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しおりを挟むネイトの待つ馬車へと向かった。
「遅くなってごめん、ネイト!」
と、馬車の扉を開けると・・・
「んむ?」
ネイトは、むぐむぐとお菓子を食べていた。僕を見てごっくんと、
「お帰りー」
お菓子を飲み込んで口を開く。
なんか、思ってたよりも普通だ。もっと、ショックを受けているかと心配したんだけど・・・
「えっと、ただいま? そのお菓子、どうしたの?」
「ん? 持って来たおやつ。なんか疲れたなーと思って。食べる? 疲れたときは甘い物でしょ」
「そっか、そうだよねぇ……うん、ありがと」
ネイトの差し出したお菓子を食べながら、ぽつぽつと話をする。
「ごめんね? 嫌な思い、いっぱいさせたよね? 意地悪なことも言っちゃったし・・・」
「わたしより、セディーの方が大丈夫?」
「え?」
「セディーが怒ってるとこ、あんまり見たことないから。それに、セディーの方がわたしよりもあの二人のこと嫌いでしょ。無理、してない?」
と、心配そうに覗き込むペリドット。
「嫌な思い、いっぱいしたのはセディーの方でしょ?」
「っ……ネイト~っ!? 僕、ネイトに嫌われたら生きてけない~!」
なんだか感極まって思わずネイトに抱き付くと、
「ん、大丈夫大丈夫。セディーがわたしのこと大好きなのはちゃんとわかってるから」
よしよしという風にぽんぽんと背中が撫でられる。
「ネイトに意地悪なことを言って、嫌われたらどうしようって……」
「嫌わないよ。セディーのことは絶対嫌いにならない。でも・・・」
「で、でもってなにっ!?」
「や、わたしに嫌われたら生きてけないっていうのは、ちょっと大袈裟じゃない?」
ネイトの言葉にふるふると首を振る。
僕は、ネイトがいたから、あんな人達と暮らしていても腐らずにいることができた。
小さいネイトが僕のことを、「にいに」って呼んでくれたとき、どれだけ嬉しかったことか。
小さくて温かい指で、手で、僕の手を握ってくれたことが、「あそぼ」って言われて、求められることをどんなに喜んだことか。
体調を崩して寝込んでいるときに「いたいのいたいのとんでけ」と一生懸命看病してくれたことが、どんなに心強かったことか・・・
ネイトの存在がどれだけ僕の救いになっていたのかを、ネイトは全然わかっていない。
本当に本当に、ネイトがいたから僕は・・・こうして生きてられる。あの二人にも後ろ暗いことをせずに、踏み留まれた。
「愛してるよ、ネイト」
「セディー……そういうのは、ケイトさんに言ってあげなよ」
少し呆れの混じる声。
「……なんでそこでケイトさん?」
「あのね、ケイトさんは婚約者でしょ。セディーの」
「それは、そうだけど……」
「それに、好きでしょ? セディーは。ケイトさんのこと」
「へ? 僕、が・・・ケイトさんのことを、好、き?」
「? 好きだから、婚約を申し込んだんじゃないの? それとも、無自覚?」
「? なにが?」
「ああ、気付いてないんだ。セディー、ケイトさんだけには警戒してないんだよ」
「警戒?」
「うん。笑顔が自然なんだよね、ケイトさんとリヒャルト君の相手をしているときには。うちで、お祖父様とおばあ様と話してるときと変わらない表情って言うか・・・むしろ、慈しむような顔? してるし」
「は? 慈しむ? 僕が? ケイトさんを? リヒャルト君じゃなくって?」
「ん~……リヒャルト君とケイトさん、両方に」
「ちょっ、え? は? え? 僕が?」
「なんだ、本当に無自覚だったんだ」
「いや、え? ケイトさん、は・・・」
どんなに周囲の馬鹿共に喧嘩を吹っ掛けられても、酷いことを言われても、嫌な思いをしていたとしても、ずっと真っ直ぐで、凛としている姿がネイトと似てるなぁって思ったりはしたけ、ど・・・っ!?
もしかして、僕、どこかネイトと似た姿のケイトさんのこと・・・
いつの間にか好きになってたっ!?!?
と、ちょっと頭がパニックになっているうちに家に着いて・・・
ぱたんと倒れた。
あの二人に引導を渡したことへのストレスだろうって、お祖父様とおばあ様は言ってたけど・・・
知恵熱なのかも? って、自分で思った。
翌早朝。ネイトは心配そうな顔をして、学園寮へ向かったそうだ。
・・・ちょっとだけ、ケイトさんと顔を合わせるのが気まずいような、気恥ずかしいような・・・
どうしようっ!?
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
というワケで、前回ホラーチックだったセディーのデレでした。( *´艸`)
ちなみに、ヤトヒコ作品の中ではセディーはマイルドな方のヤンデレです。
もっとレベルの高いヤンデレをお求めの方は、『ハートを捧げたシンデレラ』をどうぞ。あとがきまで読むと楽しめるかと思われます。
ぶっ壊れヤンデレバッチ来い! という方は『誰が為の異端審問か。』を読んで頂ければ、やべぇ感じのヤンデレがいます。こっちはヤトヒコの初期作品なので、文章がちょっとアレですが。(笑)
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