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番外。エドガー(おとん)視点。4

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「エドガー様……」

 頬を赤く染めたメラリアが、コクンと頷いた。

 と、本人からプロポーズの了承をもらいはしたが、メラリアは子爵令嬢。

 侯爵令息である僕とは少し身分差があるが、そんなのは……どうとでもなる。

 両親に話すと、案の定難色を示されたが、メラリア以外とは結婚しないと言って両親を説得した。

 そして、メラリアの家へ婚約を申し込んだ。

 メラリアの家族も始めは難色を示していたが、根気強く説得したら僕達の結婚を許してくれた。

 僕の方が、一年先に学園を卒業する。

 メラリアが卒業するまでの間が、婚約期間となった。

 少し周りの女達が騒がしくなったが、黙らせた。なにが、メラリアは侯爵家に相応しくない、だ。そう言うお前達だって、どうせ僕自身を見ていないクセに。

 母やフィオレ、侯爵家という地位が目当ての女達なんて、僕の方から願い下げだ。

 それから、花嫁修業としてメラリアが我が家へ通うことになった。

 メラリアの頭の悪さとやる気の無さ、すぐに泣くところに手を焼き、渋面になる母と姉の姿を見るのは、とても愉快だった。

 それでも、どうにかこうにか高位貴族夫人としての心構えを説こうと奮闘する母。だが、メラリアは母の要求が厳しい、自分にはできないと言って泣き出す。そこへ、

「母上っ、姉上も二人してメラリアを泣かさないでください!」
「メラリアは子爵令嬢なんですよ! いきなりできるワケないでしょう!」
「あなた達は厳し過ぎるんです!」
「もっとメラリアのことを考えてあげられないんですか!」

 そんな風に割って入る。

 すると、いつもは理路整然となにが悪いのかという正論をぶつけて来る強気な母と姉が、なにも言い返せずに黙り込む。

 そして、メラリアを連れ出して僕は囁く。

「メラリアは、なにも変わらなくていいんだ。そのままの君でいい」

 抱き締めて、涙を拭ってやる。

「エドガー様、ありがとうございます」

 そう。メラリアはこのままでいい。なにも変わらず。愚かなままでいい。そして、母や姉を困らせ続ければいいんだ。

 なにも言い返せず、黙る母と姉の姿を見るのは・・・本当に気分がいい!

 そうやって、メラリアの花嫁修業はなにも進まず、先に匙を投げたのは姉。自分で決めた相手と結婚して家を出た。

 うちよりも身分の低い家。畜産が主な産業の領地へ嫁ぎ、帰って来ることはなくなった。

 おそらく、姉は気付いている。僕が自分を嫌っているということを。そして、僕が侯爵を継いだら姉とは縁を切るつもりでいることに・・・

 姉がいなくなっても、メラリアは変わらない。学ぶ姿勢を見せず、母の手を焼かせて、泣いて、割って入った僕が母を責める。その繰り返し。

 そうこうしているうちに、メラリアが卒業。

 僕は、予定通りにメラリアと結婚した。母は大層不満そうだったが、子爵家から通うよりも一緒に住んだ方がより勉強の時間が取れると、一日の大半をメラリアに構うようになった。

 でも、知識や教養、マナーそんなのは必要無い。

 メラリアに賢くなられたら、僕が困るんだ。女は馬鹿でいい。特に、ずっと一緒に過ごす女が、母や姉みたいになったら僕の気が休まらないじゃないか。

 だから、メラリアを連れて家を出ることにした。

 父は母を選んだけど、母や姉の振る舞いに顔をしかめる使用人だっている。そんな彼らを連れ、父から任された子爵領の屋敷へ二人で引っ越した。

 それから、少ししてメラリアが妊娠。やがて、長男が生まれた。

 僕とメラリアの髪と瞳を掛け合わせたかのような、地味な色合いの赤ん坊。

 セディックと名付けた。

__________


 おとんは陰険。(´-ω-`)

 そして、こういうのもヤンデレって言ったりするのかな? と思ったり・・・(´・ω・`)?

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