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 ミモザさん、なに言ったんだろ?

「クロシェン夫人、おうちに戻ったんですかね?」
「ぁ~……いや、もしかしたらあれは、一人でどっか狩りに行くのかも……」
「ふぇ~……パワフルな方なんですね~。ところで、クロシェン夫人はどうして狩猟が趣味なんですか? あ、嫌なら答えなくていいですからねっ」
「ああ、なんか、母上の実家が昔困窮していた時期があったそうで……」
「そうなんですか……えっと、すみません」
「ああ、いや。気にしなくていい。なんでも、『肉を買いに行けないなら、肉を狩って来ればいいじゃないか!』と、当時の当主が言い出して、それからは肉が食いたくなったら狩りに行くようになったらしい。で、母上が生まれた頃にはもう困窮から脱していたそうなんだが。その後も、『自分で狩れば肉はただ! 食いたいなら狩って来い!』って、家訓? になってるらしくて。母上も、小さい頃から『肉は狩りに行くもの』だと教わってたそうだ」
「わ~、すっごくワイルドな家訓ですね!」
「知らなかった……」
「そんな家だからか、母上の実家行くと、男は怪我や病気をしてない限りは、問答無用で狩りに参加させられる。そして、獲物が獲れなかった奴には肉が当たらない」
「そ、そうなんだ……」

 そんな話をしながら――――

「いいですか? まずスリングショットを手に取ったときに一番最初にすることは、ゴムの部分が切れていないかの確認をすることです。ストリングの部分を引っ張ったとき、万が一途中でゴムが切れたら、すっごく危ないですからね!」
「あぶない、ですか?」
「はい。強いゴムが引っ張ってる途中で切れると、バチン! って腕や顔に当たって危険ですからね。あれ、とっても痛いんですよ? 下手すると裂傷……血が出るくらいの怪我もしちゃいます。だから、しっかり確認しましょうね?」
「裂傷は……痛そうですわね」
「はい。裂傷は、普通の切り傷なんかよりも治り難いですからね。それに、お顔の近くでバチン! ってなったら目がすっごく危険なので、気を付けましょう!」
「はい!」
「ゴムをみょ~んって伸ばして、切れ目や傷みがないか、古くて硬くなっていないかを確認です!」
「みょ~ん、ですか?」
「みょ~ん、ですね。みょ~ん」

 と、なんだか微笑ましいスピカのスリングショット講座を眺める。

「スピカ、怪我したの?」
「あ? ああ、大丈夫だ。痕が残るような酷い怪我はしてねーから」
「そっか……でも、あんまり痛い思いはしてほしくないなぁ」
「ふふっ、ハウウェル先輩はスピカ様のことが大事なんですねっ」
「君だって、ルリア嬢のことを大事にしてるでしょ」
「それはそうなんですけど……ハウウェル先輩とスピカ様は、多分僕とルリアちゃんとはちょっと違うかな~? って思いまして」
「そう」

 ・・・まぁ、その言葉、十年後には言えなくなってると思うけどなぁ。

 そして、ゴムの確認が終わったスピカ達はゴーグルやグローブを装着しながら、どんぐりの弾をあらぬ方向に飛ばしたり、ぽてんと地面に落として笑ったりと、楽しそうに訓練をしている。

 セディーとケイトさんの方は――――

 銃の反動に苦戦しながら、なんとか的に当てようと奮闘するセディーにケイトさんが真剣な顔でアドバイスをして、セディーもまた真剣に応えている。

 ときどき、ケイトさんがリヒャルト君の方を眺めて慈愛に満ちた顔でにこにことしていたと思ったら、その直後にはいつもよりもキリっとした顔でセディーに向き直ったりと、忙しそうにしているけど。

「・・・なんつーか、ケイト様のギャップがすげーな」
「そう? って、ああそうか。こっちでは大体リヒャルト君が近くにいるから、慈愛溢れる表情しているけど、リヒャルト君が近くにいないときのケイトさんは、基本的に凛とした表情をしていることが多いんだ」
「そうですね~」
「ま、今は火器を扱っている分、いつもよりもキリっとした表情だけど」

 スピカ達の様子を眺めながら、セディーの様子にも気を配る。

 そして、段々と疲れた表情を見せるセディーに、ケイトさんがストップを掛けて射撃訓練は終了。

「セディー、大丈夫?」
「ぅ、腕がぷるぷるする……」
「明日はきっと、全身筋肉痛ですね。セディック様、今日は確りと身体を解してからお休みください」
「全身筋肉痛……はい。練習に付き合ってくれてありがとうございました、ケイトさん」
「いえ、わたしもいい訓練になりました。ということで、わたしはリヒャルトの方を見ていますね」

 と、さっきよりも上達して、パチンパチンとどんぐりを打ち出しているリヒャルト君の様子を、

「ああ、真剣な顔で一生懸命なリヒャルトも可愛い……」

 邪魔しないように小声で応援し始めたケイトさん。

「大丈夫ですか? セディック様」
「……た、多分……」
「セディー。手、貸してね?」
「ネイト?」

 セディーの返事より先にセディーの手を取り、マッサージをして解す。

「それじゃあ、僕も手伝います!」

 エリオットがわたしとは反対の手を取り、ぐにぐにとセディーの手を揉む。

「ありがとう、ネイト。エリオット君」
「いえいえ、どう致しまして~」
「一応、やらないよりは各段に楽だとは思うけど、それでも筋肉痛にはなると思うから覚悟してね?」
「ぅ~……がんばる」
「ところで、セディー」
「なぁに? ネイト」
「さっき、ミモザさんになにを言われたの?」

__________


 サブタイの番号をミスってました。すみません。(´ε`;)ゞ

 番号ミスは、目の調子が良くないときに多くなるみたいです。(´-ω-`)

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