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しおりを挟む「ネイサンは、ロイよりも仕事に慣れているようだな。書類を捌くのが早い」
執務室で、ロイの代わりにトルナードさんを手伝っているときに言われた。
「まぁ、成人してから、セディーとお祖父様に鍛えられましたからね。ロイよりは少し慣れている、と言ったところでしょうか。書類仕事は慣れですからね」
書類は、読み方がわからないと処理に時間が掛かる。多分、ロイも読み方に慣れて来れば、もっと早くできるようになるだろう。
「成人してから?」
「ええ。わたしは、ですけどね」
「ネイサンは? ということは、セディック君は……」
「セディーは中等部の頃には、既に後継の教育を受けていたと思いますよ」
「・・・エドガーは一体、なにをしていたんだ」
はぁ~、と深い溜め息が落ちる。
「まぁ、言っても仕方ないことではあるが。セディック君とネイサンは、本当によく頑張ったな」
言いながら立ち上がったトルナードさんに、わしゃわしゃと頭が撫でられた。
「えっと、ありがとうございます?」
ちょっと、照れくさいかも……
そんな感じで、数日後。
速達で手紙が届いた。
うちからの手紙で、レイラさんを送りに行くロイの代わりに、わたしがクロシェン家に滞在することについての返事。
お祖父様とおばあ様からの了承の旨。ついでに、お祝いとしてレイラさんへベビー用品を贈っておいたと書かれていました。
後で、トルナードさんとミモザさんへ伝えておこう。
セディーからは・・・『寂しいけど、おめでたいことだから我慢する』という感じの手紙だった。そして、『ついでだから、ネイトの代わりにロイ君を少し鍛えてあげるね』と書かれていた。
ケイトさんからは、『セディック様のことはお任せください。スピカ様とごゆっくりお過ごしください』とのこと。
ロイを鍛えるって・・・
まぁ、うん。ケイトさんがいるから、大丈夫だろう! 多分、きっと・・・
ちょっとくらいは手加減してあげてね? と、返事を出しておく。
それから、更に一週間後。
ロイから、手紙が届いた。『お前の兄貴、めっちゃスパルタなんだけど! 大伯父様よりも厳しい! そして、俺にだけ当たりが強い気がする! 毎日毎日計算ばっかさせられて頭パンクしそうなんだが!』という泣き言? が書かれていた。
どうやら、無事にレイラさんを送り届けた後、ハウウェル侯爵家に滞在しているようだ。
ちなみに、ライアンさんとケイトさんはロイに優しくしてくれるらしい。あと、リヒャルト君に励まされているのだとか。
リヒャルト君の可愛さには癒されるからなぁ。「がんばってください、ロイ兄さまっ」と、応援している姿が目に浮かぶ。あと、ケイトさんの慈愛の眼差しも。
まぁ、ロイにだけ当たりが強いかどうかは兎も角として。セディーって、自分がかなりできる子だっていう自覚がちょっと薄いからなぁ。あれだけできる子なのに、ちょっと不思議だ。
それで、セディーの中にある、『これくらいはできて当然』とさらっと出される合格ラインの基準が、普通の子には難易度が高かったりするんだよねぇ。
で、その最低限と定められている合格ラインに達するまでは、セディーの方が妥協しないし。できるようになるまで根気強く付き合ってくれるから、結果としてガンガン詰め込まれる。
勉強に関してのセディーは、なにげにスパルタだと思う。
まぁ、お陰で成績とかは普通に上がるし。身に付けた知識は自分にプラスになる。
知っておくこと、それ自体が大事なのだとセディーも言っていた。
それに、そもそもセディーは興味が無い人には全く構わない人だし。スパルタなのは、ロイへの期待の表れなのかもしれない。
だから・・・『がんばれ』と返事を返しておいた。きっと、ロイが帰って来る頃には、少しだけスキルアップしていることだろう。
すると、『この薄情者め!』という返事が来た。わたしのなにが薄情者なんだろうか? 解せない。
こうして平日はトルナードさんの仕事を手伝いつつ、スピカの帰って来る週末にはちょこちょことデートをして――――
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