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しおりを挟むある日のことだった。
乗馬クラブの部員に呼び出された。
普段はあまり接点の無い同級生だったけど、なにやらわたしに大事な話があるとか。
どことなく、既視感があるような……? とは思いつつ、大事な話というので呼び出しに応じた。すると――――
「ハウウェル様……このようなこと、ハウウェル様には迷惑だとわかっております。ですが、卒業してお会いする機会がなくなってしまうと思うと、居ても立っても居られなくなってしまいまして……なので、わたしのこの想いをお伝えすることをどうかお許しください!」
と、赤く染まった顔で告げられた。ちなみに、同級生の彼は男子生徒だ。
わたし、男に興味は無いんだけどなぁ。
「わたしがハウウェル様へ、初めて胸の高鳴りを覚えたのはそう……二年前の交流会で、ケイト様へ絡んでいる男を変態呼ばわりして大層恥を掻かせて撃退していたときのことでした。イキイキとした麗しい表情で、鋭い舌鋒を披露した美しいお姿を拝見して以来、ハウウェル様の酷薄で嗜虐的な笑みを拝む度、背筋をゾクゾクとさせて頂いたものです。嗚呼……公衆の面前でハウウェル様に詰られて、罵倒されているのがわたしだったら、と。罵倒され、扱き下ろされる彼らが妬ましくて堪らなくなったものです」
・・・わたしは、一体なにを聞かされているんだろうか?
とりあえず、やっぱり『ケイト様を見守る会』会員だったかっ!?
・・・帰ろ。
「あ、わたしにそういう趣味は無いので失礼します。では、こういうことでは二度と話し掛けないでくださいね」
「嗚呼っ、麗しいご尊顔でそういう冷たくつれないところもまた魅力的です!」
背後からなんか言ってるけど、聞こえない振り。いや、なにも聞こえてない!
「ちなみに、我らが『見守る会』で在学する会員一同は、これからのレイラ様とミシェイラ様のことを見守って行くことを決めましたのでご安心くださいハウウェル様!」
・・・安心って、なんだろう? 『見守る会』の人達は本当に見守るだけで、なにかをすることは殆ど無いというのに。
まぁ、『見守る会』の会員の人達は平民から高位貴族令息、更には教職員も交じっているそうで・・・普段は、大抵の人が紳士的な人で通っているのだとか。一応、ケイトさんがなんらかの危機に陥ったときには助けるという手筈は整えているとか言う話ではあるけど。ちなみに、ケイトさんが危機に陥ったことはないそうで。『ケイト様を見守る会』発足以来、ずっとケイトさんの勇姿を見守り続けていた、のだとか。
見てるだけでなにもしてはいない『見守る会』だけど、地位のある彼らが動かないことでなんらかの影響はあるのかもしれない。好意的に見ると、ではあるけどね?
そんな一幕があって――――
あっという間に卒業式・・・
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