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番外。エドガー(おとん)視点。3
しおりを挟む二つ上……僕からすると一つだが……の、有名な女子生徒を知らず、普通クラスの簡単な問題も解けない、馬鹿で少し足りない後輩の女子生徒。
それからメラリアは折りに触れ、自分は助けられて当然という態度で僕に助けを求めて来るようになった。
僕が、エドガー・ハウウェルだと知っても、態度はなにも変わらない。『自分を助けてくれそうな男子の先輩』という態度のまま。
フィオレ・ハウウェルのことも、ネヴィラ・ハウウェルのことも僕に一切言わない、聞こうとしない女。
なぜ、真面目に勉強をしないのかと聞いてみた。
「お勉強ですか? だって、お父様が女の子は可愛ければそれでいいって言うんですもの。女の子が幾らお勉強したって、どうせ男の子みたいに後継ぎにはなれないのだから、って。女の子は、お嫁に行って、旦那様に愛されていれば幸せになれるのですって」
にこにこと話すその言葉を聞いて、僕は衝撃を受けて・・・確かに。と、納得した。
父は僕よりも優秀な姉のフィオレに、跡取りとしての教育をしていない。
姉の方が跡取りに向いている。なんで女に生まれたんだ、勿体ない。そんな風に言われるくらい優秀でも、所詮は女が貴族当主になることなどできはしない。
一応、この国では女が爵位を継ぐことは認められている。しかしそれは、短い期間の中継ぎであったり、男児が継ぐまでのお飾りとしての当主。実権は伴侶が握っていたり、親族の男が握っていることの方が多い。
実質的に、女が爵位を継いで当主になることなどあり得ない。
それに、学園を卒業して数年以内には姉はどこかの家へ嫁ぐことになる。今のように、近くにいることもなくなる。
そうだ、なんで気付かなかったんだ!
遅くともあと数年! それでフィオレは僕の前からいなくなる!
そうだ! ハウウェル侯爵家を、侯爵位を継ぐのはこの僕だ!
「エドガー様みたいに優しくて優秀な方と結婚したら、幸せになれそうですね」
と、メラリアが微笑む。
この女は、間違いなく馬鹿だ。けれど、そうだ。女は、馬鹿な方がいい。
賢しい女、気の強い女は目障りだ。
母のような、姉のような女なんか嫌いだ。
さも、自分が正しいというような顔で男の上に立とうとする女なんか嫌だ。
女は、少し馬鹿なくらいで丁度いい。男より上に立とうとするだなんて間違っている。
母に、姉に憧れて近寄って来る女達。あの二人みたいになれるという勘違いをしている女達。難しい話を賢しらにする女達。男を馬鹿にする女達。そう言った女と結婚させられるのは、絶対に嫌だ。
女は、男に従って後ろに控えて守られていればいい。メラリアの父や兄が言うことは正しい。
鈍感で、自分は可愛がられて当然。他者が自分を助けるのが当然。自分ができないことはしない。頭の悪い……けれど、可愛い女。
ああ、メラリアは本当にいい女だ。母や姉とは、比べるべくも無い。
「メラリアは、婚約者はいるのか?」
「いいえ、学園でいい方を見付けられなければ、お父様かお兄様の選んだ方と婚約すると思いますわ」
にこりと微笑むメラリア。
「それじゃあ、僕と結婚してくれないか?」
「え?」
「僕は、メラリアと一緒にいると癒される」
僕よりも馬鹿で、なにもできないから。
「安心できるんだ」
間違っても、僕より優秀になりそうにないから。
「そのままの君でいい。僕と結婚してくれ」
変わらず、馬鹿のままでいてくれ。
「エドガー様……」
__________
母親(おばあ様)とお姉さんに劣等感持ち捲って、めっちゃ拗らせてますが……エドガー(おとん)がメラリア(おかん)を選んだ理由がこれです。(´-ω-`)
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