大丈夫」

 首を振って断る。

「え?」
「というか、ロイ君に任せる用の書類とかを仕分けし直す方が面倒だし。それに、今日急に戻るって言われても、うちの使用人達が慌てるから。いきなり戻って来られる方が迷惑かな?」
「そうですね。お隣の国から来たロイお兄様がネイトお兄様の代わりを完璧にこなすのは、元々無理なのです。まずはお勉強用の書類の、仕分けや準備が必要なのです。なので、急な予定変更をする方が、セディーお兄様の時間を余計に食うのです」
「うっ……」
「というワケで、うちに戻るなら最低でも、一週間前くらいには教えてくれないと困るかな?」
「で、では、一週間後にそちらへ……」
「あのね、ロイ君。こういうことは、レイラさんと相談して決めるべきでしょう。一人で勝手に決めるのもどうかと思いますよ? ね、レイラさん」
「わたくしは、乳母や侍女達、ルリアもお母様もいますから大丈夫ですわ。ロイ様がうちにいることで、セディック様とケイト様のご負担になっているのでしたら、ロイ様はハウウェル侯爵家に戻った方が宜しいかと思います」
「レイラ……」
「ああ、いや。大丈夫。ロイ君がいなくても、僕は全く困ってないから」
「ですが、現に顔色が……」
「ロイ君、僕はね・・・ネイトに会いたい! というか、ロイ君の手伝いなんて元々微々たるものだし。そんなことより、もう二ヶ月近くもネイトに会ってなくて、ネイトが不足してるんだよ!」
「あ、深刻だったのはブラコンそっちの方でしたか・・・なんか、すんません。つか、ネイサンが不足って? アイツからなんか吸ってんですか? 生気とか?」
「そんなワケないでしょ。はぁ……もういっそのこと、数日くらいお祖父様に仕事を全部任せて、ネイトに会いに行こうかなぁ」
「やっ、それはそれで問題な気がしますから! それじゃあ、父上に連絡して、どうにかネイサンをこっちに戻すように頼んでみますからっ、それまでなんとか我慢してください!」

 なんてやり取りをして、うちに帰った。

「・・・大丈夫ですか? セディック様」

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