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しおりを挟む「ええっ!? 母様、妊娠中にそんなことしてたんですかっ!?」
「もう、そんなワケないでしょ? 猟銃はさすがに、当時お腹にいたスピカに悪いと思って、ボウガンでの狩りにしたわ」
「って、わたしがお腹にいた頃のお話ですかっ!?」
驚くわたしを、
「・・・スピカ」
真剣なペリドットが見詰め……
「無事に生まれて来てくれて、本当にありがとう」
ぎゅっと手を握られて、ねえ様にお礼をされちゃいましたよっ?
「え? あ、はい。えっと、ねえ様も、生まれて来てくれてありがとうございます♪」
お返し? に、わたしもねえ様の手を握ってお礼を言うと、
「! ありがとう、スピカ……」
驚いたように見開いたペリドットが少し潤んだように見えて……
「愛してる」
ふわりと一瞬でとろけるような笑顔に変わりました。
「っ!?」
くっ! ねえ様の笑顔が眩し過ぎて直視できないっ!?
「こらっ、ネイサン! こんなところでスピカを口説くなっ!?」
「もう、ホントあなたって野暮ね。こういうときは静かに見守るものよ」
「いーや、ここはもっとハッキリと言っておくべきだ! 目付け役のロイがいないからと言って、必要以上にスピカとイチャ付いたり、羽目を外すことは絶対に許さんからなネイサン!」
「な、なに変なこと言ってんですかっ!? 父様のバカっ!?!?」
「す、スピカ、父様はスピカのことを心配してだな」
「もう父様なんか知らないっ!? 行こう、ねえ様!」
「待ってくれスピカ~っ!?」
と、情けない声を出す父様を放って、ねえ様と一緒に食堂を出た。
「その、父様がごめんなさい。ねえ様」
「ふふっ、トルナードさんはスピカのことがとっても大事なんだよ」
クスクスと柔らかく微笑むねえ様は・・・なんて心が広いんでしょう! もうちょっと父様に怒ってもいいと思いますよっ?
なんというか、大人の余裕みたいなものを感じますね!
そして、相対的に、自分の子供っぽさにしょんぼりしちゃうというか・・・
「スピカは、どこか行きたいところはある?」
「え?」
「デート、してくれるんでしょ? わたしと」
「は、はい……」
「それじゃあ、明日までに行きたいところを考えておいてね? 多分、明日はロイに旅券やら荷物を届けに行くと思うから」
「あ、そうですね。兄様に」
「うん。ロイに届けに行くときと、帰りは多分二人切りだから。途中で少しくらい寄り道してもいいと思うんだよね。馬車でのんびり向かうのもいいし、遠乗りでピクニックがてらに行くのもいいよねぇ。スピカはどうしたい?」
「か、考えておきますっ」
「それじゃあ、明日は早起きしなきゃいけないから、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
「大好きだよ」
優しいペリドットがわたしを見下ろし、ちゅっと額に唇が落とされて離れて行きました。
「わ、わたしも、大好きです!」
「うん、ありがとう」
と、ねえ様と別れたのですが・・・心臓がすっごくドキドキしています。
顔も熱くて、多分真っ赤だと思います。
ぁぅ~……これから、眠れるかな?
。.:*・゜✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・゜ ✽
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