虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 レイラお姉様におめでたを告げられてから――――

 うちの中では、レイラお姉様と兄様の攻防? が、繰り広げられるようになりました。

 あるときは、運動をしようと乗馬服姿で厩舎へ向かおうとしたレイラお姉様を止めて説得……

「危ないだろうが! 落馬したらどうするんだっ!?」

 というか、レイラお姉様を抱き上げて連行。

 またあるときは、

「ダンスがしたい気分ですわ! 付き合ってくださいな、スピカ様♪」

 と、クイックステップを踊ろうとしたレイラお姉様をどうにか止めて、その間に兄様が呼んで来てレイラお姉様を連行。

「クイックステップはマジやめろっ!? 妊婦が跳んだり跳ねたりするなっ!?」

 他にも、

「ヒールは履くな。これにしとけ」

 と、ぺたんこ靴を勧める兄様に、

「可愛くない靴は履きたくありませんわ」

 という攻防。結局、可愛いぺたんこな靴を二人で買いに行くということで落ち着きました。

 ヒールを履いていないレイラお姉様は、わたしよりも小さくて……可愛いです♪

「お願いだから、少しはうちの中で大人しくしてくれ!」
「はぁ……ロイ様は過保護ではありませんかしら? 全く、仕方ありませんわね」

 血相を変えてレイラお姉様を叱る兄様。叱られながらも、どこか嬉しそうな顔のレイラお姉様。

「では、大人しく……家の中を散歩致しますわ!」

 と、今度は家の中をうろうろし始めたレイラお姉様に、

「階段の上り下りはするな! 歩くなら一階部分だけにしろ!」

 なんて兄様が慌てて飛んで行き、レイラお姉様に階段禁止を言い渡して、部屋を一階に移させていました。

「まさか、アホスピカよりも目が離せねぇ奴がいるとは……」

 疲れた様子で溜め息を吐く、なにげに失礼な兄様に、

「あら、お疲れですか? 根の詰め過ぎは宜しくありませんわよ? ロイ様」

 どこ吹く風でにこにこ顔のレイラお姉様。

 そんなレイラお姉様の少し危なっかしい感じに、

「頼む、レイラを見張っててくれ」

 兄様がうちのみんなに頼んで回っていました。

「なぁ、ネイサンからも言ってくれないか?」
「? なにを?」
「レイラに、もう少し大人しくするようにって」
「ロイ、レイラ嬢が急に突拍子もない言動を取ることを承知で結婚したんじゃなかったの?」
「あそこまで目が離せねぇとは思わなかったんだよ! あと、レイラは俺の嫁だから、もう令嬢じゃない」
「ぁ~、はいはい。レイラさんをレイラ嬢って呼ぶの、癖になってるんだよね。まぁ、レイラさんは案外素直だから、危ないことはしないでほしいって言えば、ちゃんとわかってくれると思うよ」

 なんて、ねえ様にもお話をしていました。

 それから、少しふっくらしたレイラお姉様が安定期に入るまでに、なんだか兄様の方がちょっぴり窶れたような気がして・・・?

 そして――――

 レイラお姉様の体調が良くて天気も良い日。

「レイラちゃん、迎えに来たよ!」

 と、レイラお姉様が里帰りするためのお迎えがやって来ました。

「あら、久し振りね、エリオット」
「レイラちゃんがお母様になるなんて……レイラちゃんも大人になったんだね~」

 うんうんと嬉しそうに頷くエリオットお兄様。

 ちなみに、レイラお姉様の妹さんのルリア様の婚約者様。いずれは義理の……弟になるのですが、エリオットお兄様の方がわたしより年上なので、お兄様と呼ぶようになりました。

「おめでとう、レイラちゃん」
「ふふっ、ありがとうエリオット」

 イトコ同士の再会の挨拶を、なぜか不機嫌そうに見ていた兄様が、

「エリオット。お前、少しレイラに馴れ馴れしいんじゃないか? レイラはもう人妻だぞ?」
「あ、ロイ様お久し振りです!」
「馴れ馴れしいもなにも、わたくしとエリオットは姉妹……じゃなくて、姉弟同然に育ったんですもの。今更ですわ」
「そ、そうか。姉妹……」

 レイラお姉様の姉妹、という言葉で、兄様の目が不憫そうにエリオットお兄様を見下ろしました。

「ロイ、君ってなにげに嫉妬深いんだね」
「は? 普通だろ、これくらいは」
「あら、ケイト様がリヒャルト君やネイサン様とハグやダンスをしていても、セディック様はやきもちなんか全く妬きませんわよ?」
「セディックさんのあのブラコンは、全然一般的じゃない」
「そうなのかしら?」
「そうなんだよ」

 なんて話しているうちに、レイラお姉様の荷物の運び込みが終了。

「それじゃあ、行こうか? レイラちゃん」
「ええ」
「ちょっと待ったっ!?」

 馬車に乗ろうとしたレイラお姉様に、エリオットお兄様が手を貸そうとしたら、兄様がいきなり待ったを掛けました。

「俺が乗せる」
「あら、まあ!」

 兄様は不機嫌そうな顔で、ひょいとレイラお姉様を抱き上げて、そのまま馬車に乗せました。

「ふぇ~、ラブラブなんですねっ♪」

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