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しおりを挟むそして、翌日。
「お邪魔しますわ」
「遊びに来ましたっ!」
にこにことやって来た二人に、
「マジで来……だっ!?」
小さく呟くロイ。その足をミモザさんがぐっと踏み付けて黙らせ、
「いらっしゃいませ。昨日はスピカに過分な贈り物をありがとうございました」
レイラ嬢とエリオットにお礼をする。
「お気になさらず。わたくしも楽しいお買い物でしたから」
「はい。レイラの買い物に付き合って頂いて、感謝しています」
「ええ、おばあ様と妹へもいいお土産が買えましたわ」
「それは良かったですわ」
ちなみに、スピカへの贈り物は婚約祝いという名目。ケイトさんへの贈り物は、「ルリアがお世話になっていますから、そのお礼です」と、色々買っていましたねぇ。
そして、昨日はクロシェン家に送られて来た荷物を見て、「フィールズ公爵令嬢とロイはまだ婚約前なのにっ!?」と恐縮していたミモザさんとトルナードさんに、セディーとおばあ様が、「クロシェン家が貰ってくれないと、前フィールズ公爵夫人のアナスタシア様がもっと豪華な物を贈って来るかもしれない」と説得? して、ありがたく頂くことになった。
「ところで、今日の予定は決まっていますでしょうか?」
にっこりとミモザさんの質問。
「いえ、皆さんと相談して決めようと思いまして」
「そうですか。では、今日は訓練に付き合って頂けますか?」
「母上っ!?」
「訓練、ですか?」
「ええ。お見合いの席で説明しようと思ったのですが、どうせなら直接見た方が早いですから。フィールズ公爵令嬢とフィールズ伯爵令息がお嫌でなければ、息子達の訓練に参加してみますか?」
にこにこと、なぜかレイラ嬢に訓練を勧めるミモザさん。
「わぁ! 訓練って、なにをするんですかっ?」
わくわくした顔のエリオット。
「そうですね、今日はセディック君の特訓がメインなので、射撃場での訓練になりますわ。スピカにも訓練をさせますので、宜しければフィールズ公爵令嬢もどうぞ」
「まあ! スピカ様も! それじゃあ、ご迷惑でなかったらわたくしも見学させてくださいな」
レイラ嬢はきらきらした瞳で参加を即決。
「というワケで、ロイ。フィールズ様方とセディック君達を案内して差し上げなさい」
そして――――急遽、射撃の訓練をすることが決まった。ちなみに、セディーの特訓という話なので、セディーは強制参加。
「・・・どうしてこうなった」
と、額を押さえながら射撃場へ案内するロイ。
「あら、クロシェンに嫁ぐなら、いずれにしろなにかを習得しているお嬢さんでなければいけないもの」
動き易い乗馬服に着替えて来たミモザさんが、同じく乗馬服姿のスピカとケイトさんを連れて来た。
「あら、クロシェン夫人も訓練にご参加を?」
「ええ。わたくしも少々……猟銃を嗜んでおりまして」
と、よく見るとその肩には猟銃の収められたケースが担がれていた。
「ネイト、知ってた?」
「ううん、全然知らなかった……」
「ぁ~……ま、貴族夫人の趣味が狩猟っつーと、ちょっとアレだからな。ちなみにだが、昔うちで出てたやたら新鮮なジビエ料理、母上が仕留めた獲物だったんだぜ?」
「そうだったの?」
「おう。俺も知ったの、十二ンときなんだけどな? なーんか、父上にムカつくことがあったり、ストレスが溜まったりすると、一人でふらっと出掛けて獲物仕留めて帰って来る。んで、夕食に豪華なジビエ料理が出ると、父上がちょっとびくっとする」
それは……ミモザさんが怒っていたりストレスを溜めていたのか? と、そう思ってトルナードさんがびく付くということかな?
それにしても・・・なんか、ミモザさんの拳骨がやたら痛いワケがわかった。猟銃を撃つには、相応の筋肉が要る。きっと、ミモザさんは普通の女性よりも筋肉が付いているのだろう。
「ふぇ~……クロシェン夫人は凄いんですね~」
「いえいえ。わたくしなんてまだまだですわ。では、お手本をお見せしますね?」
と、猟銃を取り出して構え、ズドン! と見事に的の中心が射貫かれた。
「まあ! 真ん中に命中しましたわっ!?」
「ふふっ、セディック君」
「は、はい」
「中心に当てろとは言いませんけど、的に当たるようにはなりましょうね?」
にっこりと、笑顔ではあるけど、圧の強さが有無を言わせない。
「とは言え、猟銃と短銃では少々扱いが違うので、セディック君の使う的はあちらですけど。ケイト様も短銃を使うのでしたら、わたくしよりもケイト様に教わる方がいいかもしれませんね」
と、セディーはケイトさんに銃の撃ち方を教わることに。
「あら、確かセディック様は銃を扱えると仰っていませんでしたか?」
「えっとね、レイラちゃん。単に銃が撃てるのと、銃で狙って撃てるっていうのとでは、実は結構違うんだよ?」
「そうなの?」
「うん。例えば、最低限間違わずにダンスを踊れるのと、上手に……それこそ、競技大会で入賞できるくらいの実力とでは、全然違うでしょ?」
「それは、確かに全く違うわね」
エリオットの言葉に成る程と頷くレイラ嬢。
「それじゃあ、スピカはあっちで練習してらっしゃい」
「はーい、母様」
今度はスピカが、銃火器用の的ではなく弓用の的に向かってスリングショットを構える。真剣な顔で的を見据え、ぐいっと引き絞ったストリングを放つ。次いで、パン! と、ほんの少し的の中心から外れた玉が落ちた。
「あちゃ~、惜しいっ」
「ふふっ、どうです? あれでしたら、フィールズ公爵令嬢もできそうではありませんか?」
「母上、公爵令嬢を唆すのはどうかと思いますが?」
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