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しおりを挟む「ああ、あっちは却下」
「駄目、でしょうか?」
「うむ。駄目だな。フィールズは、フィールズ嬢の言いなりになるのが目に見えている」
前に比べるとエリオットは、レイラ嬢を見るなり逃げ出す程酷くはないし、ちゃんと顔を見て嫌なことは嫌だと言えるようにはなっている。けど……
「一応、エリオットは頑張ればレイラ嬢の暴走を止められなくもないけど、身内で固まるのは良くない、でしょ?」
「ぅ……その節は、申し訳ありませんでした」
「ふふっ、別にわたしの方は気にしてないけど。でも、二人はイトコ同士だからね。以前の君が思ったように、身贔屓だと思われることもある」
「はい」
「それに、来年度の部長副部長を全員三年生にしちゃったら、翌年の部長になる子が困るでしょ」
「そ、そうでしたね。わたくしの、次の部長のことも考えなくてはいけませんでしたね」
「うむ」
「一応、わたしとレザンでもう一人の方は考えるけど、君の方でも候補がいたら教えてほしい」
「? クロフト様とハウウェル様がお決めにならないのですか?」
「次の部長がアンダーソン嬢だ。俺達が決めたとして、あなたとの相性が悪ければ意味が無い。だから、最終的に人事を決めるのはあなただ」
「わかり、ました」
アンダーソン嬢からの副部長への打診を、レイラ嬢は快く引き受けてくれた。
「あまり乗馬は上手くはありませんが、ミシェイラを守ることくらいは容易くてよ。お任せください!」
と、胸を張って。
「レイラ様っ……ありがとうございますっ」
レイラの言葉に感激するアンダーソン嬢。
うん・・・なんだか不安だ。
それから、一年の男子部員をよくよく観察することにした。
レイラ嬢へビクビクしている男子が多い中、女子生徒へ特に敵愾心を持つでもなく、人あしらいが上手い子がいた。乗馬の腕はそんなに上手い方ではないけど、この子ならどうかと、レザンへ確認を取る。
「ふむ……悪くはないと思うぞ」
「そう。なら、副部長候補はあの子で決まり。で、どっちが行く?」
「では、俺が行こう」
「それじゃあ、よろしく」
「うむ」
と、レザンが副部長への打診に向かうことになった。そして、返事は・・・
「受けてもいいとは答えてもらえたが、身分が大丈夫なのかと聞かれた」
「身分?」
「うむ」
なんでも、実家はキャバンを組んで他国へ商売へ行くくらいの大きな商家だそうで。爵位は無し。
キャラバンや買い付けなどの移動は基本馬車だそうだけど、馬に乗れた方が便利だと思った為、乗馬を習うことにしたのだとか。
それ、下手な下位貴族より力ある家なんじゃ……? と、喧嘩を売ったらまずいことになる気がひしひしとする。まぁ、実家が商家なら、そりゃあ人あしらいは上手くもなるだろうと納得もした。
ちなみに、商家の子で人あしらいが上手いと言っても、テッドみたいにちゃらちゃらしたいい加減な性格はしていない。安心だ。
「まぁ、大丈夫なんじゃない? というか、次期部長がアンダーソン嬢で、もう一人の副部長がレイラ嬢だと知って、引き受けてくれるような度量の広い男子は他にいないでしょ」
なにせ、『乗馬クラブの暴君』と、その『暴君の宰相』と恐れられている二人だ。この二人と進んで肩を並べたいという男子は、そうそういない。
一応、次期部長と副部長に立候補したい、という男子がいなかったワケじゃない。
呼び止められて話をされて・・・まぁ、あれだ。次の部長と副部長の一人があの二人に決まっていると告げた時点で、「冗談ですっ、お手間を取らせてすみませんでした!」と、青い顔で脱兎の如く逃げられること数回。立候補した人でさえ、この体たらく。
「ふむ……」
__________
宣伝。
短編を投稿しました。
タイトルは、『数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた』です。
タイトル通りのコメディー。前中後の三話です。
実は『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』の方とちょっと繋がってます。そっちを読んでなくても全然大丈夫ですが、興味のある方は『月白ヤトヒコ』の作品リンクから飛べるので、覗いてやってください。(*>ω<*)
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