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しおりを挟む昼過ぎから宵の口まで続いたパーティーが終了し、
「また近いうちに来ますわ」
「僕達も数日はこっちにいますから、どこか遊びに行きましょうねっ?」
と、レイラ嬢とエリオットが帰って行って・・・
トルナードさんとミモザさんが、クロシェン家に滞在をと勧めたのでその言葉に甘えて今日はそのまま泊まることになった。
ちなみに、わたしが昔に使っていた部屋は子供部屋なので、今日は客間を使う。
軽食を食べてお風呂に入って――――
「よう、ネイサン」
「なんで君がここに?」
ロイがわたしの部屋にいた。
「なんつーの? 見張り、的な? 俺は必要無いっつったんだが、父上がなー。夜中にスピカんとこ行くの阻止しろってさ」
「・・・未成年に手は出さないよ?」
「ほほぅ、未成年じゃなけりゃ手ぇ出すのか。成る程」
ニヤリと揶揄うような顔が、
「っ……それは、スピカ次第。わたしは、スピカの嫌がることはしない」
わたしの返事で優しいお兄さんの顔に変わる。
「そっか。だよなー? 昔から、明らかにお前のがスピカを大事にしてたもんな」
そして、コンコンとノックの音。
「ネイトー、起きてる?」
「うん、どうぞ」
「一緒に寝な、・・・どうしてロイ君がここに?」
にこにことドアを開けたセディーの顔が、一瞬で作り笑いに変わる。
「ネイトになにか用でしょうか?」
「ネイサンに用、というよりは、父上の命令ですね」
「クロシェン伯爵の命令?」
「わたしが夜中にスピカの部屋に行かないように見張ること、だってさ」
「ネイトはそんなことしませんよ」
少しムッとしたように返すセディー。
「ええ、ネイサンはそんなことする奴じゃない。それは判っていますよ」
「ま、トルナードさんがそれで安心するならいいじゃない。ほら、セルビア伯爵がセディーにそわそわするのと同じでしょ」
「・・・わかりました。それじゃあ、ネイトは僕が見ているので、ロイ君は自分の部屋に戻ってくれて構いませんよ? ベッドも一つしかありませんし」
にっこりと微笑むセディーに、
「そういうワケにも行きませんので。というか、セディックさん。俺にだけ当たり強くありません? 俺、あなたになにかしましたか?」
苦笑気味に返すロイ。
「いいえ? 気のせいではありませんか? でも、そうですね・・・強いて言えば、小さい頃のネイトと兄弟のように過ごしたというあなたが至極羨ましいと言ったところですけど」
「・・・なぁ、ネイサン」
「なに? ロイ」
「なんでお前の周りって、ブラコンとかシスコンばっかなの? なんかこう、濃い人ばっかな気がすんだけど?」
「それをわたしに聞かれても・・・」
「ま、いいけどさ。んじゃあ、部屋変えるか。準備しろ、ネイサン」
「わかった」
「え? ネイト?」
「もっと大きい部屋に行きましょう。で、今日はちっこい頃のネイサンの話をしてあげますよ。それで勘弁してください。まぁ、聞きたくないってンなら、別にいいですが。どうします? セディックさん」
「・・・行きましょう」
と、部屋を移ることになった。
そして移動中、なぜか廊下が騒がしいことに気が付いた。
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