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「この、裏切者めっ!?」

 また騒いでいるのかと、呆れながら目を向けると・・・

「ハウウェルに続いて、なんて酷い裏切りだっ!? お前は三年間一切女っ気ゼロでっ、交流会には俺達とずっと一緒にいるものだと思っていたのにっ!!」

 と、なんかアホらしいことを・・・っ!?

「れっ、レザン先輩がアンダーソン嬢をエスコートしてるっ!?」

 制服姿でアンダーソン嬢をエスコートするレザンに向かい、絶望したと声高に噛み付くテッド。至極迷惑そうな顔で、それでもなんとかテッドを宥めようとしているリール。

 まぁ、レザンが女性をエスコートしている姿にはわたしもかなり驚いたけど・・・レザン。エスコート、できたんだ。

 でも、そんなに怒ることかなぁ? この並びって、普通に乗馬クラブの部長と副部長だし。

「あら、ミシェイラはちゃんとクロフト様をお誘いできたようですわね。でも、メルン先輩は一体なにをあれ程怒っていらっしゃるのかしら?」
「う~ん……仲間外れの気分になったとか?」
「それなら、ご自分も誰かをお誘いすれば宜しいのに。どうしてお誘いしないのかしら?」
「そうだよねー」

 うんうんと頷き合う天然な二人。きっと、テッドが聞いていたら噴飯物だろう。いや、エリオットはかく、レイラ嬢にはなにも言い返せないか。

「お、お前、まさか、乗馬クラブ部長の権限で副部長ちゃんを無理矢理誘ったのかっ!?」
「いや、普通にアンダーソン嬢にエスコートを頼まれたのだが」
「はあっ!? 女の子に誘われたって言うモテ自慢か貴様ぁっ!?」

 なんかもう、既にめんどくさい絡み方してるなぁ。こんなとこで騒ぐから、人目に付いてるし。

「えっと、その、メルン先輩? どうしちゃったんですか?」

 アンダーソン嬢が困っている。仕方ない。

「すみませんが、アホをどうにかして来ても宜しいでしょうか?」
「え? ええ、どうぞ」

 パートナーに一言断って、

「ウルサい!」

 ゴスっとテッドの頭をど突いた。

「うぎゃっ!? っ……なにすんだハウウェルっ!?」

 頭を押さえて涙目で振り返るテッドに、

「このアホが。入口前で騒いで、アンダーソン嬢に恥掻かせるな」

 低く吐き捨てる。

「ハっ!? いや、その、俺は副部長ちゃんに恥を掻かせるつもりは全くなくて! えっと、すんませんっしたっ!!」

 と、潔くアンダーソン嬢へ頭を下げるテッド。

「すみません、アンダーソン嬢。この時期になると、変な言動や奇行が増えるみたいで」
「いえ、先輩方はとっても仲が宜しいんですね」

 にこりと大人の対応を見せるアンダーソン嬢。

「それじゃあ、さっさと会場入りしちゃいなよ。後ろつかえてるんだからさ」
「うむ。では、行くぞ。アンダーソン嬢」
「はい」

 と、差し出したレザンの腕へそっと手を乗せるアンダーソン嬢。

「くっ……なんて酷い裏切りだっ!!」
「……まだ言うか」

 溜め息混じりのリール。

「テッド」
「はいっ!! なんでありましょうかっ!?」
「君。さっきのアレで、目を付けられたみたいだよ」
「ん? なんに?」

 チラッと、『見せ付けカップル許すまじっ!!』な自主警備員の方へ視線を向けると、

「っ!?」

 険しい表情でギロリと剣呑な視線がバチッ! と合ったテッドの肩がビクっと跳ねた。

「問題を起こさないように。そして、女子に絡んで恥を掻かせるなど言語道断!」

 それはそれは低い声での忠告。

「はい!」
「だが、我々はいつでも同志を歓迎する」

 ぽん、と優しくテッドの肩を叩いた彼は歴戦の猛者の如く鋭い目付きで颯爽と歩いて行った。

「え? えー……やー、その、俺あっち側はマジ勘弁なんだけど……」
「……こんなところで騒ぐからだろ。全く」

 と、アホな一幕がありつつ、会場入りをした。


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