虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
558 / 673

477

しおりを挟む


 金曜にはうちに帰って、セディーの元気そうな姿を見て安心した。

 心配掛けてごめんと謝るセディーに、無茶はしないでちゃんと身体を労るようにと約束させた。

 アホ共からセディーにと押し付けられたお見舞いの品々を渡すと、少し困ったような照れ笑い。

 そして、

「ありがとうね、セディー」

 にこにこと上機嫌なブラウンを見据えてお礼を言う。

「? お礼をするのは僕の方じゃない?」
「ああ、そっちじゃなくて。わたしの為に動いてくれてありがとう。本当はあんまり無茶してほしくないんだけど・・・でも」

 こんなこと言うのは自分でもどうかとも思うけど、でも・・・

「セディーがあの人達との縁を切ってくれて・・・嫌な役目をさせたとも思ってる。でも、嬉しかった。ありがとう、セディー」

 両親あの人達と長く暮らした分、わたしよりもセディーの方がつらい思いをしただろうに。

「そっか・・・ふふっ、ネイトに喜んでもらえたなら僕もがんばった甲斐があるよ」

 どこかサッパリしたような表情で清々しく笑うセディー。そして、

「あーあ、さっさと手続き終わらないかなぁ。戸籍が宙ぶらりんだと、書類書くとき困るんだよねぇ」

 なんだか不思議なことを言い出した。

「え? あれ? セディーはもう、とっくに侯爵家の戸籍に入ってるんじゃないの?」
「ううん。戸籍上とは言え、僕とネイトが他人になるのは嫌だったから。僕もネイトと一緒に子爵家の戸籍から抜いてもらう予定」
「ええっ!?」
「というワケで、僕もネイトと一緒にお祖父様とおばあ様との養子縁組手続きするから」

 にこにこと、セディーがアホっぽいことを言っている気が・・・

「まぁ、それまで書類にサインできないからゆっくりしなさいってお祖父様に言われちゃったんだよねぇ」

 う~ん……それは、結果オーライなのかな?

「明日、明後日は本当に予定が無いんだ。僕と一緒に遊んでくれる? ネイト」

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰

 それから少しして――――

 セディーとわたしは仲良く? 並んでお祖父様とおばあ様の子供になった。戸籍上の。

 ちなみに、長男のエドガー・ハウウェルの戸籍は抹消。伯母様も嫁いでいるので戸籍が抜けていて、長男がセディック、次男がネイサンとなっている。

 子爵家次男だったわたしは、侯爵家の次男になった。

 なんだろう、こういうのもクラスアップ? って言うのかな?

 とりあえず、セディーが侯爵家嫡男なのは変わらないけど。

 まぁ、あれだ。爵位が上がると、寄って来る人が増えるんだね・・・

 『変な人とは付き合わないこと!』と、セディーを筆頭にお祖父様おばあ様から口酸っぱく注意されました。

 うん。わかってる・・・

 まぁ、アレだ。一年のときにわたしを軍の諜報部に勧誘しようとしていたアルレ嬢程にヤバい人は、今のところいないのが救いだ。

 うん。日中逃げ回っていたら、夜中に人の部屋の窓にへばり付いているようなガッツがあるというか……ホラーな感じの体験はしてないし。

 次点が、夜通し人の部屋の前に立って、朝っぱらから人に打ち合いを挑んで、嫌だと言ったら無理矢理引き摺って付き合わせたどこぞの脳筋かなぁ。

 ああいうのを越える程の変人は、絶対に出てほしくないなぁ。両方共、軍事関係者なのがなんとも言えない。

 『ケイト様を見守る会』の人達は・・・論外!

 とりあえず、侯爵家次男になったから強引な勧誘は無いと思いたいけど。

 それ以外の要注意と言えば、わたしのは婚約者がいると周知しているにもかかわらず、擦り寄って来るお嬢さん達か。

 一応、レイラ嬢やアンダーソン嬢と言った、乗馬クラブの関係者やケイトさんのお知り合いの令嬢達が目を光らせているという話だけど。

 まぁ、普通に節度ある行動を心掛けていればOKだよね。

 わたしにはスピカがいるんだから!


__________


 普通に予測していた方は多いでしょうが、ネイサンは『子爵家次男』から無事、『侯爵家次男』にクラスアップ? しました。(*’ω’ノノ゙☆パチパチ

 って、拍手でいいのかな?(੭ ᐕ))?

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。 マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。 ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。 シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。 ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。 しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。 ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。 そうとも知らないビートは…… ※ゆるゆる設定です

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

処理中です...