652 / 673
559
しおりを挟む二日程掛かってアホ共と怪しい荷物を仕分けたり、送り返したりが終わってうちに戻ると――――
「わたし達の結婚式も済みましたし、次はネイサン様とスピカ様の番ですねっ♪」
と、嬉しそうにケイトさんが言った言葉で・・・
「ふむ・・・そうだな。スピカさんは、どのような結婚式をしたいと思っているのだ? 来年には、高等部を卒業するのだろう? スピカさんの希望に添った式にしようと思うので、会場を押さえる為にも今のうち希望を聞かせてはくれないだろうか?」
お祖父様がにこやかに問い掛けたそうです。
「え? け、結婚式、ですか……」
真っ赤になったスピカを見て、
「おじ様。式場は、うちの方で決めようと思いますので大丈夫です」
トルナードさんが作り笑いを浮かべながら返したそうで・・・
なんかこう、あれだ。
紛糾しています。
スピカとわたしの結婚式をどこで挙げるかで、お祖父様とセディーは是非こちらでと言い、トルナードさんはうちの国で、と。
「すみません。ネイサン様、スピカ様。わたしの不用意な言葉で・・・」
落ち込んだように謝るケイトさん。
「いえ、いずれこうなるとは思っていたので、ケイトさんのせいではありませんよ」
「そ、そうですよケイトお姉様」
と、その横では――――
「トルナード! 貴様、老い先短い年寄りの楽しみを奪う気か!」
「はあっ!? おじ様っ、あなたあと二、三十年は死なんとか豪語して笑っていたじゃないですか! 都合の悪いときだけ年寄扱いを求めないでください! わたしは、大事な娘の結婚式を手許で挙げさせたいだけです!」
「僕だって、大事で可愛い弟の結婚式をうちで挙げさせたいですよ!」
「おじ様もセディック君も、いい加減孫離れ弟離れしたらどうです?」
「貴様こそ、いい加減子離れしたらどうなんだ!」
と、大の大人が言い合っています。
「スピカとネイサンはどうしたいっ!?」
「「ネイトとスピカさんはどうしたいっ!?」」
異口同音の三人に、
「え? あ、えっと、その・・・」
たじろぐスピカを抱き寄せる。
「大の大人が三人も、一斉に詰め寄らないでください。スピカが困っているじゃないですか。離れてください」
「あ、その、ごめんね? スピカちゃんを怖がらせるつもりはなかったんです」
「う、うむ。すまないな」
「す、スピカ? 父様もスピカを怖がらせるつもりはなくて、だな……?」
一転、今度はおろおろと謝る三人。
「いや、しれっとスピカを抱き寄せるんじゃないネイサンっ!?」
「父様っ!?」
「あらあら、孫バカと弟バカと親バカも大変ねぇ」
クスクスと笑うおばあ様。
「ネヴィラ! ネヴィラからも言ってやれ! うちはセディーも結婚したところだし、そろそろ爵位も譲るからな! そのときにネイトにも子爵位をやる予定だ! これならスピカさんも安泰だろう」
ふはははと高笑うお祖父様と満足そうに頷くセディーに、
「っ!?」
悔しげな顔をしたトルナードさんが、
「そ、そういうことならうちにも余っている子爵位をネイサンにやろうじゃないですか! いいよな、ロイ!」
ロイへ確認する。頷け、という目力がなんか凄いけど・・・
「まぁ、別にいいですけど……」
迷惑そうな顔で頷くロイ。
「なんだとっ!?」
「よかったわねぇ、ネイト」
「いや、いいんですかね? これ……」
「いいんじゃないかしら?」
「というか、爵位をあげるならわたしじゃなくてスピカの方がいいんじゃないですか?」
「あら、それは駄目よ? ネイサン君」
「え? ミモザさん?」
「ネイサン君も、もう気付いていると思うけど、スピカは……」
ミモザさんは沈痛な表情で、
「アホの子なんですもの。爵位を持たせるのは難しいわ」
首を横に振った。残念なものを見るような視線で……
「か、母様酷いっ!?」
__________
すみません。短編を書き上げた後、ちょっとダウンしてました。(´ε`;)ゞ
『婚約者が庇護欲をそそる可愛らしい悪女に誑かされて・・・ませんでしたわっ!?』という四話完結の短編です。
婚約者が、「病気の母がいて……」と言って困窮している、庇護欲をそそる可愛らしい後輩女子に侍っているので、彼女が悪女であることを調べることにしたお嬢様の、調査報告&悪女観察日記っぽい話です。ある意味、どんでん返しな感じです。(*`艸´)
そして、ホラーミステリー大賞に応募している、
『わたしの娘を返してっ!』というホラー短編。
こっちは数年前に書いたのを手直しして投稿。
病弱な娘が生まれて、その娘を育てるのに育児ノイローゼになった妻と離縁したが、妻の日記を読んで……という感じのホラーとなっています。
読んでやってもいいよ? という方、興味がある方は、月白ヤトヒコの作品リンクから飛べるので、覗いてやってください。(*ノω・*)テヘ
5
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる