虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 二日程掛かってアホ共と怪しい荷物を仕分けたり、送り返したりが終わってうちに戻ると――――

「わたし達の結婚式も済みましたし、次はネイサン様とスピカ様の番ですねっ♪」

 と、嬉しそうにケイトさんが言った言葉で・・・

「ふむ・・・そうだな。スピカさんは、どのような結婚式をしたいと思っているのだ? 来年には、高等部を卒業するのだろう? スピカさんの希望に添った式にしようと思うので、会場を押さえる為にも今のうち希望を聞かせてはくれないだろうか?」

 お祖父様がにこやかに問い掛けたそうです。

「え? け、結婚式、ですか……」

 真っ赤になったスピカを見て、

「おじ様。式場は、うちの方で決めようと思いますので大丈夫です」

 トルナードさんが作り笑いを浮かべながら返したそうで・・・

 なんかこう、あれだ。

 紛糾しています。

 スピカとわたしの結婚式をどこで挙げるかで、お祖父様とセディーは是非こちらでと言い、トルナードさんはうちの国で、と。

「すみません。ネイサン様、スピカ様。わたしの不用意な言葉で・・・」

 落ち込んだように謝るケイトさん。

「いえ、いずれこうなるとは思っていたので、ケイトさんのせいではありませんよ」
「そ、そうですよケイトお姉様」

 と、その横では――――

「トルナード! 貴様、老い先短い年寄りの楽しみを奪う気か!」
「はあっ!? おじ様っ、あなたあと二、三十年は死なんとか豪語して笑っていたじゃないですか! 都合の悪いときだけ年寄扱いを求めないでください! わたしは、大事な娘の結婚式を手許で挙げさせたいだけです!」
「僕だって、大事で可愛い弟の結婚式をうちで挙げさせたいですよ!」
「おじ様もセディック君も、いい加減孫離れ弟離れしたらどうです?」
「貴様こそ、いい加減子離れしたらどうなんだ!」

 と、大の大人が言い合っています。

「スピカとネイサンはどうしたいっ!?」

「「ネイトとスピカさんはどうしたいっ!?」」

 異口同音の三人に、

「え? あ、えっと、その・・・」

 たじろぐスピカを抱き寄せる。

「大の大人が三人も、一斉に詰め寄らないでください。スピカが困っているじゃないですか。離れてください」
「あ、その、ごめんね? スピカちゃんを怖がらせるつもりはなかったんです」
「う、うむ。すまないな」
「す、スピカ? 父様もスピカを怖がらせるつもりはなくて、だな……?」

 一転、今度はおろおろと謝る三人。

「いや、しれっとスピカを抱き寄せるんじゃないネイサンっ!?」
「父様っ!?」
「あらあら、孫バカと弟バカと親バカも大変ねぇ」

 クスクスと笑うおばあ様。

「ネヴィラ! ネヴィラからも言ってやれ! うちはセディーも結婚したところだし、そろそろ爵位も譲るからな! そのときにネイトにも子爵位をやる予定だ! これならスピカさんも安泰だろう」

 ふはははと高笑うお祖父様と満足そうに頷くセディーに、

「っ!?」

 悔しげな顔をしたトルナードさんが、

「そ、そういうことならうちにも余っている子爵位をネイサンにやろうじゃないですか! いいよな、ロイ!」

 ロイへ確認する。頷け、という目力がなんか凄いけど・・・

「まぁ、別にいいですけど……」

 迷惑そうな顔で頷くロイ。

「なんだとっ!?」
「よかったわねぇ、ネイト」
「いや、いいんですかね? これ……」
「いいんじゃないかしら?」
「というか、爵位をあげるならわたしじゃなくてスピカの方がいいんじゃないですか?」
「あら、それは駄目よ? ネイサン君」
「え? ミモザさん?」
「ネイサン君も、もう気付いていると思うけど、スピカは……」

 ミモザさんは沈痛な表情で、

「アホの子なんですもの。爵位を持たせるのは難しいわ」

 首を横に振った。残念なものを見るような視線で……

「か、母様酷いっ!?」

__________


 すみません。短編を書き上げた後、ちょっとダウンしてました。(´ε`;)ゞ

 『婚約者が庇護欲をそそる可愛らしい悪女に誑かされて・・・ませんでしたわっ!?』という四話完結の短編です。

 婚約者が、「病気の母がいて……」と言って困窮している、庇護欲をそそる可愛らしい後輩女子に侍っているので、彼女が悪女であることを調べることにしたお嬢様の、調査報告&悪女観察日記っぽい話です。ある意味、どんでん返しな感じです。(*`艸´)

 そして、ホラーミステリー大賞に応募している、

 『わたしの娘を返してっ!』というホラー短編。

 こっちは数年前に書いたのを手直しして投稿。

 病弱な娘が生まれて、その娘を育てるのに育児ノイローゼになった妻と離縁したが、妻の日記を読んで……という感じのホラーとなっています。

 読んでやってもいいよ? という方、興味がある方は、月白ヤトヒコの作品リンクから飛べるので、覗いてやってください。(*ノω・*)テヘ

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