上 下
590 / 673

509

しおりを挟む


「ふぇ?」

 ルリア嬢とセディーに残念なものを見る視線を向けられ、きょとんと首を傾げるエリオット。

「ミラ姉様達やレイラ姉様の残した傷跡は、想像以上に深かったようですね……大丈夫です! たとえエル兄様の社交が壊滅的だろうと、ルリはレイラ姉様の責任を取って、エル兄様の分まで社交を頑張りますから!」
「え? ルリアちゃん?」

「ミラ……? エリオット君の姉君のミラベル様? と、レイラさん?」
「セディー、ちょっと……」

 事情を知らないセディーが首を傾げたので、ひそひそとエリオットが女性が苦手になった経緯をざっと説明。三人いる姉君達と、レイラ嬢を含めた四人に女の子扱いをされて育ち、そのせいで長いこと女性が苦手になり、女性のいない全寮制の騎士学校で出逢ったことを簡単に告げる。

「・・・まぁ、社交は学園内だけでするものじゃないからね。うん。別に社交が苦手でも、他にやり様は幾らでもあるからね。大丈夫だよエリオット君」

 さっきの圧は消え失せ、同情心溢れる優しい笑顔でぽんとエリオットの肩を叩くセディー。

「え? え? セディック様? さっきと言ってること違ってません?」
「まぁ、君がルリア嬢の助けになりたいと思うなら、社交を頑張ればいいんじゃない?」
「わかりました!」

 と、この日はエリオット、ルリア嬢、リヒャルト君、わたしでセディーの授業を受けることになった。

「ぅう……が、学園が始まったら、またハウウェル先輩に会えなくなっちゃうんですね……」
「そうしょんぼりしないでください、エル兄様。帰省が解禁になったら、ルリのおうちに来ればいいんです。これからはネイト兄様もルリとリヒャルト君と一緒にセディー兄様の授業を受けることになっているんですから、エル兄様がルリのおうちに来れば、定期的にネイト兄様とお会いできますよ」
「! そうなんですかっ!? ハウウェル先輩!」
「まぁ……三人まとめて、って言うか……」

 わたしも授業を一緒に受けることもあるし、なんだったらわたしがルリア嬢とリヒャルト君に授業をすることにもなる……らしい。セディー曰く、「ほら? 人に教えると、わかったつもりになっていることにも理解が深まるからね」とのこと。

「わかりました! なら、週末は絶対帰って来ます!」
「はい、待っていますねエル兄様♪」

 なんだか、エリオットをフィールズ公爵邸に呼び出す出汁だしに使われた気がしないでもないけど・・・

 まぁ、エリオットとルリア嬢がそれでいいならいいか。

 わたし、一言も毎週フィールズ公爵邸に来るとは言ってないんだけどね?

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰


 ルリア「ふふっ、これでエル兄様と毎週会えます♪」(*´艸`*)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【完結】彼が愛でるは、龍胆か水仙か……

月白ヤトヒコ
恋愛
お母様が亡くなり、お父様が再婚して新しい義母と義妹が出来て――――わたくしはいつしか使用人同然の扱いを受けていました。 それでも懸命に過ごし――――という、よくあるチープな物語みたいな状況に、わたくしはつい数ヶ月前までおりました。 けれど、これまた物語のような展開で、とある高位貴族のご子息とお知り合いになり、あれよあれよという間に、彼がわたくしの状況を、境遇を、待遇を全て変えてしまったのでした。 正義感が強くて、いつもみんなに囲まれて、人気者のあなた。わたくしを助けてくれた、王子様みたいな優しいあなた。彼と婚約できて、幸せになれると信じておりました。 けれど、いつの間にか彼は別の……以前のわたくしと似た境遇の女性と親しくしなっていました。 「……彼女は、以前の君のような境遇にある。彼女のつらさを、君ならわかってあげられる筈だ。だから、そんなことを言わないでくれ。俺は、彼女を助けてあげたいんだ。邪推はやめてくれ。俺は、君に失望したくない」 そう言われ、わたくしは我慢することにしました。 そんなわたくしへ、彼の元婚約者だった女性が問い掛けました。 「ねえ、あなた。彼が愛でるは、龍胆か水仙か……どちらだと思います?」と。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

処理中です...