563 / 673
482
しおりを挟む「ああ、そう言えばそんなこともあったねぇ」
去年の交流会は、ケイトさんがわたしのパートナーを務めてくれて、新しいドレスと靴をセディーがプレゼントして、それらを身に付けてくれたケイトさんをエリオットとレイラ嬢が気遣って……
ケイトさんにダンスを申し込んだテッドに、ケイトさんの代わりをエリオットが勝手に引き受けて、男同士で踊ってすっごく目立っていた。
まぁ、アレはレイラ嬢のエリオットへの女性避けという気遣いも含まれていたんだけどね。なんでも、女性よりも女性パートを上手く踊れる男へダンスを申し込むのはハードルが高い、のだとか。
「……なら、そのアンダーソン嬢とやらに申し込んで来たらどうだ? 交流会で踊った相手が男だけ、なんて思い出しか残らんぞ?」
ぼそりと、リールが言った。
「っ!! なん、だとっ……そ、そんなことは……こ、交流会はまだあと一回残って」
「……次も、パートナーがいるとは限らないぞ?」
「ぐはっ!!」
なにやら、リールの言葉がクリティカルヒットしたようで胸を押さえるテッド。
「そして、その次は卒業パーティーだ」
「・・・わかった。行って来るっ!!」
と、テッドは皿を置いてフロアへ向かった。
「・・・大丈夫かな?」
「? なにがだ?」
「や、結構食べてたみたいだから。動くと気持ち悪くならないかな? って。やけ食いの後のダンス」
テーブルに重なっている皿を指すと、
「・・・無理なら、戻って来るだろう。多分」
リールはすっと視線を逸らした。
まぁ、ワルツならそんなに激しい動きじゃないから……うん。無事を祈っておこう。と、遠い目になっていたら、
「ハウウェル先輩っ!」
弾む息でこっちにやって来るエリオット。
「あら、お二人ですか? メルン先輩がいませんわね。珍しい」
わたしとリールの左右を見て、アホがいないことに首を傾げるレイラ嬢。
「あれ? そう言えばメルン先輩は?」
「ああ、テッドならアンダーソン嬢にダンスを申し込みに行った……と思ったけど、どうしたの? テッド」
「あ、メルン先輩。もう踊って来たんですか?」
キリっとした顔で戻って来たテッドが、
「ふっ……ダンスするの久し振りだから、ちょっと練習に付き合ってくれフィールズ!」
エリオットにダンスを申し込んだ。
「ふぇ? えっと、わかりました! それじゃあ、ちょっと行ってくるね、レイラちゃん」
「ええ。行ってらっしゃい」
さっきは、去年エリオットと踊らされたと言っていたクセに。まぁ、エリオットとそのパートナーのレイラ嬢がいいって言ってるんだからいいのかな?
そして、去年同様に注目を浴びながらの男同士のダンス。キャッと嬉しそうな声がしたような? 男同士のダンスを見ても……面白い、か。ウケ狙いやなにかの出し物と思われているのかもしれない。
「ふふっ、これで今年もエリオットにダンスを申し込む子はいなくなりますわ」
レイラ嬢的には、ルリア嬢の為にエリオットの虫除けができればそれでいいのだろう。
リールは、にこにこと上機嫌なレイラ嬢に少し引いている。
「あら、メルン先輩も去年よりは上手くなりましたわね」
「ああ、去年フィールズ伯爵家の別荘に遊びに行ったとき、ダンスの特訓をしましたから」
「そうでしたか」
なんて話していたら、急に二人の動きが止まった。
「あら、どうしたのかしら?」
「……やけ食いの後のダンスは、やはり危険だったか」
「まあ……」
ぼそりとした声に、テーブルに目を落として苦笑するレイラ嬢。
そして、エリオットに支えられてテッドが戻って来た。
「……ぅえ……きもち悪……」
「大丈夫ですか? 保健室に行きますか? メルン先輩」
「ゃ、すこし……休めば、だいじょう……ぶ……」
口を押さえ、顔色の悪いテッド。
「……ィールズ。頼みが、ある……」
「はい、なんですか? なんでも言ってください!」
「おれの、かわりに……」
ふっ、と弱々しい笑みを受かべながら……
「はい、メルン先輩の代わりに?」
「ハウウェルと……おどってやって、くれ」
「わかりました!」
「は?」
__________
ただでは引っ込まないテッド。(*`艸´)
0
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった
あとさん♪
恋愛
学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。
王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——
だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。
誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。
この事件をきっかけに歴史は動いた。
無血革命が起こり、国名が変わった。
平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。
※R15は保険。
※設定はゆるんゆるん。
※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m
※本編はオマケ込みで全24話
※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話)
※『ジョン、という人』(全1話)
※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話)
※↑蛇足回2021,6,23加筆修正
※外伝『真か偽か』(全1話)
※小説家になろうにも投稿しております。
【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる