虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「またかっ!?」

 と、思ったら……

「ハウウェル先輩~! 遊んでくださ~い!」

 というアルトの声までしやがる。

「あのな、フィールズ。こういうときはハウウェル君、あーそーぼ! って言うのがお約束なんだぞー? 知らねーの?」
「ふぇ? そうなんですかっ?」
「……そんなお約束があるワケないだろう。というか、こんなところで騒がないで、普通に家に入れてもらえばいいと思うんだが? レザンもフィールズもいるんだから、こんなことする必要は無いだろうに」
「ふっ、そんなの、俺が楽しいからやってるに決まってるだろ! それに、門番さんもお屋敷の皆さんもすっげえ笑い堪えて面白がっている! その証拠に、これだけ騒いでも誰も止めねーしさ?」

 開いている門の前でケラケラと笑うテッド。

「なにしに来たっ!?」
「よう、ハウウェル。元気そうだな!」
「ハウウェル先輩!」
「……なんか、すまん」
「お邪魔しています、セディック様」
「ふふっ、いらっしゃい。中に入る?」
「セディーっ!?」
「お邪魔しまーす」

 と、中へ入って来るアホ共。

「うん? リヒャルトではないか」
「あ、ホントだ。リヒャルト君、お久し振りです。元気でしたか?」
「レザンにいさま、エルにいさま、おひさしぶりです!」
「おおっ!? 噂の弟君! すっげー、なんかこう、ミニ部長って感じ! 将来きっと美人さんになるな」
「失礼だぞテッドっ」

 慌ててテッドを窘めるリール。

「? ぶちょうさん?」
「えっと、ケイト様のことです。僕達が通う学校で、ケイト様はこの前卒業しちゃいましたけど、乗馬クラブで部長さんをしていたんです。達僕はその乗馬クラブの部員で、ケイト様にはお世話になりました」
「ケイトねえさまのおともだちですかっ?」
「友人というのとは少し違うな。セルビア部長は先輩であり、上官のようなものだ」
「じょうかん?」
「やー、ちみっ子に上官っつって通じるかよ? えっと、部長は他の生徒達のリーダーみたいな?」
「リーダー、ですか?」
「そうそう、乗馬が上手くてめっちゃかっこいい美人さんなリーダー」
「はい! ねえさまはとってもかっこいいです!」
「そっかそっかー、これはあれだなー。順調にシスコンに育ってる感じかー」
「? シスコンって、なんですか?」
「それはなー、ねーちゃんとか妹が大好きな人のことだ」
「それなら、ぼくはシスコンですねっ」

 嬉しそうに胸を張るリヒャルト君。

「テッド! 変なこと教えない!」
「なんだよー、ホントのことだろ? ハウウェルとおにーさんだってブラコンのクセにー」
「ブラコンって、なんですか?」
「ブラコンっつーのは、にーちゃんや弟のことが大好きな人のことだなー。ハウウェルとおにーさんみたいな、お互い大好きな兄弟のこと」
「テッドはちょっと黙ってろ!」
「えー、なんでよ? おにーさん、めっちゃ喜んでんじゃん」

 照れたようにはにかむセディー。

「そういう問題じゃないから!」
「ネイトにいさま、おこってますか?」

 困ったようにわたしを見上げるリヒャルト君。

「ああ、いえ。怒ってはいませんよ? リヒャルト君」
「うむ。ハウウェルは別に怒っているワケではない。あれはいつものじゃれ合いだ」
「じゃれあい?」
「挨拶みたいなものだ」
「あいさつ、ですか?」
「うむ。気安い友人同士のやり取り、と言えばわかるだろうか?」
「おともだちのあいさつ?」
「いえ、それもなんか違うような……?」
「な、な、今更だけど、なんで部長の弟さんがハウウェルん家いるん?」
「ああ、それは……」
「ネイトにいさまにけんのしゅぎょうをおねがいしてるからです!」
「うん? リヒャルトはハウウェルに剣を習っているのか?」
「はい!」
「マジかっ!? 弟君ラブな部長がよくOKしたなっ!?」
「ケイトさんから直々にお願いされたんだよ。ね、ネイト」
「まあ……うん」
「マジかっ!?」
「ふむ……ハウウェル、もしよければだが」
「却下っ!!」

 レザンがなにか言い掛けたのを遮る。

「・・・まだなにも言ってないのだが?」
「いや、絶対に却下だから。リヒャルト君の年齢を考えろ」
「・・・では、俺とハウウェルが」
「却下」
「・・・」
「なにが駄目なの? ネイト」
「や、レザンの課す訓練は普通の子供がこなせるようなメニューじゃないから」
「ああ、そっか。レザン君は軍閥の家系だったねぇ……うん。そういうのはやめておこうか」
「・・・はい」

 セディーの言葉に残念そうな返事。

「……でも、そうだね。少し付き合ってもらおうかな?」
「なにに付き合えばいい?」

 パッと期待するような顔が向けられた。

「そうだね。君達、遊びに来たんでしょ?」
「おう!」
「……いや、そういうワケでは……」

 なにやら不穏な気配を感じ取ったのか、焦り顔のリール。しかし、逃がさん。

「というワケで、大人数じゃないとできないことをしようと思います」


__________


 テッドに変なこと教えられて、胸を張ってシスコン宣言しちゃったリヒャルト君。(笑)

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