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「って、挨拶ってうちのお祖父様とおばあ様?」

 長身の男性二人を伴ったご婦人がお祖父様とおばあ様の方へ向かって行く。

「お、そうみたいだなー。ま、レザンが一番世話んなったっつーのがハウウェルなのは間違ってねーじゃん? どっちかっつーとハウウェル本人ってよかおにーさんとライアン先輩の方だけどさ」
「ああ、テスト関係ね」
「……俺達も、勉強では十分お世話になっているがな」
「そういう意味じゃ、ハウウェルんとこのおじい様とネヴィラ様んとこ先に行くのは間違ってないだろ。んで、その次がおにーさんとセルビア様んとこ」
「ケイト姉さまがレザン兄さまにおせわしたんですか?」
「おう、俺ら乗馬クラブの面子はみーんなセルビア様のお世話になってんの。それにしても、去年はセルビア様のご両親が生徒の父兄に囲まれてたけど、今年はハウウェルとレザンとこの父兄なのなー」
「……普通クラス以下の平民と下位貴族の父兄は、ハウウェルとレザンに感謝してもし切れんだろう。脅し取られた金銭も、被害者に順に返済されていると聞いた」
「おおっ、カツアゲ先輩のあれかー。すっげー、二年以上前のことが未だに感謝されてんのな」
「まだ返済の済んでいない被害者からしてみれば、終わったことではないだろう」
「そっかー」
「? ネイト兄さまとレザン兄さま、なにかすごいことをしたんですか?」
「おう。ハウウェルはな、悪ーいことしてた先輩をこう、ガツン! ってやっつけて、学園の平和を守ったのさ」
「テッド」
「ネイト兄さますごいです!」
「おう、悪者をぶっ飛ばしてたハウウェルはマジかっこよかったぜー」
「そ、それっ、僕も見たかったです……」
「ネイト兄さまはせいぎのみかたさんですかっ!?」

 きらきらと輝く見上げる瞳に、ニヤリと笑ったアホが答える。

「ふっふっふっ……いいか? リヒャルト、それは内緒のことなんだぜ」
「ハッ、わかりました! せいぎのみかたさんは、みんなにないしょでいいことをするんですね!」
「そーそー。いいか? セルビア様が学園で正義の味方をしていたことは、うちでは秘密にしておくんだぜ?」

 まぁ、ケイトさんも結構危ないこと(武器を携帯していたとは言え、ときに暴力を辞さない話し合い)をしていただろうから、ご両親に内緒にしていることは多いだろうけど・・・

「や、違うからね。リヒャルト君、テッドの冗談を真に受けないでください」
「え~? 間違ってねーじゃん。日々、学園の女の子達を守るために奔走していたセルビア様が困ってたら颯爽と、代わりに喧嘩買って、相手の野郎を撃退してたじゃんよ?」
「ね、姉さまもせいぎのみかたさんですかっ!?」
「もちろんだ。リヒャルトは去年のこと覚えてるか? セルビア様に、たくさんの人がお礼を言ってただろ?」
「はいっ」
「あれはなー、セルビア様に助けられた人と、そのご家族の方々だったんだよ」
「姉さますごいです! 姉さまかっこいいです!」
「だが……そんなセルビア様でも困ることがあった。それをどうにかしたのが、ハウウェルとレザンなんだぜ!」
「テッド、話盛り過ぎだから!」
「ハウウェル先輩もレザン先輩も、さらっと困ってる人の手助けができちゃうかっこいい人ですからね!」

 瞳をきらきらさせた子が増えた! さっきまで泣いてたクセに。

「ネイト兄さまもレザン兄さまもせいぎのみかたさん! ぼくも、かっこいいせいぎのみかたさんになれますかっ!?」
「ケイト様やハウウェル先輩、レザン先輩を目標にして努力を続けて行けば、きっとなれますよ!」
「ぼく、がんばります!」
「ぼ、僕もがんばります!」

 なんて話していたら、カツンとヒールの足音がした。

「ハウウェル様は、本日は踊られないのでしょうか? わたくしとの勝負はまだついておりませんことよ?」

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