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番外。メラリア(おかん)視点。4
しおりを挟むピクニックに行こうなんて考えたのが間違いだったのね――――
花畑ではしゃいだネイトは、雨が降ったからとみんなが慌てて帰る準備をしているときに、馬車に乗らなかったみたい。
わたくし達がセディーのことばかり構うからと、拗ねたとしても、幾らなんでもやっていいことと悪いことがあるわ。
夜中になって、馬車を出して、使用人達と大騒ぎを起こして――――
ネイトのせいで、エドガー様とわたくしはお義父様とお義母様に酷く怒られてしまったわ。
そしてまた、ネイトを取り上げられてしまった。
今度は、お隣の国にネイトをやってしまうだなんて酷い。
お義父様とお義母様は、それからわたくし達にとっても冷たく当たるようになったの。
ネイトがあのとき、あんな風にしてわたくし達の愛情を確かめようとするから・・・
意気消沈するわたくしを、エドガー様やお友達が慰めてくれたわ。
セディーはネイトのことを気にして、少し元気がなくなっていたけど。
お勉強をがんばることにしたみたい。
体調を崩すことが以前よりも減って、毎日難しい本を読んでいて・・・わたくしと話してくれなくなったのが少し寂しいわ。けれど、お勉強の邪魔をするのはよくないわよね。
男の子が成長するのって早いのね。
そして、ネイトがお義母様のご親戚に預けられてから四年が経って――――
向こうのご親戚が、ネイトをあちらの学校へ通わせてもいいかと伺うお手紙が来たそうなの。エドガー様は、そこまで迷惑を掛けられないと、ネイトをうちに戻すことを決めたの。
戻って来たネイトは、前よりも益々わたくしの言うことを聞かなくなってしまって、どこか他人行儀。わたくしがネイトのお母様なのに・・・ちっとも上手く行かないわ。
そして、帰って来たネイトは剣を振るようになっていたの。セディーが身体が弱いのに。それを知っていて、セディーの見えるところでだなんて。酷いわ。
たった二人の兄弟なのに、どうしてネイトはセディーのことを思いやることができないの?
そう思ってネイトに注意をしたら、セディーは気にしないと言ってくれたの。わたくしに、ネイトを叱らないでほしいだなんて。セディーはやっぱり優しいのね。
それから――――
ネイトは益々お義母様に似て来て・・・
ああ、嫌だわ。ネイトを見ていると、お義母様の叱る声が聞こえて来るような気がする。
どうして? ネイトはわたくしの子供だったはずなのに、どうしてお義母様に似て来るの? なんで? 以前は、薄茶色の瞳だったのに。日に透けると、偶にお義母様と同じ色に見えるだけだったのに!
なんで・・・お義母様と同じペリドットの色の瞳になってしまったのっ!?
お義母様と似たお顔。お義母様と同じ色の瞳。
お義母様が、呆れたような表情でわたくしを見るお顔とそっくりな顔。お義母様と似たような、呆れを含む視線。そんな目でわたくしを見ないでちょうだい!
ネイトの顔を見るのが、段々と億劫に・・・いえ、嫌になるわ。
エドガー様が、ネイトは剣を振るだから騎士学校へ入れようと言って、手続きをしたの。
とても厳しい学校みたいで、生徒の帰省があまり許されない学校だと聞いたわ。
ネイトがうちからいなくなって――――わたくしはまた、ほっとしたの。
セディーがまた塞ぎ込んでいたのを心配していたのだけど・・・
セディーは学園寮に入ることを勝手に決めて、うちを出て行ってしまった。
セディーがいなくなって、寂しい。
男の子の反抗期は親の言うことを聞かないもので、親ならみんな通る道で、それが成長の証なのだとお友達が慰めてくれたの。
そうね。セディーも年頃の男の子だものね。
親元を離れたいと思うのも仕方ないのかもしれないわね。成長しているのだものね。
そして、セディーが学園を卒業。
卒業したというのに、うちには帰って来ないって言うの。お祖父様の下で、次期侯爵としてのお勉強をするのですって。
それなら・・・仕方ないわ。
セディーと同時期にネイトも騎士学校を卒業。結局ネイトは、在学中は一度もうちには帰って来なかったわ。厳しい学校だって話だから、それも仕方ないわね。
そして、うちには帰って来ないまま、学園寮に入ることにしたそうなの。
ずっとうちに帰って来ないと思ったら、ついこないだひょっこりとセディーと二人で帰って来て、セディーの頼みでネイトの除籍届にエドガー様がサインをして――――
それから、どうしてこうなったのかしら?
ネイトへの殺人未遂だなんて、そんな恐ろしいこと、わたくしとエドガー様は、全く考えていなかったのよ?
ただ、わたくしは少し・・・ネイトと顔を合わせるのが怖かっただけなの。
ネイトがお義母様にそっくりなのは、一目瞭然でしょう? わたくしがお義母様にイジワルをされていたのは、みんなが知っていることでしょう?
お義母様が苦手だったの。だから、お義母様にそっくりなお顔をしたネイトのことも、苦手になってしまっただけなの。
ああ……あのとき、お花畑にピクニックになんか行かなければよかったわ。
そうしたら、セディーにあんな冷たい目で見られることも、親子の縁を切られることも、こんな風に家族がバラバラになることもなかったでしょうに・・・
わたくしは、今日もエドガー様と二人で寂れたお屋敷の中にいる。
エドガー様は、言ったのに。メラリアは変わらなくていい。そのままでいい。そして、わたくしを幸せにしてくれる、って・・・
そう、言ったのに・・・
子供達はわたくし達を蔑んだ目で見て、家を出て行ってしまった。
ずっと一緒に過ごして、あんなに可愛がって大切にしていたセディーに、憎しみの籠った目を向けられて――――縁を切ったから、もう二度と顔を見せないという風なことを言われてしまった。
どうしてわたくしが、そんな酷いことを言われないといけないの?
わたくしはただ、エドガー様に幸せにしてほしかっただけなのに・・・
こんなの、ちっとも幸せじゃないわ。
__________
駄目おかんの駄目駄目育児日記? 的な話になってしまった気がします。(笑)
この、一貫して話の通じない、ふわっふわしたお花畑感。おばあ様は大変だっただろうなぁ……(  ̄- ̄)
次回は、エドガー(おとん)視点になります。長さはいつも通りに未定。(笑)
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