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しおりを挟むそして、卒業式の日。
ある意味伝説になったというか――――
在校生のうち女子生徒の大半が号泣するという事態が起きました。
厳かというより、啜り泣きの声があちこちで聞こえる湿っぽい卒業式でした。
保護者席で、セルビア伯爵夫妻に挟まれて座るリヒャルトと目が合って、にこにこと手を振られました。ケイトさんはリヒャルト君がいるためか、慈愛に満ちた笑顔。
卒業式が終わると、卒業生には最後のパーティー。
パーティー会場前で、ドレスに着替えて来たケイトさんへ、
「ねえさまはぼくがエスコートしますからね!」
盛装したリヒャルト君が手を差し出す。
「まあ! 嬉しいです! 喜んで。行きましょう、リヒャルト」
「はいっ」
と、手を繋いで会場入りする二人。
「あ、ケイト。父様がっ……」
おそらくはリヒャルト君に出遅れたセルビア伯爵が寂しそうな顔で手を伸ばしていましたが、
「行きますよ、あなた」
伯爵夫人に腕を引かれて中へ入って行きました。
セルビア伯爵は、最初厳しそうな印象だと思ったのですが・・・ちょっと不憫というか、なにげに面白い方なんですよねぇ。
まぁ、失礼なので口には出しませんが。
そして、会場入りすると、案の定セルビア伯爵夫妻があちこちから引っ張りだこでお礼を言われ捲っていました。
ケイトさんは可愛らしいリヒャルト君の紳士なエスコートで、それはもう輝く笑顔。その優しさと慈愛に満ちた笑顔に、ぎょっとした顔をする男子生徒達。
まぁ、ぎょっとした顔をするのはまだマシな方だとして……いや、女性の顔を見てぎょっとするのも失礼なんですけど。でも、「セルビア嬢ってあんな可愛かったのか」「チッ……婚約申し込んどけばよかった」「嗚呼……踏まれたい」とか言う、不穏というか、不快というか……ん? なんか、変な声が混じっていたような? いや、とりあえず、ケイトさんはセディーの婚約者なんですからね! 全くもう!
一応、ケイトさんと似た顔のリヒャルト君が可愛らしいと女子生徒達にキャーキャー言われて囲まれているので、不埒な輩は近付けないみたいですが。
「ケイト様とリヒャルト君、すっごい人気ですね~」
「うむ」
「つか、部長のあんな綺麗っつーか、柔らかい? 笑顔、校内では初めて見たわ」
「……今更だが、ハウウェルがここにいてセルビア様は大丈夫なのか?」
と、心配そうなアホ共。
「まぁ、今日は保護者が来ているし。よっぽどの馬鹿じゃなきゃ問題起こさないでしょ」
卒業パーティーでやらかして、卒業したのに退学させられたんじゃ堪らないだろうし。
「とりあえず、ケイトさんとリヒャルト君を見守るから、暇なら手伝って」
「はい!」
「うむ」
「いいぜー。美人さんと可愛いお子様の平和を守るためだかんな!」
「……わかった」
と、ケイトさんとリヒャルト君を見守ることに。
「部長も罪作りだよなー。よりにもよって、卒業パーティーで男惚れさせるってどうなん?」
「ええっ!? ケイト様はセディック様と婚約していますよっ!?」
「そうなんだけどさー。ほら? 部長のあの、めっちゃいい笑顔に惚れたっぽい野郎共がちらほらいるんだよなー。つか、部長ってばおにーさんにあんな顔するん?」
「ん~……リヒャルト君と一緒にいるときは、大抵ああいう優しい顔だよ」
「え~、おにーさん、弟君に負けてんの?」
「いいんだよ。セディーとケイトさんは、そういう関係なの。それに、セディーだってリヒャルト君を見るときにはすっごく優しい顔してるし」
「うん? 部長に?」
「ううん。リヒャルト君に」
「マジかっ!?」
「……ブラコンの意気投合、か」
「うん? 義理の兄弟になるのだから仲良くするのはいいことだと思うのだが?」
「仲良しさんはいいことです!」
と、アホ共と仲良し姉弟を見守りながら卒業式が終了。
明日から、お休みです。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
被虐趣味のある紳士が、もの欲しそうな顔でこちらを見ています。
どうしますか?
『無視』or『塩対応』or『丁重にお断り』or『鞭』or『立ち去る』の選択肢の中から、どれか一つを選んでください。
『無視する』を選んだ→紳士は喜んだ。
『塩対応』を選んだ→紳士は嬉しそうだ。
『丁重にお断り』を選んだ→紳士は残念そうな顔をしているが、嬉しそうだ。
『鞭』をくれてやると→紳士はお礼を言っている。
『立ち去る』を選んだ→紳士はハァハァしている。
紳士は、なにをされても嬉しそうだ。
という、なんかアホな設問が思い浮かびました。(笑)
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