虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
584 / 673

503

しおりを挟む



「って、挨拶ってうちのお祖父様とおばあ様?」

 長身の男性二人を伴ったご婦人がお祖父様とおばあ様の方へ向かって行く。

「お、そうみたいだなー。ま、レザンが一番世話んなったっつーのがハウウェルなのは間違ってねーじゃん? どっちかっつーとハウウェル本人ってよかおにーさんとライアン先輩の方だけどさ」
「ああ、テスト関係ね」
「……俺達も、勉強では十分お世話になっているがな」
「そういう意味じゃ、ハウウェルんとこのおじい様とネヴィラ様んとこ先に行くのは間違ってないだろ。んで、その次がおにーさんとセルビア様んとこ」
「ケイト姉さまがレザン兄さまにおせわしたんですか?」
「おう、俺ら乗馬クラブの面子はみーんなセルビア様のお世話になってんの。それにしても、去年はセルビア様のご両親が生徒の父兄に囲まれてたけど、今年はハウウェルとレザンとこの父兄なのなー」
「……普通クラス以下の平民と下位貴族の父兄は、ハウウェルとレザンに感謝してもし切れんだろう。脅し取られた金銭も、被害者に順に返済されていると聞いた」
「おおっ、カツアゲ先輩のあれかー。すっげー、二年以上前のことが未だに感謝されてんのな」
「まだ返済の済んでいない被害者からしてみれば、終わったことではないだろう」
「そっかー」
「? ネイト兄さまとレザン兄さま、なにかすごいことをしたんですか?」
「おう。ハウウェルはな、悪ーいことしてた先輩をこう、ガツン! ってやっつけて、学園の平和を守ったのさ」
「テッド」
「ネイト兄さますごいです!」
「おう、悪者をぶっ飛ばしてたハウウェルはマジかっこよかったぜー」
「そ、それっ、僕も見たかったです……」
「ネイト兄さまはせいぎのみかたさんですかっ!?」

 きらきらと輝く見上げる瞳に、ニヤリと笑ったアホが答える。

「ふっふっふっ……いいか? リヒャルト、それは内緒のことなんだぜ」
「ハッ、わかりました! せいぎのみかたさんは、みんなにないしょでいいことをするんですね!」
「そーそー。いいか? セルビア様が学園で正義の味方をしていたことは、うちでは秘密にしておくんだぜ?」

 まぁ、ケイトさんも結構危ないこと(武器を携帯していたとは言え、ときに暴力を辞さない話し合い)をしていただろうから、ご両親に内緒にしていることは多いだろうけど・・・

「や、違うからね。リヒャルト君、テッドの冗談を真に受けないでください」
「え~? 間違ってねーじゃん。日々、学園の女の子達を守るために奔走していたセルビア様が困ってたら颯爽と、代わりに喧嘩買って、相手の野郎を撃退してたじゃんよ?」
「ね、姉さまもせいぎのみかたさんですかっ!?」
「もちろんだ。リヒャルトは去年のこと覚えてるか? セルビア様に、たくさんの人がお礼を言ってただろ?」
「はいっ」
「あれはなー、セルビア様に助けられた人と、そのご家族の方々だったんだよ」
「姉さますごいです! 姉さまかっこいいです!」
「だが……そんなセルビア様でも困ることがあった。それをどうにかしたのが、ハウウェルとレザンなんだぜ!」
「テッド、話盛り過ぎだから!」
「ハウウェル先輩もレザン先輩も、さらっと困ってる人の手助けができちゃうかっこいい人ですからね!」

 瞳をきらきらさせた子が増えた! さっきまで泣いてたクセに。

「ネイト兄さまもレザン兄さまもせいぎのみかたさん! ぼくも、かっこいいせいぎのみかたさんになれますかっ!?」
「ケイト様やハウウェル先輩、レザン先輩を目標にして努力を続けて行けば、きっとなれますよ!」
「ぼく、がんばります!」
「ぼ、僕もがんばります!」

 なんて話していたら、カツンとヒールの足音がした。

「ハウウェル様は、本日は踊られないのでしょうか? わたくしとの勝負はまだついておりませんことよ?」

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

処理中です...