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 一年後。ルリア嬢が中等部に入学する前に、ロイとレイラ嬢が結婚式を挙げた。

 学園に入学したら、長期休暇に入るまで待たないと、なかなか行き来が難しくなる。なので、時間に余裕のあるうちに、ルリア嬢を招待する為にレイラ嬢はロイとの結婚を決めたそうです。

「いいですか? レイラ姉様は、自分で思っているよりも、何倍もうっかりさんなのです。ルリは……わたくしは、そんなレイラ姉様のことがとっても心配なのです」

 ウエディングドレス姿のレイラ嬢へと、滔々と言い聞かせるルリア嬢。

「もうっ、ルリアったら、レイラ姉様のことが大好きなんだから♪」

 レイラ嬢は、にこにこと嬉しそうにルリア嬢の小言を聞いている。

「レイラ姉様、わたくしの言ってること聞いてます?」
「もちろん、結婚してもレイラ姉様はルリアのことが大好きよ♪」
「はぁ……レイラ姉様はこれだから……」

 やれやれと溜め息を吐いたルリア嬢は、今度はタキシード服に身を包んだロイへと頭を下げた。

「ロイお兄様、レイラ姉様のことを宜しくお願いします」

 そして、顔を上げて確りとロイを見据える。

「レイラ姉様はうっかりさんで、偶に言動が大分斜め上に行くのです。しかもその斜め上な思考を基にしたままで、ぐいぐい突っ走ってしまうことがあるのです。更には、実はなかなかの天然さんの部分もあるのです。今までは、わたくしやエル兄様……エリオット様がどうにかレイラ姉様の暴走を止めていたのですが、これからはレイラ姉様を止めるのはロイお兄様の役目になるのです」

 やっぱり、レイラ嬢の暴走を一番止めていたのはルリア嬢のようだ。エリオットも、自分にはレイラ嬢を止められないとは言っていたものの、なんだかんだレイラ嬢の言動がアウトのときには、ちゃんと止めていた。

「ああ。そんなに自信は無いが、頑張ろうとは思っている」
「なんだか、少々頼りないのです」

 神妙な顔で頷いたロイに、少々辛辣な感想。

「一応、レイラ姉様は可愛い人のお願いに弱いので、ロイお兄様が止められないようなら、スピカお姉様に止めるようお願いするのも有効だと思うのです。ネイトお兄様がいるときには、ネイトお兄様に叱ってもらうのもいいと思うのです」

 あれ? いつの間にか、わたしもレイラ嬢のストッパー役を求められてる?

「重ね重ねになりますが、レイラ姉様のことを宜しくお願い致します」
「は、はい」
「ああ、でも……レイラ姉様が帰りたいと思ったら、いつでもうちに帰って来てもいいのです。レイラ姉様の面倒は、ルリとエル兄様が一生見ますから」

 にっこりと、どこかセディーが圧を掛けるときの笑みに似た笑顔でルリア嬢が言う。

「肝に銘じておきます」

 これは……ロイがレイラ嬢を粗末に扱ったり、不仲になったら、即行離縁させてフィールズ公爵家に戻すという宣言でしょうね。しかも、もうクロシェン家には返さない、と。

 九つも年上の男を、ある意味脅すとは……さすがルリア嬢。

 そんなやり取りがあって、ロイはレイラ嬢と結婚した。

「え? なにあれ? スピカより年下の女の子になんであんな凄みがあんだよっ!?」
「まぁ、がんばれ、ロイ。レイラ嬢に捨てられないように」
「お、おう」

 さて、次は・・・セディーとケイトさんの結婚式かな?

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