虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 これからどうするのかと決めた翌日。

「レイラちゃんのお見合いも無事に終わったので、僕達は先に帰りますね!」
「それでは、お世話になりました。また、遊びに来ますので宜しくお願い致しますわ! 今度はルリアも連れて来ますから、是非ともスピカ様にスリングショットを教えて頂きたいです」

 と、挨拶をしてエリオットとレイラ嬢は一足先に帰って行った。

「え? ええっ!? る、ルリア様が来るんですかっ!?」

 なぜか慌てるスピカ。

「? どうかしたの?」
「え? あ、その……ね、ねえ様はルリア様と仲がいいんですかっ!?」
「? ルリア嬢と? まぁ、悪くはないと思うよ? でも、ルリア嬢と一番仲が良いのはリヒャルト君かな? 二人は年も近いし」
「え?」

 きょとんと首を傾げるスピカ。

「? あれ? 言ってなかったっけ? ルリア嬢は今年で、十一歳。エリオットとは八つ年が離れているんだよ」
「へ? 十一、歳? そう、ですか……」

 「よかったぁ…… ねえ様がルリア様と 仲が良いって 聞いてから、 ちょっと もやもやしていた だなんて…… 言えません っ!」

 溜め息と、小さな呟きが零れ落ちた。よく聞こえなかったけど、今なんて言ったんだろう?

「スピカ? どうかした?」
「い、いえっ! なんでもありませんよっ!?」
「そう?」
「はい!」
「え? マジで? 噂の妹君って、そんな小さかったのかっ!?」
「あ、うん。でも、すっごく優秀な子なんだよ」

 なにせ、当時八歳にして公爵家当主になると宣言して、女の子に公爵位を継がせることに否定的だったという前フィールズ公爵を自分で説得して、当主候補として認めさせたという末恐ろしい子ですからね・・・しかも、その決意がエリオットの為だというから、女の子って本当に凄いと思います。

「マジかー……で、セディックさんとお前の教え子なんだろ?」
「うん。まぁ、どちらかというと、ルリア嬢の先生はケイトさんとセディーの方がメインかな?」
「なんか、将来すっげー子になりそうだな」

 将来は、女性公爵になると身内に公言している意志の強い女の子です。

「つか、政略だと年の差は関係無いんだが……エリオットはいいのか? 八つも年下の婚約者で」
「ああ、うん。エリオットは、ほら? 女性が苦手だから。売約済みだと、女性は寄って来ないでしょ? 特に、公爵令嬢の婚約者には」

 一応、対外的にはエリオットがフィールズ公爵位を継ぐとは思われているけど、婿入りだし。公爵家を敵に回してまでエリオットに近付こうとする女性はそうそういないだろう。

 エリオットがフリーの場合は、その限りではなくなる。それを見越して、ルリア嬢はエリオットを囲い込んで……いたら、なんかこう、怖いんだけど。

「学園時代も、『エリオットは妹の婚約者だから』って、レイラ嬢がずっと目を光らせていたし」

 なんて話をして――――

 二日後。クロシェン家への滞在を終了し、ハウウェル侯爵家に戻ることになった。

「それじゃあ、スピカ姉さま……またあうときまで、ぼくのことわすれないでくださいねっ!」
「はい!」
「おやくそくですよっ? またあそんでくださいねっ? ぜったいですよっ?」
「はい、お約束です!」
「おやくそくの、ぎゅ~っです!」
「はい、ぎゅ~」
「姉さまも、いっしょにぎゅ~してください!」
「はいっ♪」

 と、三人で仲良くハグをしている。

「ふふっ、随分と仲良くなったのねぇ」

 にこにこと微笑ましい様子を見守るおばあ様。

「いいな……ケイトさん」

 羨ましそうに三人を見やるセディー。まぁ、わたしの同感だ。

「そうかそうか、では、セディック君はわたしがハグしてあげようじゃないか!」

 と、圧のある笑顔でトルナードさんがセディーをハグした。

「!」
「なにやってんだ、父上……」
「ふふっ、本当にね~」

 びっくりした顔のセディー。呆れ顔のロイ。クスクス笑うミモザさん。

「驚かせてごめんなさいね、セディック君」
「あ、いえ・・・お祖父様以外の男の人とハグをしたのは初めてで・・・」
「そう言えば・・・父に抱き締められた覚えは一度も無いけど、セディーもなの?」
「まぁ、あの人が大事にしてるのは母だけだからねぇ。そもそも、僕達に興味なんか無いでしょ。あの二人は」
「確かに。そうかも」

 冷めたセディーの言葉に同意する。

「そうか・・・よし、ネイサンもミモザも来い!」
「え? うわっ!?」

 ぐいっと腕を引っ張られて、セディーと一緒にトルナードさんの腕の中に引き込まれる。そして、横合いからそっとミモザさんの腕が回った。

「あら、セディーもネイトもよかったわねぇ。それじゃあ、ロイ君はわたしと」
「え? 大伯母様っ?」
「あら、嫌かしら?」
「い、いえ……!」

 びっくりした顔のロイを、イタズラっぽく笑ってハグするおばあ様。

「みんなでぎゅ~ですね! ぼくもぎゅ~してくださいっ!」

 と、リヒャルト君が突撃して来て、ひとしきりみんなでハグをし合うハグ祭り? が開催され、

「それじゃあ、そろそろ出発しましょうか」

 クスクスと笑いながら、おばあ様が馬車に乗り込んだ。

「ネイト・・・無理しちゃ駄目だからね?」

 ぎゅっと、わたしを抱き締めながらセディーが言う。

「大丈夫だよ。もしかしたら、わたしの方が先に着いてるかもしれないよ?」
「急がなくていいから、無理しないでゆっくり帰って来るんだよ?」
「うん。それじゃあ、向こうで会おうね?」
「待ってるからね」

 と、名残惜しそうにセディーも馬車に乗った。

 わたしは、セディー達とは別で。騎乗で帰ることにした。

 こっちとあっちを行き来する為に、騎乗だとどの程度の時間が掛かるのかを調べる為に。

 まぁ、ぎりぎりまでスピカと一緒にいたいという下心もあるけどね?

♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘


 ハグ祭り♪(笑)

 リヒャルト「みんなでぎゅ~です!」(*>ω<)ω<*)

 ロイ「え? 俺もっ!?」Σ(-∀-;)

 リヒャルト「もちろん、ロイ兄さまもですっ♪」ԑ=( *'꒳' ))( ̄□ ̄;)!!

 ロイ「ったく、ちびっ子には勝てねーぜ」ꉂ(ˊᗜˋ*)


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