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しおりを挟む休憩がてらに座れる場所を探し、空いているベンチに女性陣とリヒャルト君を座らせる。
「それじゃあネイト、エリオット君も。皆さんをよろしくね?」
「うん。行ってらっしゃい」
「はいっ、任せてください!」
「皆さんに迷惑掛けんなよ? アホスピカ」
「もうっ、兄様は余計なことばっかり言って!」
と、二人が買い出しに行って暫くすると・・・
「ハウウェル先輩……」
「うん、なんかこっち来るね」
警戒の為に立っているわたしとエリオットから見える方向から、若い男四名のグループがこちらへ向かって来るのが見える。
身形はそんなに悪くない。裕福な平民か、またはお忍びの貴族子弟と言ったところ。
彼らの進行方向に、偶々わたし達がいる。というならいいんだけど……なんて思っていたら、残念なことに、
「彼女達美人だねー。一人、美人じゃないのもいるけど」
「恋人とか彼氏とかいないの?」
「なら、俺らと遊ばない?」
「俺、恋人候補に立候補しちゃいまーす!」
と、チャラい態度で絡まれてしまった。
「? ハウウェル先輩、あの人達なに言ってるんですかね?」
「さあ? ちょっとわからないかな」
スピカの婚約者とレイラ嬢の元婚約者はここにいる。ケイトさんの婚約者のセディーは、今買い出しに出ちゃってるけど。まぁ、現在婚約者のいないレイラ嬢はフリーと言えばフリーではあるけど、ロイとのお見合いの為にこちらに来ているので、そう言った意味では相手を探してはいない。
「間に合っているので結構です。どうぞお帰りを」
「え~? なになに? 強がっちゃってかわいーねー」
「男装も似合ってるけどさ」
「ほら、そんなちびっこなんて置いてさー」
「俺らと楽しく遊ぼうよ」
などと、リヒャルト君を溺愛しているケイトさんに、恐ろしいことを言ってのける馬鹿男共。
すっと冷えるケイトさんの視線。けれど、すぐに動かないのはリヒャルト君にあまり荒事を見せたくないからでしょうねぇ。その点では、わたしも少し逡巡する。
どうする? と、エリオットと視線を交わしていると、
「……うちの領は、比較的治安がいいのが自慢だって言うのに……」
低く呟きながら、スピカがゆらりと立ち上がった。
「ナンパなら余所でやってください。あんまりしつこいと、警備員さんを呼びますからね!」
「え? スピカっ!?」
慌てるわたしを余所に、キッと男達を睨め付けて仁王立ちするスピカ。
「はあ?」
「俺ら別に、ガキに用はないんだけど? なに?」
「自意識過剰なんじゃない?」
「お嬢ちゃんは五年後に、もっと美人になってたら遊んであげるから黙っててねー」
・・・よし、殺ろう。
「ねえ様とお姉様達に手出しはさせませんっ! というワケで、えいっ!?」
と、スピカがパッとなにか白い物体を投げた瞬間、それが口に入った男達がゲホゲホと苦しそうに激しく咳き込んで地面に膝を着いて倒れた。
「警備員さーん! こっちですこっち!」
大きな声で警備員を呼び、自分はクロシェン家領主の娘だと明かして、激しく噎せ続けている男達は救護室に連行となった。
「ふぅ……これでもう安全ですからね!」
鮮やかな手際でナンパ男共を撃退したスピカがにっこりと微笑んだ。
「まあ! すごいですわ、スピカ様!」
「ええ、見事な手際でした」
「かっこよかったです!」
「ふぇ~……すごいですね~」
「えへへ……」
「すごかったけど・・・でも、あんな風に無理はしなくていいからね? スピカ」
照れたように笑うスピカをぎゅっと抱き寄せる。
「ね、ねえ様っ!?」
わたわたと顔を赤くするスピカに、安心して力が抜ける。
「お待たせしました……って、どうしたの? ネイト」
「どうした……っつーか、さっき野郎共が連行されてたの、あれお前か? スピカ」
「えっと、はい」
「え? なにしたの? スピカちゃん」
飲み物を買って戻って来たセディーとロイに、ナンパ男共に絡まれてスピカがあっさり撃退したことを説明。
「ええっ!? スピカちゃんがっ!?」
「ふ~ん。そっか。で、お前、連中になに使ったよ?」
__________
リヒャルト君とスピカ以外が目的のナンパ。ネイサンとエリオットも普通に男装の女の子と思われてました。ꉂ(ˊᗜˋ*)
このメンバーだと顔的には、一番美人がネイサン。その次がケイトさん。レイラちゃんとエリオットは、強気な子と内気そうな子のどちらが好きかで分かれる感じ。リヒャルト君は将来美人になりそうで、スピカは並み。
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