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「おいスピカ。お前さ、めっちゃ髪跳ねてんぞ?」

 朝食を食べ終わって、ロイが言った。

「えっ? な、なんで今言うんですかっ!? さっきで教えてくれればいいのにっ!」

 ムッとした顔でいそいそと髪の毛を直そうとするスピカ。

「そうね、あちこち跳ねてるわよ? せめて、髪を梳かしてから部屋からいらっしゃい」
「か、髪の毛、ちゃんと梳かしたのに・・・むぅ、走ったから?」
「そう言えば、さっきはあんなに慌ててどうしたの? スピカちゃん」
「えっと、その……ねえ様、朝が苦手だから起こしてあげようと思ったんです」
「ああ、コイツが朝苦手なのは変わってねーみたいだぜ? なあ、ネイサン」
「まぁ、そうだね」
「しかも、セディックさんも同じとかウケるし」
「ふふっ、寝惚けはネイトよりもセディーの方が酷いけれどね」
「それで、ネイサン様を起こそうとしてどうしたのですか?」
「ねえ様のお部屋に行ったら、誰もいなくて……ベッドも、全然使った感じがなくて……それで、ねえ様がまた、いなくなったんじゃないかって……」
「ああ、そりゃ悪ぃな。昨夜は久々にネイサンと話そうと思ったら、セディックさんもネイサンの部屋に来てさ? んで、一人部屋に三人は窮屈だって思って部屋移動したんだよ。だから、ネイサンに用意した部屋使ってないわ。んで、ネイサンは俺が起こした」
「くっ……兄様めっ」
「スピカ。父様はな、幾ら朝だからって、年頃の女の子が一人で男の部屋に行くのはどうかと思うぞ」
「そうね、スピカももう五歳の子供じゃないんだから。もう少し落ち着いた方がいいと思うわよ? まずは、その髪をなんとかしてらっしゃい」
「ぅ~……」
「あの、スピカ様が宜しければ、わたしに髪の毛を直させて頂けないでしょうか?」
「え? ケイトお姉様?」
「ご迷惑でないかしら?」
「わたし、ずっと一人っ子で。リヒャルトが生まれてからはお世話をしていますが、リヒャルトは男の子ですし。女の子の髪の毛をセットしたいと思っていたのです。ダメ、でしょうか?」

 きらきらした目で、期待するようにスピカを見詰めるケイトさん。

「け、ケイトお姉様がいいなら、お願いします……」
「まあ! それじゃあ、早速行きましょう! セディック様は……まだ寝惚けていそうですね。ではネイサン様、リヒャルトのことをお願いしますね!」
「ふふっ、任せてください。こちらこそ、スピカをお願いしますね? ケイトさん」
「勿論です! 絶対に可愛くして差し上げますので、楽しみに待っていてくださいね♪」
「いってらっしゃい、ケイト姉さま!」
「行って来ますね、リヒャルト」

 と、ケイトさんがうきうきとスピカを連れて行きました。

「ふふっ、ケイトさんも楽しそうねぇ。あなた達、今日はどうするの? わたしは、こっちの知り合いに食事に誘われているから出掛けて来るわ」
「そうですか。気を付けて行って来てください、おばあ様」
「ええ」
「って、いきなり普通に喋り出したっ!? 今さっきまでめっちゃぼんやりしてたのに!」
「ああ、一応さっきから起きていましたよ? 少し、眠たかっただけで」
「まぁ、起きてはいるんだよね。眠くて頭回らないだけで」
「ふふっ、この子達はいつもこうよ。それじゃあ、ロイ君。セディーとも仲良くしてあげてちょうだいね?」
「えっと、セディックさん次第ですが」
「ふふっ、それじゃあ行って来るわ」

 と、おばあ様はお出掛け。

「んで、なにするよ? リヒャルトだっけ? お前はなにしたい?」
「ぼくですか?」
「そうだなー。どうせなら、外でも遊び行くか?」

 わしゃわしゃとリヒャルト君の頭を撫でるロイ。

「お外ですか?」
「そうね……動物園でも案内してらっしゃい。ケイト様とスピカにも行くか聞いてみるわ」

 暫くして、みんなで動物園に行くことが決まった。

「いいか、ネイサン! 幾ら婚約者同士とは言え、スピカとは適切な距離を取るんだぞ! ロイも、ネイサンがスピカになにかしようとしたらすぐさま止めろ! これは命令だ! セディック君も、兄として弟のことを確りと見ているように! 兄として、弟の行動に責任を持つこと! リヒャルト君は、迷子にならないよう気を付けなさい」

 と、トルナードさんにキツく? 言われて、動物園に出発。

「ふふっ、兄としての責任……」
「え? 父上に小言言われてなに喜んでんの?」
「さあ?」

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