虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
550 / 673

番外。エドガー(おとん)視点。5

しおりを挟む


 セディックと名付けた。

 セディックは少し身体が弱いようだ。よく泣いて煩い。赤ん坊は、泣くことで不調を知らせるというが・・・死なないように気を付けなければ。

 セディックの体調が悪くてぐずると、メラリアが一緒になって泣く。そして、僕に慰めてほしそうに、構ってというアピールをする。これには、少し困った。

 ベテランの乳母を雇い、

「高位貴族夫人になるメラリアが、自分でセディックの世話をしなくていい。乳母に任せればいいんだ」

 そう言った。

 やっぱり、子守は慣れている者に任せればいい。

 子供は、特に男の子は小さい頃は身体が弱くても、成長するにつれ段々と丈夫になる、と医師も乳母もそう言っていた。

 現に、セディックは少し虚弱な程度で、特定の病気や日常生活に支障が出たりするような重病に罹っているワケじゃない。なら、このまま様子見でいいだろう。

 セディックが乳児期を脱した頃、メラリアの再びの妊娠が判った。

 不安定なメラリアに子守は無理だと判断して、乳母の他に侍女をセディックに付けることにした。

 そして、生まれたのは――――

 母と同じ髪色をした赤ん坊。男の子だそうだ。

 顔立ちも、母や姉と似ている。

 瞳は薄茶だが、僕やメラリアとは似ていない。光の加減で薄い……母と同じ、黄緑っぽく見えることがある。

 次男はネイサンと名付けたが・・・あまり、見ていたい顔ではない。

 そしてまた、赤ん坊の世話でメラリアが不安定になっている。

 まぁ、それだけとも思えないが。

 メラリアは、よくぐずっていた赤ん坊の頃のセディックの世話をしていたときよりも、明らかに苛立っている。

「生まれたときから思っていたが・・・ネイサンは母上にそっくりな顔をしているな」

 そう零した瞬間、メラリアの顔が嫌そうにしかめられた。それからだ。メラリアが、ネイサンのことを全く見なくなった。

 世話をするのは、侍女達かセディックの乳母。それも、よく体調を崩すセディックの世話があるから付きっ切りというワケには行かず、ネイサンが放置されていることがあるようだ。

 そう、報告された。けれど・・・ネイサンの為に動く気にはなれなかった。

 そんな状態見兼ねた誰かが、母に告げ口したのだろう。ある時期から、赤ん坊の泣き声が家から消えた。

 セディックが赤ちゃんがいなくなったと喚いていたので、どうしたのかと執事に聞くと、母がネイサンをハウウェル侯爵邸へ連れて行ったとのこと。

 セディックも連れて行こうとしたらしいが、メラリアが騒いだのでネイサンだけを連れて行ったのだと。

 僕は・・・

「そうか」

 とだけ返した。母に、姉に似たネイサンが家にいないことに、どこかほっとした。

 それからメラリアは、日中はセディックの側から離れなくなったようだ。

✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐




しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

冤罪により婚約破棄された令嬢は復讐したい

ゆうゆう
恋愛
婚約者に冤罪をかぶせられて、婚約破棄された令嬢は見方を得て復讐する気になりました。

気がついたら乙女ゲームの悪役令嬢でした、急いで逃げだしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 もっと早く記憶を取り戻させてくれてもいいじゃない!

婚約破棄でお願いします

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約者、カーリンは男爵令嬢に覚えのない悪行を並べ立てられた。 「君は、そんな人だったのか…」 王太子は男爵令嬢の言葉を鵜呑みにして… ※ギャグかもしれない

婚約破棄された男爵令嬢は隠れ聖女だった。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

大切にされなくても構いません。私には最愛の人の想い出と希望があるのですから。

田太 優
恋愛
金銭的に困窮していた実家のため、私は裕福な相手と結婚させられることになった。 好きな人がいても自分の気持ちを優先することは許されない。 結婚した相手からは予想通り大切にはされなかった。 そのような過去があるのだから、夫の家が没落したことを喜び、私は離婚を告げた。

【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲

もわゆぬ
恋愛
美しく可憐な白百合は、 強く凛々しい帝国の黒鷲に恋をする。 黒鷲を強く望んだ白百合は、運良く黒鷲と夫婦となる。 白百合(男)と黒鷲(女)の男女逆転?の恋模様。 これは、そんな二人が本当の夫婦になる迄のお話し。 ※小説家になろう、ノベルアップ+様にも投稿しています。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

処理中です...