上 下
643 / 673

550

しおりを挟む


 これからどうするのかと決めた翌日。

「レイラちゃんのお見合いも無事に終わったので、僕達は先に帰りますね!」
「それでは、お世話になりました。また、遊びに来ますので宜しくお願い致しますわ! 今度はルリアも連れて来ますから、是非ともスピカ様にスリングショットを教えて頂きたいです」

 と、挨拶をしてエリオットとレイラ嬢は一足先に帰って行った。

「え? ええっ!? る、ルリア様が来るんですかっ!?」

 なぜか慌てるスピカ。

「? どうかしたの?」
「え? あ、その……ね、ねえ様はルリア様と仲がいいんですかっ!?」
「? ルリア嬢と? まぁ、悪くはないと思うよ? でも、ルリア嬢と一番仲が良いのはリヒャルト君かな? 二人は年も近いし」
「え?」

 きょとんと首を傾げるスピカ。

「? あれ? 言ってなかったっけ? ルリア嬢は今年で、十一歳。エリオットとは八つ年が離れているんだよ」
「へ? 十一、歳? そう、ですか……」

 「よかったぁ…… ねえ様がルリア様と 仲が良いって 聞いてから、 ちょっと もやもやしていた だなんて…… 言えません っ!」

 溜め息と、小さな呟きが零れ落ちた。よく聞こえなかったけど、今なんて言ったんだろう?

「スピカ? どうかした?」
「い、いえっ! なんでもありませんよっ!?」
「そう?」
「はい!」
「え? マジで? 噂の妹君って、そんな小さかったのかっ!?」
「あ、うん。でも、すっごく優秀な子なんだよ」

 なにせ、当時八歳にして公爵家当主になると宣言して、女の子に公爵位を継がせることに否定的だったという前フィールズ公爵を自分で説得して、当主候補として認めさせたという末恐ろしい子ですからね・・・しかも、その決意がエリオットの為だというから、女の子って本当に凄いと思います。

「マジかー……で、セディックさんとお前の教え子なんだろ?」
「うん。まぁ、どちらかというと、ルリア嬢の先生はケイトさんとセディーの方がメインかな?」
「なんか、将来すっげー子になりそうだな」

 将来は、女性公爵になると身内に公言している意志の強い女の子です。

「つか、政略だと年の差は関係無いんだが……エリオットはいいのか? 八つも年下の婚約者で」
「ああ、うん。エリオットは、ほら? 女性が苦手だから。売約済みだと、女性は寄って来ないでしょ? 特に、公爵令嬢の婚約者には」

 一応、対外的にはエリオットがフィールズ公爵位を継ぐとは思われているけど、婿入りだし。公爵家を敵に回してまでエリオットに近付こうとする女性はそうそういないだろう。

 エリオットがフリーの場合は、その限りではなくなる。それを見越して、ルリア嬢はエリオットを囲い込んで……いたら、なんかこう、怖いんだけど。

「学園時代も、『エリオットは妹の婚約者だから』って、レイラ嬢がずっと目を光らせていたし」

 なんて話をして――――

 二日後。クロシェン家への滞在を終了し、ハウウェル侯爵家に戻ることになった。

「それじゃあ、スピカ姉さま……またあうときまで、ぼくのことわすれないでくださいねっ!」
「はい!」
「おやくそくですよっ? またあそんでくださいねっ? ぜったいですよっ?」
「はい、お約束です!」
「おやくそくの、ぎゅ~っです!」
「はい、ぎゅ~」
「姉さまも、いっしょにぎゅ~してください!」
「はいっ♪」

 と、三人で仲良くハグをしている。

「ふふっ、随分と仲良くなったのねぇ」

 にこにこと微笑ましい様子を見守るおばあ様。

「いいな……ケイトさん」

 羨ましそうに三人を見やるセディー。まぁ、わたしの同感だ。

「そうかそうか、では、セディック君はわたしがハグしてあげようじゃないか!」

 と、圧のある笑顔でトルナードさんがセディーをハグした。

「!」
「なにやってんだ、父上……」
「ふふっ、本当にね~」

 びっくりした顔のセディー。呆れ顔のロイ。クスクス笑うミモザさん。

「驚かせてごめんなさいね、セディック君」
「あ、いえ・・・お祖父様以外の男の人とハグをしたのは初めてで・・・」
「そう言えば・・・父に抱き締められた覚えは一度も無いけど、セディーもなの?」
「まぁ、あの人が大事にしてるのは母だけだからねぇ。そもそも、僕達に興味なんか無いでしょ。あの二人は」
「確かに。そうかも」

 冷めたセディーの言葉に同意する。

「そうか・・・よし、ネイサンもミモザも来い!」
「え? うわっ!?」

 ぐいっと腕を引っ張られて、セディーと一緒にトルナードさんの腕の中に引き込まれる。そして、横合いからそっとミモザさんの腕が回った。

「あら、セディーもネイトもよかったわねぇ。それじゃあ、ロイ君はわたしと」
「え? 大伯母様っ?」
「あら、嫌かしら?」
「い、いえ……!」

 びっくりした顔のロイを、イタズラっぽく笑ってハグするおばあ様。

「みんなでぎゅ~ですね! ぼくもぎゅ~してくださいっ!」

 と、リヒャルト君が突撃して来て、ひとしきりみんなでハグをし合うハグ祭り? が開催され、

「それじゃあ、そろそろ出発しましょうか」

 クスクスと笑いながら、おばあ様が馬車に乗り込んだ。

「ネイト・・・無理しちゃ駄目だからね?」

 ぎゅっと、わたしを抱き締めながらセディーが言う。

「大丈夫だよ。もしかしたら、わたしの方が先に着いてるかもしれないよ?」
「急がなくていいから、無理しないでゆっくり帰って来るんだよ?」
「うん。それじゃあ、向こうで会おうね?」
「待ってるからね」

 と、名残惜しそうにセディーも馬車に乗った。

 わたしは、セディー達とは別で。騎乗で帰ることにした。

 こっちとあっちを行き来する為に、騎乗だとどの程度の時間が掛かるのかを調べる為に。

 まぁ、ぎりぎりまでスピカと一緒にいたいという下心もあるけどね?

♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘


 ハグ祭り♪(笑)

 リヒャルト「みんなでぎゅ~です!」(*>ω<)ω<*)

 ロイ「え? 俺もっ!?」Σ(-∀-;)

 リヒャルト「もちろん、ロイ兄さまもですっ♪」ԑ=( *'꒳' ))( ̄□ ̄;)!!

 ロイ「ったく、ちびっ子には勝てねーぜ」ꉂ(ˊᗜˋ*)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪
恋愛
 学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。  王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——  だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。  誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。  この事件をきっかけに歴史は動いた。  無血革命が起こり、国名が変わった。  平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。 ※R15は保険。 ※設定はゆるんゆるん。 ※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m ※本編はオマケ込みで全24話 ※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話) ※『ジョン、という人』(全1話) ※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話) ※↑蛇足回2021,6,23加筆修正 ※外伝『真か偽か』(全1話) ※小説家になろうにも投稿しております。

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

処理中です...