虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 翌日。

 今朝は、「ねえ様がいないっ!?」と慌てたスピカが飛び込んで来ることもなく、和やかな朝食だった。

 ちなみに、おばあ様は今日もお誘いされているようで、出掛けて行きました。

 朝食を食べ終わってのんびりお茶を飲んでいると、

「なぁ、ネイサン」

 ロイが話し掛けて来た。

「なに?」
「フィールズ伯爵令息って、普段お前となにして遊んでんの?」
「普段はエリオットと……遊ぶって言うより、最近は一緒に勉強することの方が多かったからなぁ」
「勉強?」
「うん。エリオットがうちに来るとか、わたしがエリオットの家に行くとかじゃなくてね。フィールズ公爵家の方で、レイラ嬢の妹のルリア嬢とリヒャルト君と一緒にセディーに勉強を教わったり、リヒャルト君達に勉強を教えたりとか? ケイトさんも、ルリア嬢やレイラ嬢に勉強を教えたりしてる感じ?」
「え? なにお前、フィールズ公爵令嬢とそんなに親しかったのか?」
「え? ……ねえ様、レイラ様と仲良いんですか?」

 驚いたようにわたしを見詰めるロイとスピカ。

「ん~……レイラ嬢とって言うより、エリオットにやたら懐かれてる。それに、どっちかというと、わたしはレイラ嬢よりもルリア嬢と過ごすことの方が多いかな? レイラ嬢と仲が良いのはケイトさんの方ですね」
「そうだねぇ。ケイトさんとレイラさんは令嬢同士の交流もあるし」
「ああ、フィールズ令息……って、ややこしいな? もうエリオットでいいか……の方は、公爵家に婿入りするって話だったな。その関係で、公爵家の方でってことですか?」
「まぁ、そんな感じかな?」

 にこりと頷くセディー。

 ルリア嬢が公爵家の跡取り候補として教育を受けていることは、対外的にまだ話していいことじゃない。

「それに、元々エリオットの母君の方が公爵令嬢ですし。ある意味、エリオットもフィールズ家の直系ではあるんだよね」
「ああ、それですんなり婿入りってワケか。フィールズ伯爵の方が婿入りしたってことか・・・もしかして、それで上の姉ちゃん達になにも言えなかったり?」
「ん~……それも一因ではあると思うよ?」
「一因?」
「わたしが言うのもなんだけど・・・エリオットの顔も、ね?」
「ああ、そう言や、アイツも女顔だったな。お前とは系統が違うけど」
「ま、そういうこと」
「ふふっ、ネイトは綺麗で可愛いけど、エリオット君も可愛い顔してるからねぇ」
「アイツも顔で苦労してんのか……」
「あっ、あの、ねえ様は……」
「ん? なぁに? スピカ」

 なにかを言い掛けたスピカの話を聞こうとしたら、

「フィールズ公爵令嬢様、並びにフィールズ伯爵令息様がお見えになられました」

 と、レイラ嬢とエリオットがやって来たようだ。

「お邪魔します!」
「こんにちは、皆様」
「いらっしゃいませ、フィールズ公爵令嬢。フィールズ伯爵令息」
「ご招待ありがとうございます、クロシェン様。宜しければどうぞ。お土産ですわ」
「ホテルで食べて美味しかったお菓子を選んだので、味は保証付きです!」
「ありがとうございます」

 二人の手土産の美味しいお菓子を頂きながら、お茶をして・・・

「そう言えば、フィールズ公爵令嬢にも妹さんがいるそうですね。大変ではありませんか? 妹の面倒を見るのは」

 という不用意なロイの言葉で……

「ふっ、片腹痛いですわね! 弟妹の面倒を見る義務? そんなのはあり得ませんわ! むしろ、弟妹の面倒を見ることは兄姉の権利! そしてまた、弟妹を可愛がることも兄姉の権利! って、弟妹の方こそ兄姉の気が済むまで、存分に可愛がられる義務があるのですわ!」
「まあ! 素晴らしいですレイラ様!」
「ええ……レイラさん。どうやら僕は、あなたのことを誤解していたようですね。今のお話、とても心に響きました」

 と、なぜか熱く語って意気投合している、ロイを除いた長男長女の三人。


 「そんな義務、 無くて いいのに……」

 ふっ、と遠くを見てエリオットにしては投げやりというか、やさぐれたような笑みでの低い呟き。

 まぁ、長年姉君達にオモチャにされていたエリオットからしてみれば、暴論なんだろうなぁ。

「これがマジもんのブラコンとシスコン、付いてけねーぜ……」

 自分で話を振ったクセに、引き気味のロイ。

「姉さまとぼくはなかよしさんで、セディー兄さまとネイト兄さまもなかよしさん、レイラ姉さまとルリア姉さまもなかよしさんです!」

 ふんすと胸を張るリヒャルト君。

「えっと、わたしと兄様も仲良く……した方がいいです?」
「勘弁しろ……」

 きょとんと尋ねたスピカに、額を押さえて疲れたように返すロイ。

「というワケで、これからショッピングに行きませんこと?」
「え? ああ、どうぞ」
「では行きますわよ!」
「へ? どこへ?」
「ですから、ルリアへのお土産を買うのにいいお店を教えてくださるのでしょう? さあ、お店はどこですのっ?」

 と、買い物モードに火が点いたレイラ嬢主動で、ショッピングに繰り出すことになった。


__________


 ロイ「なにあの弟妹への熱量……引くわー」(´д`|||)


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