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しおりを挟むロイの荷物を届けに行くという名目で、スピカとデート。
のんびり馬車で行くのもいいかと思ったんだけど・・・
「ロイも困っているだろうからな! 急いで届けてやるといい」
朝食の席でトルナードさんがそう主張して、騎乗でロイに荷物を届けることになった。
馬は二頭。別々で乗りなさいとのお達し。
「いいか、ネイサン。ロイがいないからと調子に乗らないように!」
なんて、釘まで刺されてしまった。
「スピカは、呉々も落馬しないように気を付けるんだぞ?」
「はいはい、父様ったら心配性なんだからもう」
「ネイサンも、スピカとはぐれないように気を付けなさい。二人共、知らない道に出たら、知ってる道まで戻るんだぞ? 天気が悪くなりそうなら、絶対に無理はするな」
「はい」
確かに。トルナードさんは少し心配性かもしれない。わたしは、結構旅慣れているんだけどな? でも、スピカのことだけでなくてわたしのことも心配してくれているのは、ちょっと擽ったい気がする。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
と、心配そうなトルナードさんと若干呆れ顔のミモザさんに見送られて出発。
穏やかな天候の中、スピカと二人でクロシェン領を進む。
「いいお天気ですね、ねえ様」
「そうだねぇ」
騎乗しての乗馬服姿だと、街デートには向かないけど。まぁ、こういうのも悪くない。
こっちにはスピカに会う為に来ているけど。なにげに、クロシェン家の中でスピカと二人切りになるのは難しいんだよね。別に、見られて困るようなことはまだしないつもりだけど。
でも、偶には、こうして二人でのんびりするのもいいなぁ。
なんて思っていたら、あっという間にレイラさんとロイ達の宿泊予定の町に到着。
宿泊しているであろう宿に向かうと・・・
「ハウウェル先輩、いらっしゃいませ!」
「ネイサン! 昨日お前に蹴られたとこがまだ痛むんだぞ! どうしてくれんだこの野郎!」
宿の手前でにこにこなエリオットと、怒鳴り声を上げるロイに出迎えられた。
「湿布、買って来ようか?」
「そういうことじゃねぇだろっ!?」
「そう。じゃあ、荷物。旅券と、着替えとかその他諸々」
「チッ・・・まぁ、感謝しといてやる」
舌打ちをしつつも、差し出した荷物を受け取るロイ。
「もう、兄様態度悪いですよっ? せっかくねえ様が荷物持って来たのに」
「あ? 元はと言えば、コイツが俺を馬車に蹴り込んだのが原因だろうが?」
「いや、あれだけ不安そうに心配するなら、自分で送り届けた方がいいでしょ」
「そうですね~。レイラちゃんも、ロイ様が一緒にいて嬉しそうですし」
「・・・」
にこにこと言うエリオットに、ロイの文句が止まる。
なんだかんだ、ロイは心配性だ。こういうところは、トルナードさんに似ているかもしれない。
「ところで、レイラお姉様は? 昨日は大丈夫でしたか?」
「ああ。元気みたいだぞ?」
「朝ごはんを食べて、今は少し休憩してますね~」
「休憩っつーか、お前ら待ってたんだよ」
「そうなんだ?」
「おう、レイラ自身はいつでも出発できるってよ」
「一応、レイラちゃんも妊婦さんですからね。自分でもわかっていない不調や体調の変化があるかもですから、その辺りには注意しなきゃですけどね!」
「エリオット、詳しいな」
「レイラちゃんをお迎えに来る前に、姉様達に聞いて来ました!」
「ああ……そう言やお前、姉が三人いたんだったな」
「はい! 姉様達、みんな子供いますからね~」
「そっか……なら、やっぱフィールズ家の方が安心か」
どうやら、エリオットは以前よりも姉君達との交流が増えたようだ。
「ああ、そうだ。ネイサン。お前、なんか言うことある?」
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