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しおりを挟む「・・・成る程、それもいいですね。では、リヒャルト君。ネイトをお願いしてもいいですか?」
真剣な顔で頷いたセディーが、しゃがみ込んでリヒャルト君と視線を合わせて言う。
まぁ、セディーがケイトさんじゃなくてわたしと入場するより、その方がいいよね。
「わかりましたっ、ぼくがネイト兄さまとごいっしょします! いきましょう、ネイト兄さま!」
「ええ、よろしくお願いしますね、リヒャルト君」
「はい!」
と、セディーがケイトさんをエスコトート。わたしはリヒャルト君と手を繋いで会場入りをした。
「可愛らしいリヒャルトがお綺麗なネイサン様と仲良く並んでいる姿は、いつ見ても本当に可愛らしいですね」
「そうですね。盛装姿の二人が並んでいる姿は、とってもレアですからね」
「ええ、いつまでも見ていられます」
「はい」
なんて、そんな幸せそう? な二人を余所に、
ひそひそ話す声が・・・
まぁ、うん・・・間違ってはいないと思います。
小さい手を引いて会場へ入ると、早速お祖父様とおばあ様が他の父兄の方に囲まれて挨拶されています。セディーとケイトさんも、卒業生の兄姉と見られる方々に囲まれて挨拶を受けています。
実はセディー、ケイトさんとはまた違った感じに後輩の方に慕われているみたいだからなぁ。こっちにちらちらと視線を向けないで、ちゃんと相手してあげた方がいいと思う。
さて、どうしようかと会場を見回すと、
「ハウウェルせんぱいっ!!」
えぐえぐと号泣しながら、わたし達の方へ突進して来たエリオットに抱き付かれた。
「わっ、ちょっ、エリオットっ!?」
「ぅうっ……そ、そつぎょ、おべで、とっ……ござい、ばすっ」
「エル兄さま、そんなにないてどうしたんですか?」
「おーおー、なんとも熱烈なお祝いだなー? でもよ、フィールズ。俺とリールもいたりするんだけどなー。な、リール」
「……いや、俺は別に」
「……はい~、み、みなさんと、もうあえないかとおもったら……ぼく、うぅっ……」
「はいはい、離れる。盛装してんだから、鼻水付けないでよ」
「ハッ、エル兄さま。ハンカチをどうぞ!」
「うう、ありがとうございばず、リヒャルトくん」
ハンカチを差し出したリヒャルト君によしよしされるエリオット。幼児に慰められるってどうなの?
「お兄さまたち、おひさしぶりです」
「おう、リヒャルト! 久しぶりー、っつーことは、セルビア様も来てるってことか」
と、なぜかきょろきょろと辺りを見回すテッド。
「どうしたんですか? テッドにーちゃん」
「やー、ハウウェルのおにーさん達の姿が見えないなーって」
「セディーとケイトさんは、あっちで父兄というか、卒業生の兄姉の方々に囲まれてる」
「おおっ、そういうことか。うちも、兄ちゃんと姉ちゃんが挨拶回りしててさー」
「テッドにーちゃんのお兄さまとお姉さま、ですか?」
「おう、うちは今日……つか、卒業入学シーズンなんかは盛装売れ捲りで父さん母さんが忙しくてさ。兄ちゃんと姉ちゃんが来てんの。後で、ハウウェルのおにーさんに挨拶しに行くかも。リールは、ばーちゃん来てんの?」
「……一応、卒業式には顔を出していた」
「そっか、よかったな!」
「ああ」
「ちなみ、レザンんとこはお母さんと一番上の兄ちゃんとが来てたんだってよ。んで、お母さんと兄ちゃんに連れられてあちこち挨拶回りだってさ」
と、くいっとテッドが向けた視線の先に見慣れた長身と、見慣れない男性とご婦人の姿。
「って、挨拶ってうちのお祖父様とおばあ様?」
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