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しおりを挟む卒業式は――――カラッと晴れて澄んだ空になった。
まぁ、空は晴れていたんだけど・・・
なんか、知らないうちにわたしは結構慕われていたらしい。
ぐすぐすと啜り泣きの聞こえる卒業式だった。
去年みたいに、在校生の女子生徒の大半が泣くという事態になったケイトさん程じゃないけど、惜しんでくれる後輩はそれなりにいたらしい。ただ・・・
「ううっ、ケイト様に引き続いてハウウェル様までご卒業っ……」「あの麗しいお顔を、もう学園で拝見することが叶わなくなってしまうなんてっ」「これからなにを楽しみに学園に通えばいいというの!」「クロフト様と並んでいる姿を目に焼き付けておかなきゃ!」「メルン先輩と馬鹿話してると、あの人も普通の男子なんだって思えたのに」「フィールズ様と並ぶお姿も見納めなのね……」「新しい扉を開いて頂いたことへの感謝を……」「嗚呼、一度でいいから鞭打たれたかった」「俺、ハウウェル様なら、男でもイケると思うんだ」「氷の女帝」「フィールズ様を可愛がるハウウェル様……」
なんだろ……変な声がしてるような気がするのは……う~ん……これは慕われてる、のか?
と、なんとも微妙な気持ちで式が終わり、一度寮に戻って盛装に着替えてパーティー会場へ行くと――――
「ネイト~っ、卒業おめでとうっ!」
ぎゅ~っとセディーにハグされた。
「ネイサン様、ご卒業おめでとうございます」
「おめでとうございます、ネイト兄さま」
ケイトさんとリヒャルト君からもお祝いの言葉。
「来てくれたんですか、ありがとうございます」
「ええ」
「セディー兄さまがつれてきてくれました!」
「もう、セディーが誰よりも先に泣いちゃうものだから、涙が引っ込んじゃったわ」
「いいではないか、ネヴィラ。おめでとう、ネイト」
クスクス笑うおばあ様と、苦笑するお祖父様。
「来てくれてありがとうございます。おばあ様もお祖父様も」
「それじゃあ、行こうか」
と、ナチュラルにわたしの手を引いて歩こうとするセディー。ついそのまま歩こうとして、ハッ! とした。危ない、と我に返る。
「や、セディー。ここはわたしじゃなくて、ケイトさんをエスコートすべきでしょ」
「ええっ!? だって、去年ケイトさんはリヒャルト君にエスコートしてもらったって!」
「それはそれ、これはこれ。正式な婚約者同士なんだから、ちゃんとする」
「・・・どうしても、だめ?」
しゅんとしたブラウンが、懇願するようにわたしを見下ろす。
「そんな目で見ても、駄目なものは駄目」
「セディー、我儘を言うな」
「すみません」
お祖父様の言葉に渋い顔でセディーが謝る。
「ふふっ、セディック様は本当にネイサン様がお好きなんですね。それなら、リヒャルト。ネイサン様とご一緒してくれますか? どうでしょう? セディック様、リヒャルトとネイサン様が並んでいる姿はとっても可愛らしいと思うのです!」
きらきらした優しい瞳でわたしとリヒャルト君へ向けた視線から、キリっとした真剣な表情へ変えてセディーへ提案するケイトさん。
「・・・成る程、それもいいですね。では、リヒャルト君。ネイトをお願いしてもいいですか?」
__________
すみません。気温差にやられてました。咳とくしゃみしをし過ぎると、頭と目が痛くなって……(-""-;)
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