574 / 673
493
しおりを挟む「ああ、あっちは却下」
「駄目、でしょうか?」
「うむ。駄目だな。フィールズは、フィールズ嬢の言いなりになるのが目に見えている」
前に比べるとエリオットは、レイラ嬢を見るなり逃げ出す程酷くはないし、ちゃんと顔を見て嫌なことは嫌だと言えるようにはなっている。けど……
「一応、エリオットは頑張ればレイラ嬢の暴走を止められなくもないけど、身内で固まるのは良くない、でしょ?」
「ぅ……その節は、申し訳ありませんでした」
「ふふっ、別にわたしの方は気にしてないけど。でも、二人はイトコ同士だからね。以前の君が思ったように、身贔屓だと思われることもある」
「はい」
「それに、来年度の部長副部長を全員三年生にしちゃったら、翌年の部長になる子が困るでしょ」
「そ、そうでしたね。わたくしの、次の部長のことも考えなくてはいけませんでしたね」
「うむ」
「一応、わたしとレザンでもう一人の方は考えるけど、君の方でも候補がいたら教えてほしい」
「? クロフト様とハウウェル様がお決めにならないのですか?」
「次の部長がアンダーソン嬢だ。俺達が決めたとして、あなたとの相性が悪ければ意味が無い。だから、最終的に人事を決めるのはあなただ」
「わかり、ました」
アンダーソン嬢からの副部長への打診を、レイラ嬢は快く引き受けてくれた。
「あまり乗馬は上手くはありませんが、ミシェイラを守ることくらいは容易くてよ。お任せください!」
と、胸を張って。
「レイラ様っ……ありがとうございますっ」
レイラの言葉に感激するアンダーソン嬢。
うん・・・なんだか不安だ。
それから、一年の男子部員をよくよく観察することにした。
レイラ嬢へビクビクしている男子が多い中、女子生徒へ特に敵愾心を持つでもなく、人あしらいが上手い子がいた。乗馬の腕はそんなに上手い方ではないけど、この子ならどうかと、レザンへ確認を取る。
「ふむ……悪くはないと思うぞ」
「そう。なら、副部長候補はあの子で決まり。で、どっちが行く?」
「では、俺が行こう」
「それじゃあ、よろしく」
「うむ」
と、レザンが副部長への打診に向かうことになった。そして、返事は・・・
「受けてもいいとは答えてもらえたが、身分が大丈夫なのかと聞かれた」
「身分?」
「うむ」
なんでも、実家はキャバンを組んで他国へ商売へ行くくらいの大きな商家だそうで。爵位は無し。
キャラバンや買い付けなどの移動は基本馬車だそうだけど、馬に乗れた方が便利だと思った為、乗馬を習うことにしたのだとか。
それ、下手な下位貴族より力ある家なんじゃ……? と、喧嘩を売ったらまずいことになる気がひしひしとする。まぁ、実家が商家なら、そりゃあ人あしらいは上手くもなるだろうと納得もした。
ちなみに、商家の子で人あしらいが上手いと言っても、テッドみたいにちゃらちゃらしたいい加減な性格はしていない。安心だ。
「まぁ、大丈夫なんじゃない? というか、次期部長がアンダーソン嬢で、もう一人の副部長がレイラ嬢だと知って、引き受けてくれるような度量の広い男子は他にいないでしょ」
なにせ、『乗馬クラブの暴君』と、その『暴君の宰相』と恐れられている二人だ。この二人と進んで肩を並べたいという男子は、そうそういない。
一応、次期部長と副部長に立候補したい、という男子がいなかったワケじゃない。
呼び止められて話をされて・・・まぁ、あれだ。次の部長と副部長の一人があの二人に決まっていると告げた時点で、「冗談ですっ、お手間を取らせてすみませんでした!」と、青い顔で脱兎の如く逃げられること数回。立候補した人でさえ、この体たらく。
「ふむ……」
__________
宣伝。
短編を投稿しました。
タイトルは、『数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた』です。
タイトル通りのコメディー。前中後の三話です。
実は『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』の方とちょっと繋がってます。そっちを読んでなくても全然大丈夫ですが、興味のある方は『月白ヤトヒコ』の作品リンクから飛べるので、覗いてやってください。(*>ω<*)
0
お気に入りに追加
732
あなたにおすすめの小説
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる