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「ああ、そうだ。ネイサン。お前、なんか言うことある?」
「? わたし? えっと、なにを?」
「あ? そりゃ勿論、セディックさんに。お前、うちでしばらく俺の代わりすんだろ? セディックさんのあのブラコンっ振りが変わってねぇなら、お前が帰らないと心配して、こっち来そうだし」
「ああ、そう言えばそうだね」

 セディーなら、本当に来ちゃうかもしれない。

「一応、後で手紙で事情を説明しようとは思ってたけど」
「まぁ、確かに。手紙のが早いだろうけど、どうせ向こう行くんだからな。伝言くらいは伝えてやってもいい」
「ん~……『ロイの心配性度合でわたしの滞在期間が伸びると思うけど、あんまりロイにキツく当たらないであげてね?』って感じかな」
「お前……それを俺の口から言わせるとか、マジでイイ性格してるよな」
「ふふっ、言い難いなら、エリオットから伝えてもらうといいんじゃない?」

 じとっとした視線に、ニヤリと返す。

「任せてください!」

 エリオットがふふんと胸を張ると、

「やっぱり、お二人共いらしていたんですのね」

 クスクスと笑うレイラさんが宿から出て来た。

「レイラお姉様! お元気ですか?」
「ふふっ、一日二日で体調はそうそう変わりませんわ。でも、ご心配ありがとうございます」
「そうなんですか?」
「ええ。ネイサン様」
「はい」
「暫くご迷惑をお掛けしますが、ロイ様の代わりを宜しくお願い致します」
「ええ。お任せください」
「セディック様とケイト様の方には、わたくしの方からも事情を説明致しますのでご安心を」
「はい。お願いします」
「それと、あちらのカフェはケーキが美味しかったですわ。スピカ様と食べて行かれては如何でしょうか?」
「ふふっ、ありがとうございます」
「では、行きますわよ。ロイ様、エリオット」
「ハッ! い、行ってらっしゃいレイラお姉様!」
「ええ、行って来ますわ」

 と、レイラさん一行が馬車に乗って次の町へ向った。

「それじゃあ、スピカ。レイラさんお勧めのケーキ、食べに行こうか?」
「はい!」

 レイラさんお勧めのカフェで軽食やケーキを数種類頼んで二人でシェアして食べて、ゆっくりと町を散策。

 最初は乗馬服姿なのを気にしていたスピカだけど、途中からは気にしないで手を繋いで歩いた。

 雑貨屋さんを見て回ったり、小物やアクセサリーを買ったりして・・・

 なんか、普通のデートっぽいことをしている! と、ちょっと感激してしまったのは内緒だ。

 いつもは誰かしらが側にいて、グループデートみたいな感じで。二人だけで出掛けるなんてことはなかったからなぁ。セディーやケイトさん、レイラさんがいると、みんなスピカを可愛がっているから、わたしがなにかを買ってあげるより前に、誰かがなにかしらをスピカに買ってあげていたし。

 日が傾いて来る前に、

「それじゃあ、そろそろ帰ろうか?」

 切り上げようと告げると、

「……もう、帰っちゃうんですか? せっかく、ねえ様と二人きりなのに……」

 名残惜しそうな表情をするスピカが可愛い♪

「ロイが帰って来る前に、また二人でデートしようね?」
「はい!」

 と、約束をしてクロシェン家に帰った。

。.:*・゜✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・✽


 宣伝です。(*>∀<*)

 4話完結の短篇、『淘汰案件。~薬屋さんは、冤罪だけど真っ黒です~』を投稿しました。

 冒険者が酒場死亡。その原因は、アルコールと飲み合わせの悪い粗悪なポーションだった。

 その粗悪なポーションを製作したとある薬屋が容疑者として挙がったので、任意で事情聴取をすると、薬屋は嬉しそうに笑いながら冤罪だと主張した。

 という内容のブラックな話です。

 興味のある方、読んでやってもいいよ。という方は、月白ヤトヒコのリンクから飛べるので、覗いてやってください。(*´∇`*)

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