上 下
589 / 673

508

しおりを挟む


 卒業式を終えた翌日から――――

 セディーとライアンさんの二人から色々と教わっている。

 ルリア嬢とリヒャルト君の領主教育のときにも、お邪魔させてもらうこともあって。

 フィールズ公爵邸に顔を出すと・・・

「いらっしゃいませ、セディー兄様、ネイト兄様」

 出迎えてくれたのはルリア嬢。

 ちなみに、ターシャおば様が出迎えるとお茶に誘いたくなるそうなので、セディーが家庭教師をするときには遠慮してもらっているそうです。帰る前には、お茶をしてからお見送りをしてくれるそうですが。

「こんにちは、ルリアさん」
「お邪魔します」
「いらっしゃいませっ! お久し振りです! 今日はこっちに来るって聞いたので、楽しみに待ってましたっ♪」

 にこにこと、犬ならきっと尻尾をパタパタ振っているだろう上機嫌な顔でわたしを出迎えたのは・・・

「こんにちは、エリオット君」
「はいっ、こんにちはですセディック様!」
「・・・」
「あ、あの、ハウウェル先輩、お久し振りです!」
「・・・お久し振りって程でもないよね?」

 卒業式から、まだ十日も経ってないような気がする。

「ええっ!! 僕達、あれからもう一週間以上会ってないんですよっ!?」
「卒業したら、普通はもっと長い期間会わないものだと思う」
「そ、そんなことないです! ほらっ、今会ってますよ!」
「まぁ、そうだけど・・・というか、あれだけ号泣しといて。すぐ会ってるし」

 『僕のこと忘れないでくださいね!』と、顔ぐちゃぐちゃで号泣して。それから十日も経たずに会うって、コイツ、気まずくなったり恥ずかしいと思ったりしないのかな?

「全然すぐじゃないですよ! 学園ではレザン先輩やメルン先輩、グレイ先輩とも毎日会ってたのに、一週間以上も会えないなんて寂しいじゃないですかっ!?」
「え~……」
「僕、今学園で一人なんですよっ!?」
「ああ……そう言えば君、学園ではわたし達にべったりで同学年の友人作ってなかったっけ」
「……エル兄様」
「エル兄さま、ひとりぼっちなんですか? それはさみしいですね」

 深い溜め息でエリオットを見やるルリア嬢と、エリオットの腰の辺りをぽんぽんと叩いてよしよしと宥めるリヒャルト君。

「エリオット君」
「はい、なんですか? セディック様」
「お友達、作ろうね?」
「ふぇ?」
「別に、ネイトやレザン君達みたいに仲良くなれるお友達じゃなくていいから、ちゃんと交流のできるお友達を作ろうね?」

 にっこりと、けれど若干圧のある笑顔でセディーが言う。

「公爵補佐予定の君が人付き合いが全くできないとなると、将来ルリアさんが苦労するでしょ?」
「ハっ!? そ、そうです……よね……」
「うん。だから、同級生である必要はないけど、交友関係は広げようね?」
「はいっ、わかりましたっ! ルリアちゃんのためにもがんばります!」
「・・・」
「どうかした? ネイト」
「ん~……なんというか、エリオットって学園では結構変人で通ってるから今から友人作るのも難しいかも? って思って」
「エリオット君が、変人? なんで?」
「ああ、セディーは知らないか。最近は大分マシになってるけど、エリオットって女性が苦手で。一年のときには、登校時から顔をストールでぐるぐる巻きにして、そのまま授業に出てたらしいんだよね」

 わたし達は学年が違うから、そのなんとも言えない授業風景を実際に見たワケじゃないけど。

「え?」
「その、不審者スタイルで一年以上過ごしてて。基本的に、エリオットが覆面状態のストールを外すのは男子寮内で過ごすときと食事のとき、乗馬クラブにいるときくらいなもので」
「え……」
「しかも、不審者扱いで人が寄って来ないのが楽だって笑ってたし。そんなエリオットが、今更友人募集したところで友人ができるのかな? って」
「エル兄様……」
「エリオット君……」
「ふぇ?」


__________


 卒業式、あれだけ泣いてたのに即行登場なエリオット。ꉂ(ˊᗜˋ*)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...